成績が良い子はしっかり眠る?年齢別の理想的な睡眠時間と脳の発達|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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成績が良い子はしっかり眠る?年齢別の理想的な睡眠時間と脳の発達

成績が良い子はしっかり眠る?年齢別の理想的な睡眠時間と脳の発達|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年7月26日

成績が良い子はしっかり眠る?年齢別の理想的な睡眠時間と脳の発達

子どもの脳と記憶を育む睡眠:乳幼児から思春期までの変化と学習への影響 

はじめに

子どもの睡眠は、単に体を休ませるだけの時間ではなく、脳の発達や記憶の定着に深く関わっています。保護者や学校現場では「睡眠時間を削ってでも勉強させるべきか」という悩みを耳にすることが少なくありません。近年の医学研究では、睡眠の「量」だけでなく、成長段階に応じて変化する睡眠の「構造」や「リズム」が、学業成績と関連していることが分かってきました。ここでは、子どもの睡眠が発達とともにどのように変化していくのか、そしてその変化が学習面にどのような影響を及ぼすのかを、医学的なエビデンスに基づいてご紹介します。

子どもの睡眠の成長過程

人間の睡眠の仕組みは、生まれてから大人になるまでにダイナミックに変化します。成長過程を大きく3つの段階に分けて見ていきましょう。

1.乳幼児期の睡眠(脳の土台を創る時期)

生まれたばかりの赤ちゃんは、1日の大半を眠って過ごします。この時期は「レム睡眠(身体は休んでいても脳が活発に動いている浅い睡眠)」の割合が成人に比べて非常に高く、寝ている間に脳の神経回路が猛スピードで形成されています。成長するにつれて昼夜の区別がつくようになり、夜間にまとめて眠る「睡眠の統合」が起きます。この時期の良質な睡眠は、その後の人生における脳の基礎的な土台作りに不可欠です。

2.学童期の睡眠(記憶を定着させる時期)

小学生になると昼寝がなくなり、夜間にまとまった睡眠をとる大人に近いパターンになります。しかし、大人が7時間から8時間程度の睡眠で足りるのに対し、学童期の子どもには9時間から11時間の十分な睡眠が必要とされています。この時期の睡眠は、学校で学んだ知識を記憶として定着させるために非常に重要な役割を果たします。特に「ノンレム睡眠(脳も休んでいる深い眠り)」の間に成長ホルモンが大量に分泌され、身体の成長が促されるとともに、脳内ではその日に得た情報が選別され、必要なものが記憶として保存されます。

3.思春期の睡眠(体内時計が変化する時期)

中学生や高校生になる思春期には、睡眠の医学的な大きな変化が起こります。ホルモンバランスや脳の成熟に伴い、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌タイミングが、子どもの頃よりも約1時間から2時間後ろにずれることがわかっています。これを「睡眠相の後退」と呼びます。つまり、思春期の子どもが夜更かしになり、朝起きられなくなるのは、単なる怠慢や生活の乱れだけではなく、生物学的な体内時計の変化が原因の一つなのです。しかし、学校の始業時間は変わらないため、思春期の子どもたちは構造的に慢性的な睡眠不足に陥りやすくなります。

深い眠りは記憶の定着を助ける

学習した内容が長期記憶として定着する過程には、睡眠中の脳活動が重要な役割を果たすことが知られています。睡眠中、特に深いノンレム睡眠の間には、日中に学んだ情報が一時的な記憶の保管庫である海馬から、より長期的な保存を担う大脳皮質へと徐々に転送されると考えられています。ベルギーの研究チームが行った実験では、7〜12歳の子どもと20〜30歳の成人を対象に、新しい知識を学習させた後、睡眠をとった場合と起きたまま同じ時間を過ごした場合とで、記憶の想起成績を比較しました。その結果、子どもでは睡眠後に記憶の想起成績が安定して保たれた一方、成人では睡眠の有無による明確な差はみられませんでした。研究チームは、子どもに豊富な深いノンレム睡眠が、成人よりも効率的な記憶定着に関わっている可能性を指摘しています。

どのくらい眠れば学業に良いのか

睡眠時間と学業成績の関係についても、実証的な研究が積み重ねられています。米国睡眠医学会は、健康的な発達を支えるための年齢別の目安となる睡眠時間に関する専門家合意声明を公表しています。それによると、生後4か月〜1歳では12〜16時間、1〜2歳では11〜14時間、3〜5歳では10〜13時間、6〜12歳の小学生ではおおむね9〜12時間、13〜18歳の中高生では8〜10時間の睡眠が目安として推奨されています。年齢が上がるにつれて必要な睡眠時間が少しずつ短くなっていくこと自体が、子どもの脳の成長過程の一部であるといえます。

中国上海の中学生約5万4千人を対象とした2025年の大規模調査では、平均睡眠時間と数学・理科・国語などの科目の成績との間に、逆U字型の関係が見られました。睡眠時間が短すぎても長すぎても成績は低下する傾向にあり、およそ8時間前後の睡眠をとる生徒群の成績が最も高いという結果でした。とりわけ、もともと成績が低めの生徒ほど、十分な睡眠をとることによる成績への好影響が大きいことも示されています。この調査では、宿題にかける時間や就寝前の電子機器の使用時間が長いほど、睡眠時間が短くなる傾向も確認されており、学習時間を増やすために睡眠時間を削ることが、必ずしも成績向上につながらない可能性を示唆しています。

思春期特有の体内時計のずれ

思春期に入ると、メラトニン分泌のタイミングが後ろにずれる生理的な変化が起こり、就寝時刻が自然と遅くなる一方で、学校の始業時刻は変わらないため、睡眠不足に陥りやすくなります。これは本人の意志の弱さや生活習慣の乱れだけが原因ではなく、思春期という発達段階に伴う生理的な変化であることが知られています。イタリアで実施された高校生を対象とした縦断研究では、始業時刻を1時間遅らせたクラスでは、始業時刻を変えなかったクラスに比べて年間を通じた総睡眠時間が有意に増加し、注意力を測る検査の成績や学業成績も改善したことが報告されています。これは、思春期の子どもに特有の体内リズムの変化に配慮した生活環境の調整が、学習面にも良い影響を与えうることを示す一例です。もっとも、この研究における始業時刻の変更は学校側の取り組みであり、家庭だけで実現できるものではありませんが、こうした知見は「思春期の子どもが朝起きにくいのは怠けではなく生理的な変化である」という理解を広めるうえでも参考になります。

家庭でできること

以上を踏まえると、子どもの睡眠を考えるうえで大切なのは、単に「早く寝かせる」ことだけではなく、年齢や発達段階に応じた睡眠時間を確保し、規則正しい就寝・起床リズムを保つことだといえます。特に思春期以降は、体内時計の生理的な変化を理解したうえで、夜更かしを一方的に叱るのではなく、就寝前のスマートフォンなど電子機器の使用を控える、休日の起床時刻が平日と大きくずれないようにする、テスト前でも極端な睡眠削減は避けるといった、無理のない範囲で生活リズムを整える工夫が有効と考えられます。

おわりに

子どもの睡眠は、成長とともにその量や構造が変化していくものであり、その変化を正しく理解することが、学業面でのサポートにもつながります。「もっと勉強させたいから睡眠を削る」という発想ではなく、「十分な睡眠が学習の土台を支えている」という視点を持つことが、結果として子どもの学びを助けることにつながると考えられます。もちろん、睡眠だけがすべてを決めるわけではなく、家庭環境や学習方法など他の要因も学業成績には関わっています。それでも、睡眠は日々の生活の中で調整しやすい要素の一つであり、優先的に見直す価値があるといえるでしょう。

参考文献

1.Meta-Analysis of Quantitative Sleep Parameters From Childhood to Old Age in Healthy Individuals: Developing Normative Sleep Values Across the Human Lifespan, Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C, Vitiello MV, Sleep, 2004 Nov;27(7):1255-1273, DOI: https://doi.org/10.1093/sleep/27.7.1255
要約: 5歳から高齢期までの健常者を対象としたメタ分析。加齢に伴い深いノンレム睡眠やレム睡眠の割合が減少するなど、睡眠構造が生涯にわたり変化することを示した基礎的文献。

2.Recommended Amount of Sleep for Pediatric Populations: A Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine, Paruthi S, Brooks LJ, D’Ambrosio C, et al., Journal of Clinical Sleep Medicine、2016 Jun;12(6):785-786, DOI: https://doi.org/10.5664/jcsm.5866
要約: 米国睡眠医学会による年齢別の推奨睡眠時間に関する専門家合意声明。乳幼児から思春期まで、発達段階ごとの目安睡眠時間を提示した基準文献。

3.The Power of Children’s Sleep – Improved Declarative Memory Consolidation in Children Compared With Adults, Peiffer A, Brichet M, De Tiège X, Peigneux P, Urbain C, Scientific Reports, 2020 Jun;10:9979, DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-020-66880-3
要約: 7〜12歳の子どもと成人を比較した実験研究。子どもでは睡眠後に記憶の想起成績が安定し、豊富な徐波睡眠が効率的な記憶定着に関与する可能性を示した。

4.The Association Between School Start Time and Sleep Duration, Sustained Attention, and Academic Performance, Alfonsi V, Palmizio R, Rubino A, et al., Nature and Science of Sleep, 2020 Dec;12:1161-1172, DOI: https://doi.org/10.2147/NSS.S273875
要約: 高校生を対象とした縦断研究。始業時刻を1時間遅らせたクラスで総睡眠時間・注意力・学業成績が改善したことを示した介入研究。

5.Sleep Duration and Subject-Specific Academic Performance Among Adolescents in China, Wang M, Chen Z, Han N, Yao H, npj Science of Learning, 2025 Sep;10:71, DOI: https://doi.org/10.1038/s41539-025-00361-y
要約: 中学生5万4千人超を対象とした大規模調査。睡眠時間と教科別成績に逆U字型の関係があり、約8時間が最も成績と関連することを示した。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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