レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害
夜中に大声で叫ぶ、腕を振り回す、ベッドから飛び出す——本人には夢を見ていた記憶しかなく、多くは同じ部屋で眠るご家族が先に気づきます。レム睡眠行動障害は、夢を見ている間に働くはずの「筋肉のブレーキ」が外れ、夢の内容がそのまま体の動きとして出てしまう状態です。50歳以降の男性に多く、本人やご家族のけがにつながります。そしてもう一つ、この症状はパーキンソン病やレビー小体型認知症といった神経の病気に先行して現れることが知られています。確定診断には検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要で、当院では行えません。当院の役割は、まぎらわしい病態——とくに睡眠時無呼吸——を見分け、薬の影響を確かめ、安全対策をお伝えしたうえで、神経内科の専門医へおつなぎすることです。
「寝言」「寝ぼけ」として片づけられていることが少なくありません。しかし、動きをともなう夜間の行動にはいくつもの異なる原因があり、それぞれ対応が違います。まずはここを見分けるところから始めます。
夢を見ることそのものは異常ではありません。問題になるのは、夢を見ている間に体が動いてしまうことです。
なぜ、夢のとおりに動いてしまうのか
睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠がおよそ90分の周期で繰り返されます。夢の多くはレム睡眠中に見ています。このとき通常は、脳から筋肉への指令が遮断され、全身の力が抜けた状態になります。夢の中で走っても、実際の体は動きません。
レム睡眠行動障害では、このブレーキが働かなくなります。結果として、夢の内容がそのまま行動として現れます。夢の内容は、追いかけられる、襲われる、動物や人と争うといった攻撃的・防御的なものが多く、叫ぶ、殴る、蹴る、ベッドから飛び出すといった激しい動きにつながります。
レム睡眠は睡眠の後半に多くなるため、症状は明け方に集中する傾向があります。また、起こされると比較的はっきり目が覚め、直前に見ていた夢を語れることも特徴のひとつです。
確かめておく意味は、二つあります
一つは、けがです。本人の打撲や骨折、同じ寝床で眠るご家族への外傷が、実際に起こります。安全対策は診断がつくのを待たずに、今日から始められます。
もう一つは、この症状が持つ意味です。ほかに神経の症状がない方を長期間追跡した研究では、年月の経過とともにパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といった病気を発症する方が一定の割合でみられることが報告されています。国際的な多施設共同研究では、12年の追跡で7割を超えたという数字が示されています。
この事実は、不安をあおるためにお伝えするものではありません。逆に言えば、体の症状が出るより前の段階で神経内科の診療につながり、経過を見ていける立場にあるということです。将来の治療法の研究も、この時期の方を対象に進められています。だからこそ、「ただの寝ぼけ」で終わらせずに確かめる価値があります。
夜間の異常な行動は、レム睡眠行動障害だけが原因ではありません。当院ではまず、この整理から行います。
はじめにはっきりお伝えします。レム睡眠行動障害の確定診断は、当院では行えません。そのうえで、当院にできることを整理します。
| 問診 | いつから、どのくらいの頻度で、どのような行動が出ているか、時間帯、けがの有無、夢を覚えているかをうかがいます。ご本人には自覚がないことが多いため、同居されている方からうかがう内容が最も重要な情報になります。可能であれば、夜間の様子を撮影した動画をお持ちください。お薬手帳も必ずご持参ください。 |
|---|---|
| 服薬内容の 確認 |
抗うつ薬をはじめ、症状を起こしうる薬が含まれていないかを確認します。開始時期と症状の始まりが一致する場合、減量や変更で改善することがあります。他院で処方されている薬についても、必要に応じて処方元と相談しながら調整します。 |
| 睡眠時無呼吸の 評価 |
夜間の行動が無呼吸によるものかどうかを見分けることが、実際の診療で最も重要な分岐点になります。当院は睡眠時無呼吸の診療に力を入れており、多数のCPAP患者さんを継続して診ています。在宅で行う睡眠検査で評価します。 |
| 血液検査 | 鉄欠乏、甲状腺機能、肝腎機能、電解質、血糖などを確認します。周期性四肢運動やむずむず脚症候群の背景を調べる意味もあり、いずれも院内で採血できます。 |
| 行えない検査 (確定診断) |
レム睡眠行動障害の確定診断には、脳波、眼球運動、あごと手足の筋電図、ビデオを同時に記録する、検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要です。当院が行っているのは在宅での睡眠検査で、これは主に無呼吸を評価するためのものです。レム睡眠中に筋肉の力が抜けていないことを証明することはできません。 |
| 行えない評価 (神経内科) |
表情の乏しさ、動作の遅さ、手のふるえ、においの感じにくさ、立ちくらみ、便通の変化といった所見の評価と、それにもとづく画像検査(MIBG心筋シンチグラフィ、ドパミントランスポーターシンチグラフィなど)は、神経内科の領域です。当院では行わず、専門医へおつなぎします。 |
レム睡眠行動障害が疑われる場合、当院での役割は「見分けて、整えて、つなぐ」ことです。
| なぜ紹介 するのか |
確定診断に必要な検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査と、神経内科としての診察・画像評価が必要だからです。当院でできるのは、まぎらわしい病態を除外し、薬の影響を整理し、優先度を判断したうえで適切な窓口へおつなぎすることまでです。ここを曖昧にせず、最初にお伝えします。 |
|---|---|
| 紹介先 | 神経内科の専門医が在籍し、睡眠障害と神経変性疾患の両方に対応できる医療機関へおつなぎします。検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査が可能な睡眠専門施設を併設している、または連携している施設を優先します。 |
| 紹介状に 記載する内容 |
経過、ご家族から見た夜間の様子、服薬内容、当院で行った睡眠時無呼吸の検査結果、血液検査の結果をまとめてお渡しします。すでに調べた内容を重複させないことで、専門施設での評価を早められます。 |
| 紹介後の 当院の役割 |
診断がついた後も、高血圧や糖尿病などの日常的な内科診療、CPAPの継続管理、睡眠についてのご相談は当院で承ります。専門施設への通院間隔が空く期間を、身近な場所でつなぐ役割を担います。ご家族からのご相談も受け付けています。 |
| 別の診断 だった場合 |
検査の結果、レム睡眠行動障害ではないと分かることもあります。その場合は原因に応じて、当院で対応できるもの(睡眠時無呼吸、薬剤の影響、不眠症、むずむず脚症候群など)はそのまま当院で診療を続けます。 |
診断を待つ必要はありません。レム睡眠行動障害の対応では、薬より先に、けがを防ぐ環境づくりが優先されます。
最後の項目は特に大切です。夢の中の状況に反応して激しく抵抗されることがあり、押さえようとしたご家族がけがをする例があります。落ち着いてから、静かに声をかけてください。
DIFFERENTIAL
まぎらわしい病態を、先に整理します
夜間の異常行動には、睡眠時無呼吸、ノンレム睡眠からの覚醒障害、夜間てんかん、薬の影響と、いくつもの原因があります。当院ではまずここを整理し、当院で対応できるものは当院で治療し、専門施設での評価が必要な方をおつなぎします。順番を間違えないことが、結果として遠回りを防ぎます。
SLEEP APNEA
睡眠時無呼吸の診療実績があります
当院は多数のCPAP患者さんを継続して診療しています。無呼吸にともなう体動を、レム睡眠行動障害と取り違えないための経験があります。実際、無呼吸の治療によって夜間の行動が消える方がいます。この見分けを最初に行えることが、当院が担う役割の中心です。
MEDICATION
服薬内容を、全体として確認します
抗うつ薬をはじめ、夜間の行動を引き起こしうる薬があります。当院は内科として複数の慢性疾患を継続して診療しており、他院処方も含めた薬の全体像を確認したうえで、減量や変更の余地があるかを検討します。自己判断での中止は避け、処方元と相談しながら進めます。
CO-MANAGEMENT
紹介したあとも、診療は続きます
専門施設へおつなぎしたあとも、日常の内科診療、CPAPの管理、生活面やご家族からのご相談は当院で承ります。院長は漢方専門医でもあります。レム睡眠行動障害そのものを漢方で治せるわけではありませんが、睡眠の質や日中の体調を支える目的でご提案できる場合があります。
ご家族と一緒に、夜間の様子をうかがいます
ご本人には自覚がないことが多いため、同居されている方からうかがう内容が最も重要な情報になります。可能であればご一緒にお越しください。難しい場合は、夜間の様子を記録した動画があると大きな助けになります。お薬手帳をご持参ください。
まぎらわしい病態を確かめます
診察のうえ、必要に応じて在宅の睡眠検査と血液検査を行います。睡眠時無呼吸、鉄欠乏、甲状腺機能などを確認し、あわせて薬の影響を整理します。この段階で説明がつき、当院での治療に進める方もいます。
神経内科専門医へおつなぎします
レム睡眠行動障害が疑われる場合は、経過と検査結果をまとめた紹介状をお渡しし、神経内科の専門医へご紹介します。終夜睡眠ポリグラフ検査を含めた評価を受けていただきます。ご希望の地域や通院しやすさもうかがいます。
安全対策と、その後の診療
ご紹介と並行して、寝室の安全対策を具体的にご説明します。診断がついた後も、日常の内科診療、CPAPの管理、ご家族からのご相談は当院で承ります。専門施設と当院の二本立てで、継続して関わります。
次の場合は、様子を見ずにご相談ください
夜間の行動によるけがは、実際に起こります。まずは寝室の安全対策を優先してください。そのうえで、日中の症状をともなう場合には、時間をおかずにご相談ください。夜間の行動と日中の神経症状が重なる場合には、神経内科での評価をより急ぐことになります。当院では、必要と判断した方をできるだけ早くおつなぎできるよう、事前に検査を済ませたうえでご紹介しています。
寝言だけであれば、多くは心配のないものです。レム睡眠行動障害で問題になるのは、寝言に加えて体の動きをともなう場合です。腕を振り回す、蹴る、起き上がる、ベッドから飛び出すといった動きがあるか、その結果としてけがや家具の破損が起きているかが目安になります。あわせて、明け方に多い、起こされると夢の内容を説明できる、50歳以降に始まった、という点も手がかりになります。
ご家族からうかがう夜間の様子が、最も重要な情報になります。診察にはできるだけご一緒にお越しください。難しい場合は、スマートフォンで夜間の様子を撮影しておいていただけると、実際の動きを確認できます。ただし、これらはあくまで手がかりです。確定診断には、脳波や筋電図を同時に記録する検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要になります。
いいえ、当院では確定診断を行えません。診断には、脳波・眼球運動・あごや手足の筋電図・ビデオを同時に記録する、検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。当院が行っているのは在宅での睡眠検査で、これは主に睡眠時無呼吸を評価するためのものであり、レム睡眠中に筋肉の力が抜けていないことを証明することはできません。当院の役割は、まぎらわしい病態を整理したうえで、必要な方を神経内科の専門医へおつなぎすることです。
必ずというわけではありません。ただし、ほかに神経の症状がない方を長期に追跡した研究では、年月とともに一定の割合でパーキンソン病やレビー小体型認知症などを発症することが報告されており、国際的な多施設共同研究では12年の追跡で7割を超えたとされています。一方で、長期間発症せずに経過する方もおられます。また、抗うつ薬など薬の影響で症状が出ている場合は、意味合いが異なります。だからこそ、まず正確に診断をつけることが出発点になります。
個人差が大きく、期間を言い切ることはできません。報告されている数字は集団としての傾向であり、目の前のおひとりの経過を予測するものではありません。大切なのは、この期間に神経内科の診療につながっておくことです。定期的に経過を見ていれば、変化が出たときに早く気づけます。また、この段階の方を対象とした治療の研究も進められており、その情報を得られる立場にいることにも意味があります。
有効性が知られている薬はあります。就寝前に用いる薬が国際的に使われていますが、眠気やふらつき、転倒、睡眠時無呼吸の悪化といった注意点があり、とくに高齢の方では慎重な判断が必要です。当院では診断を行えないため、薬物治療の開始は原則として紹介先の判断にお任せしています。一方、寝室の安全対策は薬より優先される対応であり、こちらは当院でも具体的にご説明できます。
二つの可能性があります。一つは無呼吸の治療が十分でないこと。もう一つは、無呼吸とは別にレム睡眠行動障害が併存していることです。まずCPAPの使用状況とデータを確認し、圧やマスクの調整で改善するかを見ます。それでも夜間の行動が残る場合には、専門医へのご紹介を検討します。当院はCPAPの継続管理を行っていますので、この確認はそのまま行えます。
自己判断で中止しないでください。抗うつ薬は夜間の行動を起こしうる薬ですが、うつや不安の治療として必要で飲まれている場合、急にやめることには別のリスクがあります。当院では、開始時期と症状の始まりが重なっていないかを確認したうえで、処方元の医師と相談しながら、減量や変更の余地があるかを検討します。薬が原因であれば、調整によって症状が軽くなることがあります。
まず、けがを防ぐことを最優先にしてください。寝室から危険なものを片づけ、ベッドの周囲を整え、同じ寝床で眠っている場合は寝床を分けます(同じ部屋で構いません)。行動の最中に無理に押さえつけたり、揺り起こしたりしないでください。夢の中の状況に反応して抵抗され、双方がけがをすることがあります。落ち着いてから声をかけてください。そして、夜間の様子を記録しておくこと。可能であれば動画を残していただけると、診察のときに大きな助けになります。
そのようなことはありません。ご紹介は、確定診断と神経内科としての評価を受けていただくためのものです。診断がついた後も、高血圧や糖尿病などの日常的な内科診療、CPAPの管理、睡眠についてのご相談は当院で承ります。専門施設への通院は間隔が空くことが多いため、その間を身近な場所で支える役割を担います。検査結果や治療方針は、専門施設と情報を共有しながら進めます。
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