食道アカラシア
食道アカラシア
食道アカラシア
食道アカラシアは、食道と胃のつなぎ目の筋肉がうまくゆるまなくなり、食べたものが食道にとどまってしまう病気です。食道を動かす神経の働きが失われることで起こり、頻度は高くありません。特徴は、固形物だけでなく水やお茶でもつかえること、そして食べたものを未消化のまま吐き戻すことにあります。症状が年単位でゆっくり進むため、逆流性食道炎やストレスによるものとして扱われ、診断まで何年もかかることが少なくありません。当院では、つかえ感を訴えて来られた方について、食道がんなどを除外したうえでこの病気の可能性を検討し、確定診断と治療のできる専門施設へおつなぎしています。
とくに「液体でもつかえる」「未消化のまま吐き戻す」という二つが当てはまる場合は、早めにご相談ください。この組み合わせは、他の病気ではあまり見られません。
この病気は頻度が高くないうえ、症状がゆっくり進むため、体のほうが食べ方を変えて適応してしまいます。その結果、受診したときには「胃薬で様子を見ましょう」となり、そのまま年月が過ぎることがあります。
「液体でもつかえる」ことが、重要な手がかりです
食道がんなどで内側が狭くなっている場合、つかえるのはまず固形物で、液体は通ります。ところがアカラシアでは、筋肉がゆるまないことが原因なので、水やお茶でもつかえます。日によって症状の強さが変わる、冷たいものでつかえやすいといった特徴もあります。
もう一つの手がかりは吐き戻しです。胃酸で消化された酸っぱいものではなく、食べたそのままの形のものが上がってきます。夜間に横になったときに起こると、咳き込んだり、朝に枕が濡れていたりします。この症状は、逆流性食道炎とは性質が異なります。
胃カメラで「異常なし」と言われることもあります
早い段階では、内視鏡で見ても食道の見た目に大きな変化がなく、正常と判断されてしまうことがあります。逆に、この病気を念頭に置いて観察すると、食道に食べ物や液体が残っている、つなぎ目を通過するときに抵抗があるといった所見に気づけます。
つまり、決め手になるのは症状の聞き取りです。「何がつかえるのか」「液体はどうか」「吐き戻すものはどんな性状か」を丁寧にうかがうことで、この病気を疑えるかどうかが決まります。以前に内視鏡で異常なしと言われた方も、症状が続いているならご相談ください。
食道の働きが失われることで、食べたものが胃へ送り込まれなくなります。年単位でゆっくり進むため、ご本人が変化に気づきにくいという特徴があります。
まず、つかえ感の原因として見逃してはいけない病気を除外します。そのうえでこの病気が疑われる場合には、確定診断のできる施設へおつなぎします。
| 問診 | 何がつかえるのか、液体でもつかえるか、吐き戻すものの性状、夜間の咳の有無、症状の続いている期間、体重の変化をうかがいます。通すための工夫をしているかどうかも重要な情報です。この聞き取りが、診断への最も大きな手がかりになります。 |
|---|---|
| 上部消化管 内視鏡検査 |
まず、食道がんや胃の入り口のがん、好酸球性食道炎など、つかえ感を起こす他の病気を除外します。あわせて、食道に食べ物や液体がたまっていないか、つなぎ目を通過するときの抵抗はどうかを確認します。ご希望に応じて鎮静剤を用います。 |
| がんの除外 | 胃の入り口にできたがんが、アカラシアとよく似た状態を作ることがあります。症状の経過が短い、年齢が高い、体重減少が目立つといった場合には、この可能性を強く考えて確認します。治療がまったく異なるため、区別は欠かせません。 |
| 食道造影検査 | バリウムを飲んで、食道の形と流れ方を確認します。つなぎ目が細く尖った形に見える所見や、食道が広がっている様子が捉えられます。当院で実施できない場合は、検査可能な連携施設へご紹介します。 |
| 食道内圧検査 | 確定診断の基準となる検査です。細い管を食道に入れ、飲み込んだときの筋肉の動きと圧の変化を測定します。病気の型を判定でき、治療法の選択にも関わります。実施できる施設が限られるため、専門施設へご紹介します。 |
| 専門施設との 連携 |
この病気が疑われる場合は、食道の運動障害を専門に扱う医療機関へご紹介します。当院の役割は、疑うべき状況を見逃さず、他の病気を除外したうえで、適切な施設へ早く橋渡しすることだと考えています。これまでの経過を整理してお渡しします。 |
失われた神経の働きを戻す方法はないため、治療は「つなぎ目をゆるめて、食べたものが通るようにする」ことを目的に行います。以下は専門施設で行われる治療の概要です。
| 薬による治療 | 筋肉をゆるめる働きのある薬を用いることがありますが、効果は限定的で、一時的な補助にとどまります。根本的な対応にはならないため、他の治療が難しい場合や、治療までのつなぎとして使われるのが一般的です。 |
|---|---|
| 内視鏡的 バルーン拡張術 |
内視鏡を使って、つなぎ目の部分を風船で広げる治療です。体への負担が比較的少ない一方、効果が続かず繰り返しが必要になることがあります。まれに食道に穴があく危険があるため、実施できる施設で行われます。 |
| 経口内視鏡的 筋層切開術 |
POEMと呼ばれる、日本で開発された治療です。口から内視鏡を入れ、食道の粘膜の下を通って、締まっている筋肉を内側から切開します。おなかを切らずに済み、高い効果が報告されています。実施できる施設は限られます。 |
| 腹腔鏡下手術 | おなかに小さな穴を開け、つなぎ目の筋肉を切開したうえで、逆流を防ぐ処置を加える手術です。長年行われてきた確立した方法で、状態や年齢、これまでの治療歴によって選ばれます。 |
| 治療後の逆流 | つなぎ目をゆるめる治療のため、その後に胃酸が逆流しやすくなることがあります。胸やけが出た場合には、胃酸を抑える薬で対応します。この管理は日常の診療の中で行える部分であり、当院で分担できます。 |
| 治療後の 定期的な確認 |
症状が改善した後も、食道がんの危険がなくなるわけではないため、定期的な内視鏡での確認がすすめられます。また、症状が再び出てくることもあるため、経過を見ていく必要があります。通いやすい場所での管理を当院が担当できます。 |
診断がつくまでの間も、できることがあります
検査や紹介の手配には時間がかかることがあります。その間も、食事の工夫で楽になる部分があります。一口を小さくする、よく噛む、水分と交互にとる、食後すぐに横にならない、就寝前の食事を避けて上半身をやや高くして休む、といった方法です。体重が減っている方、食事量が落ちている方には、当院の管理栄養士が、少量で栄養のとれる食べ方を具体的にご提案します。つらい時期を何もせずに過ごしていただかないための対応も、診療の一部だと考えています。
SUSPICION
「つかえる」の中身を、丁寧に聞き取ります
この病気を見つけられるかどうかは、問診で決まります。液体でもつかえるか、吐き戻すものはどんな性状か、夜間に咳き込むことはないか。当院では、つかえ感を訴えて来られた方に対して、これらを必ず確認します。頻度の高くない病気だからこそ、疑う姿勢を持つことを大切にしています。
ENDOSCOPY
まず、除外すべき病気を確実に除外します
つかえ感の原因として最も見逃せないのは、食道や胃の入り口のがんです。消化器内視鏡専門医が担当し、これらを除外したうえで、食道に残渣がないか、つなぎ目に抵抗がないかを確認します。好酸球性食道炎など、他の原因についても同じ機会に評価します。
REFERRAL
確定診断と治療のできる施設へ、橋渡しします
食道内圧検査や内視鏡による筋層切開術は、実施できる施設が限られます。当院の役割は、疑うべき状況を捉え、これまでの経過と検査結果を整理して専門施設へおつなぎすることです。長く原因が分からずにこられた方ほど、この段階を早く進めることに意味があります。
AFTERCARE
治療後の日常の管理を、分担できます
治療を受けた後は、逆流症状への対応、栄養状態の確認、定期的な内視鏡が続きます。専門施設への通院間隔が空いた後、これらを通いやすい場所で担当できます。管理栄養士4人体制での食事の相談にも応じられます。
診察でご相談ください
つかえ感がいつから、どのようなものに対して起こるか、吐き戻しや夜間の咳の有無、体重の変化をうかがいます。お薬手帳、健診結果、過去の内視鏡やバリウム検査の記録をお持ちいただくと判断がしやすくなります。以前「異常なし」と言われた記録も役に立ちます。
内視鏡で、他の病気を除外します
予約のうえ内視鏡を行い、食道がんや胃の入り口のがん、好酸球性食道炎などがないかを確認します。あわせて、食道に残渣がないか、つなぎ目の通過に抵抗がないかを観察します。ご希望に応じて鎮静剤を使用します。
疑われる場合は、専門施設へご紹介します
食道造影や食道内圧検査による確定診断のため、対応可能な医療機関へおつなぎします。紹介にあたっては、症状の経過と当院での検査結果を整理してお渡しします。この段階までを速やかに進めることを重視しています。
治療後の管理を分担します
治療方針は専門施設で決まりますが、その後の逆流症状への対応、栄養状態の確認、定期的な内視鏡は当院で担当できます。症状が再び出てきた場合の相談窓口としても、通いやすい場所にあることが役立ちます。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
水分もとれない状態が続くと脱水が進みます。また、強い胸の痛みや息苦しさは、心臓や肺の病気でも起こりますので、その場合はためらわず救急要請をしてください。とくに、これまでゆっくり進んでいた症状が短期間で急に悪化した場合は、別の原因が加わっている可能性がありますので、早めにご相談ください。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に上がってきて炎症を起こす病気です。アカラシアは逆に、食べたものが胃へ下りていかない病気です。上がってくるものも、酸っぱい胃酸ではなく未消化の食べ物である点が異なります。胃酸を抑える薬が効かない、液体でもつかえるといった場合は、この病気を考える必要があります。
頻度は高くありません。だからこそ、医療機関でも思い浮かべられにくく、診断まで時間がかかりがちです。一方で、症状の特徴ははっきりしており、丁寧に聞き取れば疑える病気でもあります。治療法も確立していますので、まずは疑って検査に進むことが大切です。
違います。食道の壁にある神経の細胞が失われることで起こる、体の病気です。緊張すると症状が強く感じられることはありますが、それは原因ではなく現れ方の問題です。「気のせい」「ストレスのせい」と言われてきた方が少なくありませんが、そうではないことをお伝えしたいと思います。
失われた神経の働きを元に戻す方法は、現在のところありません。ただし、締まっているつなぎ目をゆるめる治療によって、食事がとれる状態に戻すことは十分に可能です。多くの方が治療後に普通の食生活を送っておられます。目標は「神経を治す」ことではなく、「食べられる状態を取り戻す」ことになります。
POEMと呼ばれる、日本で開発された治療です。口から入れた内視鏡で食道の粘膜の下を通り、締まっている筋肉を内側から切開します。おなかを切らずに済み、高い効果が報告されています。実施できる施設は限られますので、適応も含めて専門施設でご相談いただくことになります。
つなぎ目をゆるめる治療のため、その後は胃酸が逆流しやすくなります。手術では逆流を防ぐ処置を加えることもありますが、それでも胸やけが出る方はおられます。胃酸を抑える薬でおおむね対応できますので、症状が出た場合はご相談ください。この管理は当院で継続できます。
長い経過の中で危険が高まることが知られています。ただし、必ずなるというものではありません。だからこそ、治療で症状が良くなった後も、定期的に内視鏡を受けていただくことをおすすめしています。通いやすい場所で続けられることが大切ですので、当院で担当できます。
一口を小さくする、よく噛む、水分と交互にとる、食後すぐに横にならない、就寝前の食事を避けて上半身をやや高くして休む、といった工夫で楽になることがあります。ただし、これらは根本的な治療の代わりにはなりません。体重が減ってきている場合は、管理栄養士とともに栄養のとり方を整えながら、治療へ進む準備をします。
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