動脈硬化
動脈硬化
動脈硬化
血圧が高い。コレステロールが高い。血糖が高い。健診で指摘されても、痛くもかゆくもないため、そのままになりがちです。動脈硬化は、そうして症状のないまま十年、二十年と静かに進み、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞という形で現れます。厄介なのは、進み具合が数字として見えにくいことです。当院ではPWV(脈波伝播速度)とABI(足関節上腕血圧比)を測定し、血管がどれくらい硬くなっているか、足の動脈に詰まりがないかを、5分ほどの検査で確かめることができます。危険因子の管理は内科の中心的な仕事です。数字を見たうえで、何をどこまで行うかを一緒に決めていきます。
動脈硬化そのものに、自覚症状はありません。だからこそ、症状ではなく数字と検査で確かめる意味があります。とくに危険因子を複数お持ちの方にとって、これは「気になったら」ではなく「今のうちに」行うべきことです。
健診結果を前にして「様子を見ましょう」と言われ続けている方に、知っておいていただきたいことが二つあります。
症状が出たときには、すでに進んでいます
動脈は、内側にコレステロールが溜まって狭くなり(粥状硬化)、同時に壁そのものが硬く、しなやかさを失っていきます。この過程は血管の内側が7割ほど塞がれるまで、ほとんど症状を出しません。胸の痛みや足の痛みとして自覚されるのは、かなり進んでからです。
そして最も多い発症の仕方は、少しずつ狭くなって症状が出ることではなく、溜まったものが破れて、その場で血栓ができ、突然詰まることです。これは狭さの程度とは必ずしも比例しません。だからこそ、症状が出る前の段階で、危険因子を減らしておくことに意味があります。
コレステロールの数字は、一度きちんと確かめてください
LDLコレステロールが高い状態が続くと、その分だけ動脈の壁に蓄積が進みます。とくに、LDLコレステロールが180mg/dL以上ある方、アキレス腱が厚い方、家族に若くして心筋梗塞になった方がいる場合には、家族性高コレステロール血症という体質を考えます。日本ではおよそ300人に1人とされ、決してまれではありません。
この体質の方は、生まれたときから高い状態が続いているため、通常より若い年齢で動脈硬化が進みます。食事や運動だけでは十分に下がらず、早い段階からの薬物治療が必要になります。見過ごされたまま中年期を迎えている方が少なくありません。血縁の方にも同じ体質が受け継がれます。
動脈硬化は、単一の原因で起こるものではありません。複数の要因が重なるほど、進み方は速くなります。逆に言えば、減らせる要因がいくつもあるということです。
当院では血圧脈波検査装置を用いて、PWVとABIを測定できます。ベッドに横になり、両腕と両足首に血圧計のカフを巻くだけの検査です。血管の「硬さ」と「詰まり」という、性質の異なる二つの情報が同時に得られます。
| PWVでわかること | 心臓から送り出された拍動が血管を伝わる速さを測ります。血管が硬いほど、波は速く伝わります。しなやかなゴム管と、硬い金属管の違いだと考えてください。数値は年齢とともに上がるため、同年代の平均と比べて評価します。いわゆる「血管年齢」は、この値をもとにした表現です。 |
|---|---|
| ABIでわかること | 足首の血圧と腕の血圧の比です。健康な方では足首のほうがやや高くなります。この比が0.9以下の場合、足の動脈のどこかが狭くなっている、あるいは詰まっていることを示します。歩くとふくらはぎが痛む、休むと治まるという症状がある方では、とくに重要な検査です。 |
| 足の状態だけの 問題ではありません |
ABIが低い方は、足の血管だけでなく心臓や脳の血管にも動脈硬化が進んでいることが多いことが分かっています。足の動脈は、全身の血管の状態をのぞく窓のような役割を果たします。自覚症状がない段階でABIの異常が見つかることも珍しくありません。 |
| 検査の受け方 | 仰向けに寝て、両腕と両足首にカフを巻きます。所要時間は5分ほどで、痛みはありません。採血のような前処置も、絶食も必要ありません。靴下を脱いでいただくため、脱ぎ着しやすい服装でお越しいただくとスムーズです。健診の結果をお持ちであれば、あわせてお持ちください。 |
| 結果の見方 | PWVは高いほど血管が硬く、ABIは低いほど詰まりが疑われます。ただし、数値だけで一喜一憂するものではありません。糖尿病や腎臓病の方では血管の石灰化のためABIが逆に高く出ることがあり、その場合は別の指標で判断します。結果はその場で画面をお見せしながら説明します。 |
| 費用と保険 | 動脈硬化の危険因子をお持ちの方、症状がある方については保険診療で行えます。自己負担3割の方で、検査料としては数百円程度です。健診としてご希望の場合は自費となります。ご不明な点は受付でおたずねください。 |
検査の目的は、動脈硬化がどこまで進んでいるかを知ることと、その方が今後10年でどれくらいの危険を抱えているかを見積もることの二つです。
| 問診 | 健診での指摘、喫煙歴、家族歴、現在の内服、歩行時の足の症状、いびきや日中の眠気をうかがいます。ご家族の病歴、とくに若くして心筋梗塞や脳卒中を起こした血縁者の有無は、危険度を見積もるうえで欠かせない情報です。 |
|---|---|
| 血圧と身体所見 | 診察室での血圧に加え、家庭での血圧の記録を重視します。左右の腕で差がないか、足の脈が触れるか、皮膚の色や傷の有無、アキレス腱の厚みも確認します。アキレス腱の肥厚は、家族性高コレステロール血症を見つける手がかりになります。 |
| 血液検査 | LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロール、血糖とHbA1c、腎機能、尿酸、肝機能を確認します。当院は院内で採血を行っており、動脈硬化の評価に必要な項目を一度にそろえられます。尿検査で蛋白尿の有無も確かめます。 |
| PWV・ABI | 血管の硬さと足の動脈の詰まりを測定します。数値の推移を追うことで、治療がうまくいっているかを目に見える形で確認できます。年に一度など間隔をあけて測り直すことで、単発の数値以上の情報が得られます。 |
| 心電図 | 過去の心筋梗塞の痕跡、不整脈、心臓への負担の有無を確認します。心房細動が見つかれば、脳梗塞の予防という別の対策が必要になります。動脈硬化とは異なる仕組みですが、脳梗塞を防ぐという目的では同じくらい重要です。 |
| 専門的な 検査が必要なとき |
ABIの著しい低下、労作時の胸痛、頸動脈の詳しい評価が必要な場合には、循環器科や血管外科、脳神経の専門施設へご紹介します。造影CTやカテーテル検査、頸動脈超音波検査など、必要な検査が速やかに受けられるようおつなぎします。 |
できてしまった動脈硬化を元通りにすることは容易ではありません。目標は、これ以上進ませないこと、そして詰まるという出来事を起こさせないことです。そのためにできることは、はっきりしています。
| 血圧の管理 | まず減塩と体重の管理から始め、必要に応じて薬を用います。目標値は年齢や合併症によって異なります。診察室の血圧だけで判断せず、家庭血圧をもとに調整していきます。朝と晩、決まった時間に測った記録をお持ちください。 |
|---|---|
| 脂質の管理 | LDLコレステロールをどこまで下げるかは、危険因子の数と、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがあるかどうかで変わります。スタチンをはじめとする薬は、数値を下げるだけでなく、蓄積したものが破れにくくする働きがあると考えられています。 |
| 血糖の管理 | 糖尿病がある方では、血糖の管理に加えて、血圧と脂質を同時に整えることが重要です。近年の薬のなかには、血糖を下げるだけでなく心臓や腎臓を守る効果が示されているものがあり、その方の状態に応じて選択します。 |
| 禁煙 | 動脈硬化に対して、最も効果が大きく、最も早く効果が現れる対策です。やめて数年で、心筋梗塞の危険はかなり下がります。何歳からでも遅くはありません。ご希望があればご相談に応じ、禁煙治療を行っている医療機関のご案内もいたします。 |
| 食事と運動 | 当院には管理栄養士が4人在籍しており、糖質のとり方を軸にした栄養指導を行っています。一般論ではなく、実際に食べているものを前提に組み立てます。運動は、速歩を1日30分程度、続けられる形で。血圧や脂質だけでなく、血管そのものへの効果が期待できます。 |
| 背景にある 病気の治療 |
睡眠時無呼吸があればCPAP治療を行い、脂肪肝があればその改善に取り組みます。これらは動脈硬化の危険因子であると同時に、それ自体が治療の対象です。当院はいずれも継続して診療しており、別々の医療機関に通っていただく必要はありません。 |
VASCULAR
見えない進行を、PWVとABIで数字にします
動脈硬化の管理が続きにくいのは、努力の成果も、放置の代償も、目に見えないからです。PWVとABIは、血管の硬さと足の動脈の状態を数値として示します。5分の検査で、痛みはありません。年に一度測り直すことで、今の治療が正しい方向を向いているかを確かめられます。
NUTRITION
管理栄養士4人体制で、食事から取り組みます
血圧、脂質、血糖、体重。動脈硬化の危険因子の多くは、食事の影響を強く受けます。当院では管理栄養士4人が、糖質のとり方をベースにした栄養指導を行っています。「食べすぎに気をつけて」で終わらせず、何を、どのくらい、どう置き換えるかまで具体的にお話しします。
SLEEP
睡眠時無呼吸を、血管の問題として診ます
夜間の無呼吸は、そのたびに血圧を跳ね上げ、血管に負担をかけます。当院は多くの方の睡眠時無呼吸診療とCPAP治療を継続して担当しています。薬を増やしても血圧が下がらない、いびきを指摘されているという方は、睡眠の側から見直すことで状況が変わることがあります。
KAMPO
冷えやのぼせなど、数字に表れない症状にも対応します
院長は漢方専門医として診療を行っています。動脈硬化そのものを漢方薬で治すわけではありませんが、手足の冷え、のぼせ、頭重感といった、検査では説明しきれない症状を抱えている方は少なくありません。標準的な治療を軸に据えたうえで、そうした部分にも対応できます。
これまでの経過をうかがいます
健診で何を指摘されたか、いつからか、喫煙歴、ご家族の病歴、現在飲んでいるお薬を確認します。健診の結果票(できれば数年分)とお薬手帳をお持ちください。過去の数値の動きは、今の一点の数値よりも多くを語ります。
診察と検査を行います
血圧測定、脈の触知、身体所見の確認に加え、採血、心電図、PWV・ABIを行います。PWV・ABIは靴下を脱いで横になっていただくだけで、5分ほどで終わります。血液検査の項目は、その方の背景に応じて調整します。
結果を見ながら方針を決めます
数値をお見せしながら、今どの段階にあるのか、何を優先すべきかを説明します。すぐに薬が必要な方、まず生活の調整から始める方、いずれもあります。ご本人が納得できる形でなければ、治療は続きません。無理のない出発点を一緒に決めます。
続けながら、定期的に確かめます
血圧や血液検査の数値を追いながら、必要に応じて調整します。PWV・ABIは年に一度を目安に測り直し、変化を確認します。栄養指導や睡眠時無呼吸の治療が必要な方は、あわせて継続して担当します。
次の症状は、様子を見ずに行動してください
上の4つは、心筋梗塞や脳梗塞を強く疑う症状です。これらの場合は当院にお電話いただくのではなく、ためらわず救急車を呼んでください。とくに脳梗塞は、治療できる時間の幅が限られており、症状が始まった時刻が治療方針を決めます。何時何分から始まったかを覚えておいていただくことが、そのまま治療の選択肢につながります。また、歩くとふくらはぎが痛む、足の傷が治らないという症状は緊急ではありませんが、早めにご相談ください。
痛みはありません。ベッドに仰向けになり、両腕と両足首に血圧計のカフを巻いて測定します。血圧を測るときの締めつけ感がある程度です。所要時間は5分ほどで、絶食などの準備も必要ありません。靴下を脱いでいただきますので、脱ぎ着しやすい服装でお越しいただくとスムーズです。
PWVの測定値を、同年代の平均と比べて分かりやすく表現したものです。医学的に厳密な定義があるわけではなく、あくまで目安として使われる言葉です。実年齢より高く出た場合、危険因子を見直す一つのきっかけにはなりますが、それだけで病気と決まるものではありません。血圧、脂質、血糖といった他の情報とあわせて判断します。
完全に元通りにすることは難しい、というのが正直なところです。ただし、進行を止めること、蓄積したものを破れにくく安定させることはできます。治療によって血管の内側の状態がいくらか改善するという報告もあります。目標は「若い頃の血管に戻す」ことではなく、「詰まるという出来事を起こさせないまま生涯を過ごす」ことです。これは十分に達成可能な目標です。
動脈硬化に自覚症状が出るのは、かなり進んでからです。症状がないことは、問題がないことを意味しません。ただし、コレステロールが高いというだけで全員が薬を必要とするわけでもありません。年齢、性別、血圧、喫煙、糖尿病の有無などを合わせて、今後10年の危険度を見積もったうえで判断します。まずは一度、全体像を確かめることをおすすめします。
多くの場合、続けることが前提になります。薬は原因を取り除くのではなく、危険な状態を抑えている働きだからです。ただし、体重が減り、生活が変わった結果、量を減らせる方、中止できる方もおられます。「一生」という言葉で決断が止まってしまうのはもったいないことです。まず始めてみて、状況が変われば見直す、という進め方で構いません。
血圧、中性脂肪、血糖、体重については、はっきりした効果が期待できます。一方、LDLコレステロールは食事の影響が思われているほど大きくない場合があり、とくに体質的に高い方では生活習慣の改善だけで目標に届かないことがあります。どこまでを生活で、どこからを薬で担うかは、検査の結果を見ながら決めるべきことです。
間欠性跛行といって、足の動脈が狭くなっているときの典型的な症状です。加齢や腰の病気でも似た症状が出ますが、区別する必要があります。ABI検査はまさにこれを調べるための検査で、その場で判断できます。足の動脈に問題がある方は、心臓や脳の血管にも動脈硬化が進んでいることが多いため、足だけの問題として扱うべきではありません。
関係があります。睡眠時無呼吸では夜間にくり返し血圧が上がり、血管に負担がかかります。薬を増やしても血圧が下がらない方の背景に、睡眠時無呼吸が隠れていることは珍しくありません。当院では睡眠時無呼吸の検査と、CPAPによる治療を継続して行っています。血圧の治療と並行して、睡眠の側からも見直すことができます。
漢方薬が動脈硬化そのものを改善するという十分な根拠は、現時点ではありません。血圧や脂質の管理は、標準的な治療で行うべきものです。そのうえで、手足の冷えやのぼせ、頭重感といった、検査では説明しきれない症状に対しては漢方薬が役立つことがあります。当院では標準治療を軸に据えたうえで、必要な方にご提案しています。
はい、おすすめします。男性で55歳未満、女性で65歳未満の心筋梗塞や狭心症が血縁者にある場合、それ自体が危険因子として扱われます。また、家族性高コレステロール血症という体質が受け継がれている可能性もあります。この場合、若いうちから対策を始めることで経過が大きく変わります。血液検査とPWV・ABIで、現在の状態を確かめておく価値は十分にあります。
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