食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニアは、胸とおなかを隔てる横隔膜の穴(食道裂孔)がゆるみ、胃の一部が胸側へ入り込んだ状態です。加齢とともに増える変化で、健診の胃カメラやバリウム検査で指摘される方は少なくありません。「ヘルニア」という言葉から手術を思い浮かべて不安になる方が多いのですが、その大半は症状もなく、治療を必要としません。一方で、胸やけや呑酸の原因になっていることもあり、原因のはっきりしない貧血の背景に隠れていることもあります。当院では、指摘された方に対して、心配のいらない状態なのか、対応が必要なのかを整理してお伝えしています。
指摘された報告書をお持ちいただければ、いまどのような状態で、何をすべきかを整理してお伝えします。多くの方にとって、必要なのは手術ではなく、生活の調整と経過の確認です。
食道裂孔ヘルニアは、加齢に伴って生じる体の変化に近いものです。健診の内視鏡で指摘される方は多く、それだけで手術の対象になることはまずありません。
症状がなければ、治療は必要ありません
指摘されただけで、胸やけもつかえ感もないという方は、特別な治療も、頻回の検査も必要ありません。ヘルニアそのものを元に戻す薬はなく、あえて手術で修復する対象でもありません。
意味があるのは、この所見を今後の判断に生かすことです。胸やけが出てきたときに何を考えるか、体重や姿勢がどう影響するか、貧血を指摘されたときに何を疑うか。知っておくこと自体が備えになります。
確かめておきたいのは、逆流と貧血です
ヘルニアがあると、胃と食道のつなぎ目の締まりが弱くなり、胃酸が逆流しやすくなります。胸やけや呑酸が続く方では、逆流性食道炎が起きていないか、食道の粘膜が変化していないかを内視鏡で確認します。
もう一つは貧血です。大きなヘルニアでは、胃が横隔膜にこすれる部分にびらんや潰瘍ができ、少しずつ出血して鉄欠乏性貧血の原因になることがあります。原因のはっきりしない貧血を指摘されている方で、大きなヘルニアがある場合には、この可能性を考えて確かめます。
ヘルニアの型によって、注意すべき点が変わります。健診で指摘されるものの大半は、最初に挙げる滑脱型です。
ヘルニアそのものの有無より、それによって何が起きているかを確かめることに重点を置きます。必要以上の検査を重ねないことも、大切な判断だと考えています。
| 上部消化管 内視鏡検査 |
胃と食道のつなぎ目の位置と、ゆるみの程度を確認します。あわせて、逆流性食道炎の有無と程度、食道の粘膜の変化、びらんや潰瘍がないかを評価します。ご希望に応じて鎮静剤を用い、眠っている間に受けていただけます。 |
|---|---|
| 血液検査 | 貧血の有無と、鉄の状態を確認します。ヘルニアに伴う出血は少量ずつ続くため、自覚症状がないまま貧血が進んでいることがあります。健診で貧血を指摘された方では、必ず確認しておきたい項目です。 |
| 症状の評価 | どのようなときに、どの程度症状が出るのかを整理します。横になったとき、前かがみのとき、食後に強くなるか、夜間に目が覚めるか。この情報が、薬を使うべきか、生活の調整で足りるかの判断につながります。 |
| 背景にある 要因の確認 |
体格、便通の状態、咳が続いていないか、背中の丸まりの程度、仕事や生活で腹圧のかかる場面がないかを確認します。ヘルニアそのものは戻せなくても、これらを整えることで症状は大きく変わります。 |
| 画像検査 | ヘルニアの大きさや型をより詳しく評価する必要がある場合には、バリウム検査やCTが有用です。当院で判断が難しい場合や手術を検討する段階では、これらの検査が可能な連携施設へご紹介します。 |
| 専門施設との 連携 |
薬でも症状が抑えられない場合、大きな傍食道型で締めつけの危険がある場合、貧血が繰り返す場合には、手術を含めた検討のため外科のある医療機関へご紹介します。手術後の日常の管理は、当院で分担できます。 |
ヘルニアそのものを薬で元に戻すことはできません。ですから治療の対象は、それによって起きている逆流と、腹圧を上げている要因になります。地味ですが、こちらのほうが日々の症状に直結します。
| 症状がない 場合 |
治療は必要ありません。定期的な内視鏡も、ヘルニアのためというより、年齢に応じた胃がん検診として考えていただければ十分です。症状が出てきたときに受診していただければ、その時点で対応できます。 |
|---|---|
| 酸分泌抑制薬 | 胸やけや呑酸がある場合には、胃酸を抑える薬(PPI・P-CAB)で症状を抑えます。よく効きますが、ヘルニアそのものが治るわけではないため、やめると戻ることがあります。必要性を定期的に見直しながら、続けるか減らすかを判断します。 |
| 体重を減らす | 腹圧を下げる、最も確実な方法です。とくに内臓脂肪が増えると、胃が押し上げられて逆流が強まります。当院は糖質制限を基本とした栄養指導を行っており、管理栄養士4人体制で、続けられる形の食事を一緒に組み立てます。 |
| 腹圧を上げない 工夫 |
就寝前2〜3時間は食事をとらない、寝るときに上半身をやや高くする、ベルトや下着で腹部を締めつけない、前かがみの姿勢を長く続けない、一度に食べる量を減らして回数を分ける。いずれも、その場でできて効果の実感しやすい調整です。 |
| 便秘と咳への 対応 |
排便時に強くいきむこと、慢性の咳が続くことは、腹圧を繰り返し高めます。便通を整えること、咳の原因を治療することは、逆流の対策としても意味があります。喘息や副鼻腔炎による咳については、当院で評価と治療ができます。 |
| 手術 | 薬でも症状が抑えられない場合、大きな傍食道型で締めつけの危険がある場合、出血による貧血を繰り返す場合には手術を検討します。現在は腹腔鏡による方法が中心です。適応の判断と実施は専門施設で行い、ご紹介します。 |
背中の丸まりや、睡眠時無呼吸が関わっていることもあります
背中が丸くなる(円背)と、おなかが圧迫されて逆流が起こりやすくなります。骨粗鬆症による背骨の変形が背景にあることも多く、その場合は骨の治療そのものが対策の一部になります。また、いびきや睡眠時無呼吸のある方では、夜間に胸の中の圧が大きく変動し、寝ている間の逆流が強まることが知られています。夜中に胸やけで目が覚める、朝に口の中が苦いといった症状がある方では、確かめておく価値があります。当院は骨粗鬆症の管理も睡眠時無呼吸の検査・治療も行っており、同じ場でご相談いただけます。
PERSPECTIVE
心配のいらない状態かどうかを、はっきりお伝えします
「ヘルニア」という言葉の印象から、実際以上に不安を抱えて来られる方が多くおられます。当院ではまず、症状の有無と食道の状態を確かめ、多くの方には治療の必要がないことをはっきりお伝えします。不要な薬を出さないことも、診療の役割だと考えています。
ENDOSCOPY
ヘルニアより、その先で何が起きているかを診ます
検査は消化器内視鏡専門医が担当します。ヘルニアの有無だけでなく、逆流性食道炎の程度、食道の粘膜の変化、出血の原因となるびらんや潰瘍の有無まで確認します。ご希望に応じて鎮静剤を用いた検査にも対応しています。
ANEMIA
原因の分からない貧血の背景を、確かめます
大きなヘルニアは、自覚のない出血によって鉄欠乏性貧血を起こすことがあります。健診で貧血を指摘されたまま原因が分からずにいる方では、確かめておく価値があります。当院は一般内科として、貧血の評価から鉄の補充、その後の管理まで続けて担当できます。
DAILY LIFE
腹圧を上げている要因を、一つずつ整えます
体重、便通、咳、姿勢、食べ方。逆流を強めている要因は生活の中にあり、そこを整えると薬を減らせることがあります。管理栄養士4人体制での食事の相談に加え、便秘や咳の治療、骨粗鬆症の管理まで、同じ場で対応できます。
これまでの資料をお持ちください
健診や他院の内視鏡・バリウム検査の報告書、画像、お薬手帳、健診の血液検査の結果があると話が早く進みます。いつ指摘されたか、貧血の指摘がなかったか、胸やけの薬を飲んだことがあるかを確認します。資料が手元になくても、そのままご相談いただいて構いません。
症状と食道の状態を確かめます
症状の出方をうかがい、必要に応じて内視鏡でつなぎ目の状態と食道の粘膜を確認します。あわせて血液検査で貧血の有無を調べます。ご希望に応じて鎮静剤を使用します。すでに他院で内視鏡を受けている場合は、その結果をもとに判断できることもあります。
方針をご説明します
症状がなく食道にも変化がなければ、治療は不要であることをお伝えします。症状がある場合は、薬と生活の調整をどう組み合わせるかを相談します。手術を検討すべき状態であれば、その理由とともに専門施設をご紹介します。
生活の調整を続け、経過を見ます
体重、便通、姿勢、食べ方を整えながら、症状の変化を確認します。薬を使っている方では、減らせるかどうかを定期的に見直します。内視鏡の次回の目安についても、食道の状態を踏まえてご案内します。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
突然の強い胸の痛みに、嘔吐しようとしても吐けない、みぞおちが張るといった症状が加わる場合は、胃がねじれて締めつけられている可能性があり、緊急の対応が必要です。ためらわず救急要請をしてください。頻度はまれですが、大きなヘルニアのある方では知っておいていただきたい状態です。胸の痛みは心臓の病気でも起こりますので、いずれにしても様子を見ずにご相談ください。
ゆるんだ横隔膜が自然に元へ戻ることはなく、薬で戻す方法もありません。ただし、それが問題になるとは限りません。治療の対象になるのは、ヘルニアそのものではなく、それによって生じている逆流の症状や貧血です。症状がなければ、そのままで差し支えありません。
大半の方は必要ありません。手術を検討するのは、薬でも症状が抑えられない場合、胃が大きく入り込んで締めつけられる危険がある場合、出血による貧血を繰り返す場合などです。健診で指摘されただけの滑脱型のヘルニアが、そのまま手術になることはまずありません。
ヘルニアのためだけに頻回の検査を受ける必要はありません。年齢に応じた胃がん検診として内視鏡を続けていただければ十分です。ただし、胸やけが出てきた、貧血を指摘された、つかえ感が出てきたといった変化があれば、その時点でご相談ください。
腹圧を上げないことが中心です。就寝前2〜3時間は食事をとらない、寝るときに上半身をやや高くする、ベルトや下着で締めつけない、前かがみの姿勢を長く続けない、一度の食事量を減らして回数を分ける。体重が増えている方は、減量が最も効果的です。便秘でいきむことも避けたい要因です。
症状があるうちは続け、落ち着いてくれば減らすことを検討します。生活の調整がうまくいけば、薬を減らせる方も少なくありません。一方、やめると症状が戻る方もおられますので、必要性を定期的に見直しながら使うのが現実的です。自己判断での中止や再開は避け、ご相談ください。
加齢や腹圧のかかり方によって、時間とともに大きくなることはあります。ただし急速に進むものではありません。体重の管理や便通の調整、姿勢への配慮は、進みにくくする方向に働きます。症状の変化があれば、その時点で状態を確認します。
関係することがあります。大きなヘルニアでは、横隔膜にこすれる部分にびらんや潰瘍ができ、少量ずつ出血して鉄欠乏性貧血の原因になります。出血が少量のため便の色は変わらず、自覚症状もないまま進むのが特徴です。原因の分からない貧血がある方は、一度ご相談ください。
基本的に問題ありません。むしろ減量や姿勢の維持につながるため、続けていただきたいところです。ただし、強く腹圧のかかる筋力トレーニングや、前屈の姿勢を繰り返す運動では症状が出やすくなることがあります。食後すぐの運動も避けたほうが無難です。どの運動が向くかは、症状に応じてご相談ください。
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