機能性ディスペプシア(FD)とは?胃もたれ・みぞおちの痛みがあるのに「異常なし」と言われた方へ|原因・症状・治療法を解説|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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機能性ディスペプシア(FD)とは?胃もたれ・みぞおちの痛みがあるのに「異常なし」と言われた方へ|原因・症状・治療法を解説

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2026年8月28日

機能性ディスペプシア(FD)とは?胃もたれ・みぞおちの痛みがあるのに「異常なし」と言われた方へ|原因・症状・治療法を解説

機能性ディスペプシア(FD)とは?胃もたれ・みぞおちの痛みがあるのに「異常なし」と言われた方へ

「異常なしです」と言われても、症状は確かにある

胃もたれ、みぞおちの痛み、食べ始めてすぐに満腹になってしまう感じ。こうした症状が何か月も続いて内視鏡検査を受けたのに、「胃はきれいですよ、異常ありません」と言われた経験のある方は少なくありません。

かつて神経性胃炎、慢性胃炎などと呼ばれてきた状態の多くは、現在では機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia、略してFD)という一つの病気として扱われます。日本では2013年に保険病名として認められました。

ディスペプシアとは、みぞおちを中心とした上腹部の不快な症状全般を指す医学用語です。潰瘍やがんのような目に見える原因がないのに症状が続くとき、機能性ディスペプシアと診断されます。「気のせい」でも「胃が弱いだけ」でもありません。胃や十二指腸の働きに、実際に変化が起きている病気です。

大きく二つのタイプに分かれます

国際的な診断基準であるRome IV基準では、FDを次の二つに分類しています。

食後愁訴症候群(PDS)は、食事のあとに胃もたれや膨満感が出る、あるいは少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまうタイプです。

心窩部痛症候群(EPS)は、食事とあまり関係なく、みぞおちの痛みや焼けるような感じが起こるタイプです。

両方が重なる方も珍しくありません。症状が6か月以上前から始まっていて、直近の3か月間続いていることが診断の目安になります。

決してまれな病気ではありません

世界の一般人口を対象にした大規模な解析では、検査を受けていない段階でディスペプシア症状を持つ人は約21%と報告されています。女性、喫煙者、鎮痛薬を常用している人、ピロリ菌陽性の人でやや多い傾向がありました。内視鏡などで他の病気を除外したFDに限っても、人口の1割前後が該当すると考えられています。

なぜ起こるのか

原因は一つではありません。複数の要素が重なって症状をつくり出しています。

胃の適応性弛緩の障害。健康な胃は、食べ物が入ってくると上の部分がふわりと広がって受け止めます。この反応が鈍いと、少量でも満腹に感じてしまいます。

胃排出の遅れ。胃の内容物が十二指腸へ送られるのに時間がかかると、もたれ感につながります。

知覚過敏。同じ量の食物や胃酸でも、それを痛みや不快感として強く感じ取ってしまう状態です。

十二指腸の微小な変化。ここ十数年でもっとも注目されている点です。FD患者さんの十二指腸粘膜では、細胞同士の結合が緩んでバリア機能が低下し、好酸球や肥満細胞といった免疫細胞が軽度に増えていることが報告されています。胃酸や食物成分、腸内細菌の刺激が粘膜を通り抜けやすくなり、それがごく弱い炎症を起こして症状につながる、という考え方です。

感染後の発症。急性胃腸炎のあとにFDを発症するリスクは、そうでない人の約2.5倍という解析結果があります。

脳と腸のつながり。ストレスや不安、抑うつは症状を強める方向に働きます。これは「気の持ちようだ」という意味ではありません。脳と消化管が神経やホルモンを介して双方向にやりとりしているという、生理学的な事実です。

診断で大切にしていること

FDは除外診断です。他の病気ではないことを確かめる過程が欠かせません。とくに次のような症状があるときは、内視鏡検査などによる精査が優先されます。意図しない体重減少、飲み込みにくさ、貧血、黒い便や吐血、繰り返す嘔吐、腹部のしこり、そして中高年になって初めて症状が出た場合です。

胃食道逆流症、胃・十二指腸潰瘍、胆石、膵臓の病気、薬剤(とくに消炎鎮痛薬)の影響なども鑑別に入ります。

治療の選択肢

生活と食事の工夫が土台になります。一度にたくさん食べずに回数を分ける、脂肪の多い食事を控えめにする、よく噛んでゆっくり食べる、就寝直前の食事を避ける。喫煙や過度の飲酒も見直す価値があります。

薬物療法には、主に二つの柱があります。

一つは酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)です。25の臨床試験、8000人以上を集めたコクランレビューで、プラセボと比べて症状改善に有意な効果が確認されています。ただし効果の大きさは中等度で、痛みが主体のタイプでより有用とされます。

もう一つは胃の運動と適応性弛緩を改善する薬です。日本で開発されたアコチアミドは、食後愁訴症候群を対象とした大規模なプラセボ対照試験で、もたれ感や早期満腹感を有意に改善しました。

ピロリ菌が陽性の場合は除菌が推奨されます。18の試験をまとめた解析では、除菌を受けた群で症状改善が有意に多いという結果でした。ただし効果が現れるまで数か月かかることがあります。

漢方薬では六君子湯の研究が進んでいます。日本の多施設ランダム化比較試験(DREAM study)では、プラセボと比べて全般的な治療効果が高く、食後の膨満感や早期満腹感、さらに不安の指標の改善も認められました。

これらで改善しない場合には、少量の三環系抗うつ薬が選択肢になります。13の試験を統合した解析では抗うつ薬全体で有効性が示され、とくに三環系が有効で、SSRIでは有効性が確認されませんでした。アミトリプチリンを用いた米国の多施設試験でも、痛みが主体のタイプで改善が得られています。うつ病だから使う薬ではなく、痛みの感じ方を調整する目的で少量用いる、という点を知っておくと納得しやすいと思います。

長い付き合いになるけれど

FDは命に関わる病気ではありません。ただし良くなったり悪くなったりを繰り返しやすく、生活の質は確実に下がります。焦って一つの薬に見切りをつけるより、症状のタイプを見極めながら、生活習慣と薬を組み合わせて調整していくほうが現実的です。

そして案外大きいのが、納得できる説明を受けること自体です。「異常なし」で終わらず、なぜ症状が出ているのかを理解できると、それだけで症状の受け止め方が変わることがあります。上腹部の症状が続くときは、一度きちんと相談してみてください。

参考文献

  1. Gastroduodenal Disorders, Stanghellini V, Chan FKL, Hasler WL, et al. Gastroenterology. 2016 May;150(6):1380-92. DOI: 10.1053/j.gastro.2016.02.011 要約: Rome IV基準の胃十二指腸領域の定義文書。機能性ディスペプシアを食後愁訴症候群と心窩部痛症候群に分類し、症状期間の基準を示した国際標準。

  2. Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021, Miwa H, Nagahara A, Asakawa A, et al. J Gastroenterol. 2022 Feb;57(2):47-61. DOI: 10.1007/s00535-021-01843-7 要約: 日本消化器病学会によるFD診療ガイドライン改訂版。GRADE方式で診断手順、酸分泌抑制薬・消化管運動機能改善薬・漢方薬・抗うつ薬の推奨度を整理。

  3. Functional dyspepsia, Ford AC, Mahadeva S, Carbone MF, et al. Lancet. 2020 Nov 21;396(10263):1689-1702. DOI: 10.1016/S0140-6736(20)30469-4 要約: FDの疫学、病態生理、診断、治療を包括的にまとめた総説。十二指腸の微小炎症と脳腸相関を中心とする病態理解の転換を解説している。

  4. Global prevalence of, and risk factors for, uninvestigated dyspepsia: a meta-analysis, Ford AC, Marwaha A, Sood R, Moayyedi P. Gut. 2015 Jul;64(7):1049-57. DOI: 10.1136/gutjnl-2014-307843 要約: 100集団を統合し、未検査ディスペプシアの世界有病率を約21%と算出。女性、喫煙、NSAIDs使用、ピロリ菌陽性が危険因子であることを示した。

  5. Impaired duodenal mucosal integrity and low-grade inflammation in functional dyspepsia, Vanheel H, Vicario M, Vanuytsel T, et al. Gut. 2014 Feb;63(2):262-71. DOI: 10.1136/gutjnl-2012-303857 要約: FD患者の十二指腸生検で上皮バリア機能の低下と肥満細胞・好酸球増加を証明。腸管透過性亢進が病態の中心にあるとする概念の基礎となった研究。

  6. Systematic review with meta-analysis: post-infectious functional dyspepsia, Futagami S, Itoh T, Sakamoto C. Aliment Pharmacol Ther. 2015 Jan;41(2):177-88. DOI: 10.1111/apt.13006 要約: 急性感染性胃腸炎後のFD発症リスクを統合解析し、非感染者の約2.5倍と報告。感染後FDという独立した病型の存在を裏づけた。

  7. Proton pump inhibitors for functional dyspepsia, Pinto-Sanchez MI, Yuan Y, Hassan A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21;11(11):CD011194. DOI: 10.1002/14651858.CD011194.pub3 要約: 25試験8453例を統合したコクランレビュー。PPIはプラセボより有意に症状を改善するが効果は中等度で、標準用量と低用量に差はないと結論。

  8. A placebo-controlled trial of acotiamide for meal-related symptoms of functional dyspepsia, Matsueda K, Hongo M, Tack J, et al. Gut. 2012 Jun;61(6):821-8. DOI: 10.1136/gutjnl-2011-301454 要約: 日本発の大規模プラセボ対照第III相試験。アコチアミド100mg1日3回が食後膨満感、上腹部膨満、早期満腹感を有意に改善することを示した。

  9. Helicobacter pylori Eradication Therapy for Functional Dyspepsia: A Meta-Analysis by Region and H. pylori Prevalence, Kang SJ, Park B, Shin CM. J Clin Med. 2019 Aug 28;8(9):1324. DOI: 10.3390/jcm8091324 要約: 18のランダム化試験を統合し、除菌群で症状改善が有意に多いと報告(RR 1.18)。地域差があり、アジアからの試験では有意差が明確でなかった。

  10. Efficacy of psychotropic drugs in functional dyspepsia: systematic review and meta-analysis, Ford AC, Luthra P, Tack J, et al. Gut. 2017 Mar;66(3):411-20. DOI: 10.1136/gutjnl-2015-310721 要約: 13試験1241例の統合解析。抗うつ薬は全体としてFDに有効(NNT 6)で、三環系抗うつ薬が有効な一方、SSRIには有効性が示されなかった。

  11. Effect of Amitriptyline and Escitalopram on Functional Dyspepsia: A Multicenter, Randomized Controlled Study, Talley NJ, Locke GR, Saito YA, et al. Gastroenterology. 2015 Aug;149(2):340-349.e2. DOI: 10.1053/j.gastro.2015.04.020 要約: 292例を対象とした米国多施設試験。低用量アミトリプチリンは潰瘍様(疼痛主体)FDで有効だったが、エスシタロプラムは有効性を示さなかった。

  12. Rikkunshito simultaneously improves dyspepsia correlated with anxiety in patients with functional dyspepsia: A randomized clinical trial (the DREAM study), Tominaga K, Sakata Y, Kusunoki H, et al. Neurogastroenterol Motil. 2018 Jul;30(7):e13319. DOI: 10.1111/nmo.13319 要約: 日本の多施設ランダム化比較試験。六君子湯8週投与でプラセボより全般的治療効果が高く、食後膨満感・早期満腹感と不安尺度の改善が相関した。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介

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