2026/27シーズンのインフルエンザワクチン、どの株が入るのか|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

〒565-0816大阪府吹田市長野東19-6

06-6878-3303

睡眠時無呼吸症候群(SAS)
外来サイト
WEB予約 LINE予約
睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来サイト
内観

2026/27シーズンのインフルエンザワクチン、どの株が入るのか

2026/27シーズンのインフルエンザワクチン、どの株が入るのか|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年8月19日

2026/27シーズンのインフルエンザワクチン、どの株が入るのか

2026/27シーズンのインフルエンザワクチン、どの株が入るのか

今年もインフルエンザワクチンの季節が近づいてきました。毎年「株が変わりました」というニュースを目にすると思いますが、2026/27シーズンは少し事情が違います。A型2種類、B型1種類のすべてが前シーズンから入れ替わりました。なぜそうなったのか、順を追って説明します。

2026年度に使われる3つの株

日本国内で製造されるインフルエンザHAワクチン(皮下注射のワクチン)には、次の3株が入ります。厚生労働省が2026年6月4日付で正式に決定を通知しました。

A型株

・A/スイス/6849/2025(IVR-278)(H1N1pdm09亜型)

・A/ミシガン/105/2025(SAN-049A)(H3N2亜型・いわゆる香港型)

B型株

・B/東京/EIS13-175/2025(ビクトリア系統)

前シーズンに続き、A型2株とB型1株からなる3価ワクチンです。かつての4価ワクチンに含まれていたB型山形系統は、世界的に2020年3月以降まったく検出されておらず、すでに製造対象から外れています。実在しないウイルスの成分を入れ続ける理由がないという、きわめて合理的な判断です。

株が総入れ替えになった理由

2025年の夏、A香港型(H3N2)に「サブクレードK」と呼ばれる変異ウイルスが出現しました。系統分類ではJ.2.4.1と表記されるもので、8月頃から世界中に急速に広がりました。日本でも例年より早い流行となり、2025年第39週に流行入りの目安を超え、第47週に定点あたり51.12というピークを迎えています。年明けにはB型ビクトリア系統による2度目の波が来て、第6週に43.34の再ピークを記録しました。1シーズンに山が2つできたわけです。

このサブクレードKは、2025/26シーズンのワクチン株(サブクレードJ.2に属する)とは抗原性がかなり離れていました。フェレットの感染血清を使った解析でも、ワクチン株に対する抗体は流行株とうまく反応しませんでした。そこでWHOは2026年2月27日、H3N2成分をサブクレードKに合わせた株へ更新するよう勧告しました。

H1N1pdm09についても、D.3.1およびD.3.1.1という新しい枝が優勢になったため株が更新されました。B型ビクトリア系統では、日本と韓国でC.3、米国でC.3.1という枝の報告が増えており、これらはHA分子の頭頂部197番目のアミノ酸に糖鎖が付く変異を持っていました。糖鎖が抗体の結合を邪魔するため、従来株に対する血清では反応が悪くなります。この変化に対応するため、日本で分離されたB/東京/EIS13-175/2025が選ばれました。日本由来の株が世界の推奨株になったのは、それだけ国内のサーベイランス体制が機能しているということでもあります。

なお、WHOの鶏卵培養ワクチンの推奨はH1N1がA/ミズーリ/11/2025でしたが、日本は同じ系統に属するA/スイス/6849/2025を採用しました。国内3社での試験で、ウイルスの増殖性や精製工程を通した生産性がより良好だったためです。H3N2では複数の候補のうち、継代を重ねても抗原性が変わらなかったSAN-049A株が選ばれています。効き目の期待値と、確実に必要量を作れるかどうか。この両方を天秤にかけて決めているわけです。

「株が合っていないと効かない」のか

ここが一番誤解されやすいところです。2025/26シーズンは、抗原性のずれが大きいまま冬を迎えました。では効かなかったのかというと、そうではありませんでした。

イングランドの初期解析では、救急受診や入院を防ぐ効果が18歳未満で72から75パーセント、成人で32から39パーセントと報告されています。欧州19か国、9つの研究をまとめた解析でも、A型全体に対する有効率は全年齢で25から45パーセント、小児では47から72パーセントでした。カナダの調査でもサブクレードKを含むH3N2に対して約40パーセントの効果が確認されています。いずれも例年並みの水準です。

理由はいくつか考えられています。ワクチンが誘導する免疫はHA分子の一か所だけを見ているわけではないこと、過去の感染歴による免疫の下地があること、そして重症化を防ぐ働きは発症予防よりも保たれやすいこと。抗原性のずれは確かに効果を削りますが、ゼロにするわけではありません。株がぴったり合った今シーズンは、条件としてはむしろ良好と言えます。

今シーズンの注意点

65歳以上を対象に導入が予定されていた高用量ワクチン(エフルエルダ筋注)は、供給が間に合わず発売が延期されました。2026年7月21日に製造販売元から発表があり、厚生労働省も同日、令和8年度の定期接種では使用しない旨を周知しています。高用量ワクチンを期待していた方は、今シーズンは従来型を選ぶことになります。

2歳以上19歳未満には経鼻の弱毒生ワクチンという選択肢もあります。注射が苦手なお子さんには検討する価値があるでしょう。

接種のタイミングですが、効果が立ち上がるまで2週間程度かかり、その後は徐々に低下していきます。ここ2シーズンは流行の立ち上がりが早く、11月中にピークを迎える年もありました。10月中の接種を基本に考えておくと安心です。定期接種の対象や自己負担額は市町村ごとに異なるため、お住まいの自治体の案内をご確認ください。

参考文献

1.Recommendations for influenza vaccine composition for the 2026-2027 northern hemisphere season, World Health Organization. WHO News release. 2026 Feb 27. https://www.who.int/news/item/27-02-2026-recommendations-for-influenza-vaccine-composition-for-the-2026-2027-northern-hemisphere-season 要約: 2026/27北半球シーズンの推奨株を公表。鶏卵培養ワクチンではA/ミズーリ/11/2025、A/ダーウィン/1454/2025、B/東京/EIS13-175/2025を推奨し、3成分すべてを更新した。

2.令和8年度インフルエンザワクチン用製造株とその推奨理由, 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所. 第4回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 小委員会資料5. 2026年5月26日. https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001702435.pdf 要約: 日本の製造株選定の一次資料。各候補株の抗原性解析、増殖性、蛋白質収量、生産性の実測値を提示し、3株を推奨した根拠を詳述している。

3.令和8年インフルエンザHAワクチンの製造株の決定について, 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部. 令和8年6月4日通知. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index_00002.html 要約: 2026年度の製造株を正式決定した行政通知。あわせて高用量ワクチンを令和8年度定期接種で使用しない旨の事務連絡も同ページに掲載されている。

4.Influenza A(H3N2) subclade K virus: threat and response, Zambon M, Hayden FG. JAMA. 2026 Jan 27;335(4):307-310. DOI: 10.1001/jama.2025.25903 要約: サブクレードK(J.2.4.1)の出現経緯と公衆衛生上の意味を整理した総説。抗原変異の程度、流行の早期化、対応策としてのワクチンと抗ウイルス薬の位置づけを論じる。

5.Early influenza virus characterisation and vaccine effectiveness in England in autumn 2025, a period dominated by influenza A(H3N2) subclade K, Kirsebom FCM, et al. Euro Surveill. 2025 Nov 20;30(46):2500854. DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2025.30.46.2500854 要約: 抗原性の乖離が確認されたにもかかわらず、救急受診・入院に対する有効率は18歳未満で72から75パーセント、成人で32から39パーセントと例年並みだったと報告。

6.Influenza vaccine effectiveness from nine studies during drifted A(H3N2) subclade K predominance, Europe, September 2025 to January 2026, Lucaccioni H, et al. Euro Surveill. 2026 Feb 19;31(7):2600109. DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2026.31.7.2600109 要約: 欧州19か国9研究の統合解析。A型に対する有効率は全年齢で25から45パーセント、小児で47から72パーセントであり、株のずれがあっても接種推奨は妥当と結論した。

7.Interim 2025/26 influenza vaccine effectiveness estimates with immuno-epidemiological considerations for A(H3N2) subclade K protection, Canada, January 2026, Separovic L, et al. Euro Surveill. 2026 Feb 5;31(5):2600068. DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2026.31.5.2600068 要約: カナダの中間解析。サブクレードKを含むH3N2に約40パーセント、H1N1pdm09に約30パーセントの有効性を示し、糖鎖修飾や過去感染の免疫記憶による説明を試みている。

8.Emergence of seasonal influenza A(H3N2) variants with immune escape potential warrants enhanced molecular and epidemiological surveillance for the 2025-2026 season, Sabaiduc S, et al. J Assoc Med Microbiol Infect Dis Can. 2025;10(4):281-298. DOI: 10.3138/jammi-2025-0025 要約: 流行前の2025年10月時点でH3N2の糖鎖付加変異と抗原部位の置換を指摘し、免疫逃避の可能性を警告した先駆的報告。その後の流行を的中させた。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

TOP