痔(いぼ痔・切れ痔・痔瘻)
痔(いぼ痔・切れ痔・痔瘻)
痔(いぼ痔・切れ痔・痔瘻)
痔は、成人の多くが経験するありふれた病気です。その一方で、恥ずかしさから受診が遅れやすく、市販薬で何年もしのいでいる方が少なくありません。痔の大半は手術をせず、生活の見直しと薬で良くなります。ただし、痔があることと、他の病気がないことは別の話です。血便を「いつもの痔」と考えているうちに大腸がんが進んでしまう例は、決して珍しくありません。当院は消化器を専門とする内科です。痔に対する手術や、切開・結紮・注射といった外科的な処置は行っておりません。薬と生活・便通の調整による治療と、血便の原因を確かめる大腸内視鏡を担当し、外科的な治療が必要と判断した場合には、肛門を専門とする医療機関へおつなぎしています。
受診をためらう気持ちは自然なものです。それでも、原因をはっきりさせておくことには大きな意味があります。診察でどこまで行うかは、お話をうかがったうえで相談しながら決めます。
肛門からの出血は、痔で起こることが最も多いのは確かです。しかし同じ症状は、大腸がんや直腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病でも起こります。症状だけで区別することはできません。
痔があることと、他に何もないことは別の話です
診察で痔が見つかったとしても、それが今回の出血の原因とは限りません。痔は非常に多くの方が持っているため、痔と大腸がんが同時に存在することも普通に起こります。「痔がありましたね」で終わってしまうと、その先が確かめられないまま時間が過ぎます。
とくに、40歳以上の方、ご家族に大腸がんの方がいる場合、便が細くなった、便通の習慣が変わった、体重が減ってきた、貧血を指摘された、といった状況では、大腸内視鏡で確かめておく意味が大きくなります。血便の原因を最後まで確かめることが、当院の役割だと考えています。
診察の内容を、あらかじめお伝えします
受診をためらう理由の多くは、何をされるか分からないことにあります。診察はまず、症状のお話をうかがうことから始まります。そのうえで、横向きに寝ていただき、肛門の周囲を見せていただく視診と、指で触れて確かめる診察を行います。いずれも短時間で終わります。
痛みの強い状態では無理に行わず、その日は薬で炎症を抑えることを優先することもできます。どこまで行うかはご相談のうえ決めますので、不安な点は遠慮なくお話しください。診察室の環境やお声がけにも配慮しています。
痔は大きく三つに分かれ、それぞれ症状も対応も異なります。どれに当てはまるかで、薬と生活の調整で改善が見込めるのか、外科的な治療のために専門の医療機関へご紹介すべきかが変わります。
まず痔の状態を確かめ、そのうえで出血の原因が本当に痔だけなのかを確認します。どこまで検査を行うかは、年齢や症状、これまでの検査歴を踏まえて相談しながら決めます。
| 問診 | 出血の色と量、いつ出るか、痛みの有無とその出方、脱出があるか、便通の状態、これまでに使った薬などをうかがいます。症状の組み合わせから、痔のどの種類か、他の病気を考えるべきかの見当がつきます。恥ずかしさから曖昧にせず、ありのままをお話しください。 |
|---|---|
| 視診・指診 | 横向きに寝ていただき、肛門の周囲の状態を確認し、指で触れて痛みの場所やしこりの有無を調べます。短時間で終わります。痛みが強い場合は無理をせず、炎症を抑えてから改めて行うこともできます。 |
| 大腸内視鏡検査 | 血便の原因を確かめるための検査です。痔があっても、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患が隠れていないかを確認しておく意味があります。あわせて、内視鏡を反転させることで直腸の内側から内痔核の状態も確認できます。当院で予約のうえ実施し、ご希望に応じて鎮静剤を用いることもできます。年齢や症状によっては、痔の治療と並行して進めます。 |
| 血液検査 | 出血が続いている方では、自覚のないまま貧血が進んでいることがあります。ヘモグロビンの値を確認し、必要に応じて鉄の状態も調べます。貧血がある場合は、出血源をより確実に確かめる必要があります。 |
| 専門施設との 連携 |
当院では痔の手術や外科的な処置は行っておりません。手術が必要と判断した場合、痔瘻や肛門周囲膿瘍の場合、脱出が戻らない状態の場合には、肛門を専門とする医療機関へご紹介します。手術後の便通の管理や再発予防は、当院で継続して担当できます。 |
痔の多くは、手術をせずに良くなります。薬は症状を和らげますが、原因である排便の状況が変わらなければ繰り返します。生活と便通の調整が治療の土台になります。当院が担当するのはこの保存的な治療で、外科的な処置が必要な場合は専門の医療機関へご紹介します。
| 排便と生活の 調整 |
治療の中心です。便が硬すぎても、下痢が続いても痔は悪化します。トイレでいきむ時間を短くする、便意がないのに長く座らない、長時間同じ姿勢を続けない、といった具体的な行動から見直します。入浴で肛門を温めることも、血流を改善し痛みを和らげます。 |
|---|---|
| 外用薬・内服薬 | 坐薬や軟膏で炎症と痛み、出血を抑えます。ステロイドを含むものは短期間の使用が基本で、漫然と続けるものではありません。市販薬を長く使っている方は、その内容も含めて整理します。腫れや痛みに対して内服薬を併用することもあります。 |
| 漢方薬(内服) | 痔には古くから漢方が用いられてきました。乙字湯をはじめ、出血、腫れ、痛み、便通のどこに重点を置くかによって処方を選びます。当院は漢方専門医としての診療も行っており、西洋薬と組み合わせた形でご提案できます。便秘への対応と併せて考えられる点が利点です。 |
| 紫雲膏 (漢方の軟膏) |
紫根と当帰を主体とした外用の漢方薬で、痔の痛みや出血に対して著効することがあります。とくに裂肛の痛みや、なかなか治りきらない肛門周囲の傷に用いる価値があります。ステロイドを含まないため、長めに使いやすいことも利点です。独特の紫色とごま油の匂いがあり、下着に色がつく点だけご承知おきください。使い方は診察の際にご説明します。 |
| 血栓性外痔核 | 急に腫れて強く痛むタイプです。多くは薬と安静で1〜2週間のうちに落ち着き、しこりも次第に小さくなります。痛みが非常に強い場合や大きい場合には、中の血のかたまりを取り除く処置が検討されるため、専門施設へご紹介します。 |
| 手術が検討される 場合 |
脱出が自然に戻らない、押しても戻らない、出血が続いて貧血をきたす、保存的な治療で改善しないといった場合には手術を検討します。近年は切除以外に、注射による硬化療法やゴム輪による方法など、体への負担が少ない選択肢もあります。当院ではこれらの処置は行っておりませんので、その必要があると考えられる場合には、適応の判断も含めて専門の医療機関へご紹介します。 |
| 痔瘻・ 肛門周囲膿瘍 |
薬だけで治ることは期待できず、膿を出す処置や手術が必要になります。当院では切開による排膿は行っておりません。とくに膿瘍は、痛みと発熱を伴い急速に悪化することがあるため、早期の対応が重要です。疑わしい場合は、その日のうちに専門施設へおつなぎします。 |
繰り返さないためには、便通そのものを整える必要があります
薬で症状が治まっても、硬い便やいきみが続いていれば、痔はまた同じように現れます。当院には管理栄養士が4人在籍し、食物繊維と水分のとり方、朝の食事と排便のリズム、下剤を使っている方の見直しまで、生活に沿った形で一緒に組み立てます。下痢を繰り返す方では、その背景に過敏性腸症候群などがないかも含めて考えます。痔の治療は、便通の治療でもあります。
COLONOSCOPY
血便の原因を、痔で終わらせません
消化器内視鏡専門医が在籍し、大腸内視鏡を院内で実施しています。痔の診察と、大腸がんをはじめとする他の原因の確認を、同じ場所で続けて行えます。「痔だと言われて安心していたのに」という経過を防ぐことが、内科として最も重要な役割だと考えています。
CONSERVATIVE
保存的な治療を担当し、手術は専門施設へおつなぎします
痔の多くは、生活と便通の調整、そして適切な薬で改善します。当院は外科的な手術・処置を行わない内科として、まず保存的な治療を丁寧に行い、それでも改善しない場合や、明らかに手術の適応にあたる場合には、肛門を専門とする医療機関へご紹介します。ご紹介した後の便通の管理や再発予防は、引き続き当院で担当できます。
BOWEL
便秘と下痢への対応を、同時に進めます
痔を繰り返す方のほとんどに、便通の問題があります。管理栄養士4人体制で食事の面から支え、必要に応じて下剤の見直しや、下痢を起こす背景の評価も行います。痔の薬だけを出して終わりにしないことが、再発を減らす近道です。
KAMPO
漢方という選択肢も、あわせてご提案できます
痔は漢方が古くから用いられてきた領域です。当院は漢方専門医としての診療も行っており、出血、腫れ、痛み、便通のどこに困っているかに応じて処方を選べます。内服では乙字湯などを、外用では紫雲膏を用います。紫雲膏は痛みや傷の治りに著効することがあり、市販薬が合わなかった方の選択肢にもなります。西洋薬と併せて使う形が基本で、標準的な治療に置き換えるものではありません。
まずは、お話をうかがいます
出血の様子、痛みの出方、脱出の有無、便通の状態をうかがいます。お薬手帳、使っている市販薬、健診結果、過去の大腸内視鏡の記録をお持ちいただくと判断がしやすくなります。診察でどこまで行うかは、この時点でご相談します。
肛門の状態を確かめます
横向きに寝ていただき、視診と指診を行います。細い器具を肛門に入れて観察する検査(肛門鏡)は当院では行っておりません。短時間で終わりますが、痛みが強い場合は無理をせず、まず炎症を抑えてから改めて行うこともできます。ご希望をお聞きしながら進めます。
治療を始め、必要なら大腸の検査を計画します
薬と生活の調整を始めます。あわせて、出血の原因が痔だけと考えてよいかを検討し、必要と判断した場合は大腸内視鏡の予約をお取りします。手術が必要な状態であれば、その時点で専門施設へご紹介します。
再発しにくい状態に整えます
症状が落ち着いた後は、便通の管理を続けます。食事の内容、下剤の使い方、排便の習慣を調整し、薬に頼らずに済む状態を目指します。同じことを繰り返さないための調整は、症状が治まった後こそ意味があります。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
大量の出血に加えて、冷や汗や意識がもうろうとするといった症状があるときは、ためらわず救急要請をしてください。また、便が細くなる、体重が減る、便通の習慣が変わるといった症状は、痔では説明できないことが多く、大腸の検査が必要になります。痔の治療中であっても、これらが現れた場合は早めにお知らせください。
同じ理由で受診が遅れる方が非常に多い病気です。診察はまずお話をうかがうことから始まり、横向きに寝た状態で視診と指診を行います。短時間で終わり、必要以上のことはしません。痛みが強い日は無理に行わず、まず薬で炎症を抑えるという進め方もできます。ご心配な点は、受付や診察の際に遠慮なくお伝えください。
肛門からの出血は痔で起こることが最も多いのですが、大腸がんや炎症性腸疾患でも同じ症状が出るためです。痔は多くの方が持っているので、痔とがんが同時にあることも珍しくありません。とくに40歳以上の方、便が細くなった方、ご家族に大腸がんの方がいる場合は、一度確かめておくことをおすすめしています。
多くの方は手術をせずに良くなります。生活と便通の調整、そして薬で改善するのが一般的です。手術を検討するのは、脱出が戻らない、出血が続いて貧血になる、保存的な治療で改善しない、痔瘻や膿瘍がある、といった場合です。なお当院では痔の手術や外科的な処置は行っておりませんので、その必要があると判断した場合には、肛門を専門とする医療機関へご紹介します。その場合も、いきなり切除と決まるわけではなく、体への負担の少ない方法が選べることもあります。
一時的に使うぶんには問題ありませんが、長く続ける薬ではありません。とくにステロイドを含むものを漫然と使うと、皮膚が薄くなったり感染しやすくなったりすることがあります。また市販薬で症状が隠れると、他の病気の発見が遅れます。数週間使っても良くならない場合は、一度ご相談ください。
基本は温めることです。入浴で肛門周囲を温めると血流が良くなり、痛みや腫れが和らぎます。長時間の座りっぱなしや、冷えは症状を悪化させます。ただし、急に腫れて激しく痛む血栓性外痔核の初期には、冷やしたほうが楽に感じることもあります。状態によって変わりますので、診察の際にお伝えします。
妊娠中や出産後は、腹圧の上昇と便秘によって痔が起こりやすくなります。多くは産後に自然と軽くなります。この時期は使える薬が限られますので、自己判断で市販薬を使わず、まずご相談ください。便通を整えることが中心の対応になり、授乳中でも使える薬を選んでご提案します。
完全にやめる必要はありませんが、量は見直す価値があります。アルコールは血管を広げて腫れやすくし、下痢の原因にもなります。香辛料は排便時の刺激になることがあります。それ以上に影響が大きいのは、長時間のいきみと、座りっぱなしの姿勢です。まずはそちらから整えていきましょう。
便通や生活の状況が変わらなければ、繰り返すことがあります。逆に言えば、便が硬くならないようにして、いきむ時間を短くできれば、多くの方は再発を減らせます。薬で症状を抑えるだけでなく、そこまで一緒に整えることを大切にしています。仕事の姿勢や生活の制約も含めて、続けられる方法を相談しましょう。
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