口内炎はなぜできる? ── 原因・治し方・受診の目安を医学的根拠から解説|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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口内炎はなぜできる? ── 原因・治し方・受診の目安を医学的根拠から解説

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2026年9月11日

口内炎はなぜできる? ── 原因・治し方・受診の目安を医学的根拠から解説

誰もが一度は経験する、けれど意外と知られていない病気

食事のたびにしみて、しゃべるのもつらい。口内炎は誰もが一度は経験する身近なトラブルです。ところが「なぜできるのか」と聞かれると、はっきり答えられる人は多くありません。実は、これは専門家にとっても同じです。

最も多いタイプである再発性アフタ性口内炎について、世界の報告では人口の5〜25%が経験するとされ、集団によっては60%に達するというデータもあります。それだけありふれているのに、正確な発症メカニズムはいまだ解明されていません。

「口内炎」とひとことで言っても中身はさまざま

口の中にできる痛い潰瘍は、すべてが同じ病気ではありません。おおまかに分けると次のようになります。

  • 再発性アフタ性口内炎:最も多いタイプ。白っぽい丸い潰瘍が繰り返しできる
  • 外傷性潰瘍:頬を噛んだ、入れ歯や矯正器具が当たった、熱い物でやけどした
  • ウイルス性:ヘルペス性歯肉口内炎、手足口病、ヘルパンギーナなど
  • カンジダ性:真菌によるもの
  • 全身の病気に伴うもの:ベーチェット病、クローン病、セリアック病など
  • 薬の副作用によるもの:抗がん剤治療に伴う口腔粘膜炎など

治療法も注意すべき点もそれぞれ異なるので、「口内炎」と一括りにしないことが大切です。

アフタ性口内炎の3つの顔

再発性アフタ性口内炎は、見た目と経過から3つに分類されます。

小アフタ型は最も多く、直径1cm未満の潰瘍が1〜数個でき、10日から2週間ほどで瘢痕を残さず治ります。

大アフタ型は1cmを超える深い潰瘍で、治るまでに数週間かかり、跡が残ることもあります。

疱疹状型は小さな潰瘍が多数集まって現れるタイプです。

原因は「ひとつ」ではない

現在わかっているのは、口内炎ができるときに何が起きているか、という部分です。粘膜の破壊はT細胞を中心とした免疫反応によって起こり、TNF-αという炎症物質が重要な役割を果たし、これが細胞傷害性T細胞を呼び寄せて上皮細胞を壊してしまいます。

一方で、そのスイッチを押す引き金は人によって違います。これまでに指摘されているものとして、遺伝的な体質、血液学的な欠乏、ホルモンバランスの変化、免疫の要因、感染、栄養不足、禁煙、身体的・精神的ストレス、外傷などが挙げられています

意外に思われるのが「禁煙」でしょう。タバコをやめた直後に口内炎が増える人がいることは、以前から知られています。もちろん禁煙をやめる理由にはなりませんが、一時的な現象として知っておくと不安が減ります。

血液検査でわかることがある

繰り返す口内炎の背景に、栄養素の不足が隠れていることがあります。

2024年に発表された系統的レビューとメタ解析では、口内炎を繰り返す人は、そうでない人と比べてビタミンB12が基準値を下回るリスクが約2.9倍、フェリチン(貯蔵鉄の指標)が約2.5倍、ヘモグロビンが約2.1倍高いという結果でした。

つまり、鉄不足や貧血、ビタミンB12不足が背後にある人が一定数いるということです。頻回に口内炎ができる方、特に大人になってから急に増えた方は、一度血液検査を受けてみる価値があります。

歯みがき粉を変えるだけで、という話

これは知っておくと得かもしれません。多くの歯みがき粉には、泡立ちをよくするラウリル硫酸ナトリウム(SLS)という界面活性剤が入っています。

4つの二重盲検ランダム化比較試験(計124名)をまとめた系統的レビューでは、SLSを含まない歯みがき粉に変えることで、潰瘍の数、持続期間、発症エピソード数、痛みのいずれもが有意に減少しました。ただし研究の規模は小さく、著者らも今後より質の高い試験が必要だと述べています。

証拠の強さは限定的ですが、リスクもコストもほとんどありません。繰り返す方は試してみる価値のある選択肢です。

治療 ── 何が効いて、何がまだわからないのか

2026年に発表された41件のレビューを統合した包括的な検討では、局所ステロイド、ヒアルロン酸、レーザー療法が短期的な症状コントロールに有効であり、全身療法は難治例に限って用いるべきだと結論づけられています。局所ステロイドと低出力レーザー療法は痛みを減らし治癒までの期間を短縮しますが、再発予防に関する証拠は限られていました。

ここは正直にお伝えすべき点です。「痛みを和らげ、治りを早める」ことはできても、「再発しないようにする」決定的な方法はまだ確立されていません。

飲み薬についても同様です。コクランによる系統的レビューでは、全身療法として単独で有効といえる治療は見つからず、結論は出ていないとされました。

ビタミンB12という選択肢

比較的しっかりした臨床試験があるのが、ビタミンB12です。

58名を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、舌下に1000マイクログラムのビタミンB12を6か月間投与したところ、発症期間、潰瘍の数、痛みのレベルがいずれも有意に減少しました。注目すべきは、この効果が治療開始から5〜6か月目に現れ、しかも治療前の血中ビタミンB12値とは関係なく認められたことです。

小規模な試験なので過信は禁物ですが、安価で安全性も高い方法です。すぐには効かず、数か月かけて評価する必要がある点は理解しておきましょう。

漢方について

口内炎に半夏瀉心湯が使われることがあります。ここは誤解のないよう、証拠の範囲を正確にお伝えします。

大腸がんの化学療法による口腔粘膜炎を対象とした二重盲検プラセボ対照ランダム化第II相試験(93名)では、主要評価項目である発症率の差は有意ではありませんでした。しかし、グレード2以上の粘膜炎が続いた期間の中央値は、半夏瀉心湯群5.5日に対しプラセボ群10.5日と、有意に短縮しました。

つまり、抗がん剤による口腔粘膜炎に対しては、治癒までの期間を短くする効果が示されています。一方で、一般的なアフタ性口内炎に対する同等の質の証拠は現時点では乏しく、この結果をそのまま当てはめることはできません。

見逃してはいけないサイン

ここが最も重要な部分です。

まず、英国のガイドラインでは、原因のはっきりしない口の中の潰瘍が3週間以上続く場合、口腔がんを疑ってがん専門医への紹介を検討すべきとされています。通常のアフタ性口内炎は2週間以内に治ります。それを超えて治らない潰瘍は、一度きちんと診てもらってください。

もうひとつがベーチェット病です。国際診断基準(ICBD)では、口腔アフタ、陰部潰瘍、眼病変にそれぞれ2点、皮膚病変・中枢神経病変・血管病変に1点ずつを配点して診断します。

次のような場合は、単なる口内炎として様子を見ないでください。

  • 口内炎が3週間以上治らない
  • 陰部の潰瘍、目の充血や視力低下、皮膚の発疹を伴う
  • 大人になってから急に頻回にできるようになった
  • 潰瘍が硬い、出血する、首のしこりがある
  • 発熱や体重減少、下痢など全身症状を伴う

日常でできること

最後に、家庭で実践できることを整理します。

歯みがきを丁寧に行い、口の中を清潔に保つこと。とがった歯や合わない入れ歯があれば歯科で調整すること。刺激の強い食べ物(熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの、硬いもの)は治るまで避けること。睡眠と休養をしっかりとること。バランスのよい食事で鉄やビタミンB群を不足させないこと。

どれも地味ですが、引き金を減らすという意味では理にかなっています。

まとめ

口内炎は、原因がまだ完全にはわかっていない、けれど確実に対処できる部分もある病気です。痛みを和らげる方法はあり、背景に栄養不足が隠れていることもあり、そして稀に重大な病気のサインであることもあります。

「たかが口内炎」と放置せず、しかし過度に心配もせず。3週間という目安を覚えておいていただければ、それだけで十分です。

参考文献

  1. Evidence-based recommendations for the treatment of recurrent aphthous stomatitis: insights from an umbrella review, Al-Aizari NA, Al-Shamiri HM, AlShehri BK, et al. J Dermatolog Treat. 2026 Dec;37(1):2622245. DOI: 10.1080/09546634.2026.2622245
    要約: 41件のレビューを統合した最新の包括的検討。局所ステロイド、ヒアルロン酸、低出力レーザーが短期の症状改善に有効で、全身療法は難治例に限定すべきと結論。再発予防の証拠は限定的。
  2. Treatments for Recurrent Aphthous Stomatitis: A Literature Review, D’Amario M, Foffo G, Grilli F, et al. Dent J (Basel). 2025 Jan 31;13(2):66. DOI: 10.3390/dj13020066
    要約: 過去10年のランダム化比較試験を対象とした治療レビュー。T細胞介在性免疫反応とTNF-αによる上皮破壊という病態機序、および遺伝・外傷・ストレス・禁煙など多様な誘因を整理。
  3. Systemic interventions for recurrent aphthous stomatitis (mouth ulcers), Brocklehurst P, Tickle M, Glenny AM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;2012(9):CD005411. DOI: 10.1002/14651858.CD005411.pub2
    要約: 全身療法に関するコクランレビュー。単独で有効と結論できる治療は見出されず、免疫調節薬を含めエビデンスは不十分と判定。飲み薬に過度な期待を寄せるべきでないことを示す。
  4. Hematological parameters in patients with recurrent Aphthous Stomatitis: a systematic review and meta-analysis, Mousavi T, Jalali H, Moosazadeh M. BMC Oral Health. 2024 Mar 16;24(1):339. DOI: 10.1186/s12903-024-04072-5
    要約: 血液学的指標との関連を検討したメタ解析。口内炎群ではビタミンB12低値のオッズ比2.93、フェリチン2.50、ヘモグロビン2.14と有意に高く、栄養評価の意義を示した。
  5. Effectiveness of Vitamin B12 in Treating Recurrent Aphthous Stomatitis: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial, Volkov I, Rudoy I, Freud T, et al. J Am Board Fam Med. 2009 Jan-Feb;22(1):9-16. DOI: 10.3122/jabfm.2009.01.080113
    要約: 舌下ビタミンB12 1000μgを6か月投与した二重盲検試験。発症期間・潰瘍数・疼痛が有意に減少し、効果は投与前の血中B12値と無関係に認められた点が特徴的。
  6. Effect of sodium lauryl sulfate on recurrent aphthous stomatitis: A systematic review, Alli BY, Erinoso OA, Olawuyi AB. J Oral Pathol Med. 2019 May;48(5):358-364. DOI: 10.1111/jop.12845
    要約: 歯みがき粉に含まれるSLSの影響を検討した系統的レビュー。4試験124名の解析でSLS不含歯磨剤は潰瘍数・持続期間・発症回数・疼痛をいずれも有意に減少させた。
  7. Double-blind, placebo-controlled, randomized phase II study of TJ-14 (Hangeshashinto) for infusional fluorinated-pyrimidine-based colorectal cancer chemotherapy-induced oral mucositis, Matsuda C, Munemoto Y, Mishima H, et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2015 Jul;76(1):97-103. DOI: 10.1007/s00280-015-2767-y
    要約: 半夏瀉心湯の第II相試験。主要評価項目は達成しなかったが、グレード2以上の粘膜炎持続期間の中央値は5.5日対10.5日と有意に短縮した。対象は抗がん剤性粘膜炎である点に注意。
  8. Diagnosis and referral delays in primary care for oral squamous cell cancer: a systematic review, Grafton-Clarke C, Chen KW, Wilcock J. Br J Gen Pract. 2019 Feb;69(679):e112-e126. DOI: 10.3399/bjgp18X700205
    要約: 口腔扁平上皮がんの診断遅延を検討した系統的レビュー。原因不明の口腔潰瘍が3週間以上持続する場合は速やかに専門医紹介というNICE基準の根拠と運用実態を整理。
  9. The International Criteria for Behçet’s Disease (ICBD): a collaborative study of 27 countries on the sensitivity and specificity of the new criteria, Davatchi F, Assaad-Khalil S, Calamia KT, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014 Mar;28(3):338-347. DOI: 10.1111/jdv.12107
    要約: ベーチェット病の国際診断基準。口腔アフタ・陰部潰瘍・眼病変を各2点、皮膚・中枢神経・血管病変を各1点とする配点方式で、感度94.8%、特異度90.5%を達成した。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介

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