妊娠中の不眠(眠れない)原因と対策|薬に頼らない治療法も解説|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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妊娠中の不眠(眠れない)原因と対策|薬に頼らない治療法も解説

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2026年7月22日

妊娠中の不眠(眠れない)原因と対策|薬に頼らない治療法も解説

妊娠中に眠れないのはなぜ?不眠の原因と母子を守るための正しい対策

妊娠中の不眠はよくある悩みです

妊娠中は約半数の女性が不眠を経験し、特に妊娠後期には70%以上が睡眠の質の低下を訴えるとされています。ホルモンの変化、頻尿、腰痛や胎動などの身体的不快感が主な原因です。慢性的な睡眠障害は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧腎症、早産などのリスクとも関連することが報告されており、放置せず適切に対処することが大切です。

妊娠中に不眠が起こる原因と放置するリスク

妊娠中の不眠は、単なる精神的なストレスだけでなく、特有の身体的変化が大きく関わっています。妊娠初期には、黄体ホルモン(プロゲステロン)の急激な増加によって日中に強い眠気が起こり、その反動で夜眠れなくなることや、つわりの不快感が睡眠を妨げます。妊娠後期に入ると、大きくなった子宮による膀胱の圧迫(頻尿)、胎動、こむら返り、胃酸の逆流、そして仰向けで寝ることの息苦しさなどが重なり、深い睡眠をとることが物理的に困難になります。

「妊娠中だから仕方がない」と重度の不眠を放置することは推奨されません。近年の研究データから、妊娠中の強い不眠を長期間放置すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが上昇し、難産や帝王切開の割合が高くなることがわかっています。また、不眠は産前・産後うつ病の最も大きな危険因子の一つであるため、早期に適切な治療を行うことが母子ともに非常に重要です。

第一選択は薬を使わない治療法(CBT-I)

現在、医学的なコンセンサスとして最も推奨されているのは、薬を使わない「不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)」です。CBT-Iは、睡眠に関する誤った思い込みを修正する認知療法、就寝時間と起床時間を一定にして睡眠の質を高める刺激コントロール法、寝床にいる時間を実際の睡眠時間に合わせて調整する睡眠制限法、そしてリラクゼーション技法を組み合わせた治療です。

妊娠18〜32週の女性を対象としたランダム化比較試験では、CBT-Iにより不眠の重症度や夜間の覚醒時間が有意に改善し、寛解率も向上したことが報告されています。オンラインで受けられるデジタルCBT-I(dCBT-I)についても、不眠症状や睡眠の質、産後うつ症状の改善に有効かつ安全であることが示されており、対面での通院が難しい妊婦さんにも利用しやすい選択肢です。妊娠中期に実施されたCBT-Iが産後うつの症状を間接的に軽減したという報告もあり、母体のメンタルヘルス全体にも良い影響が期待されます。

具体的なアプローチには以下のようなものがあります。

睡眠制限療法

長く眠ろうとして早い時間から布団に入りすぎると、かえって睡眠が浅くなり、夜中に何度も目が覚める原因になります。実際に眠れている時間に合わせて布団に滞在する時間を制限し、布団の中にいる時間の「睡眠の密度」を高め、熟睡感を取り戻す方法です。

刺激統制法

「布団に入ってもどうせ眠れない」という脳の誤った学習(条件付け)を、「布団は眠るための場所である」と書き換える訓練です。眠気がないときは布団に入らず、布団の中で20分以上眠れない場合は一度ベッドから出て、薄暗い部屋で読書や音楽を聴くなどしてリラックスし、強い眠気を感じてから再び布団に戻るというルールを徹底します。

認知再構成法

「今日も眠れなかったらどうしよう」「最低でも8時間は寝ないといけない」といった、睡眠に対する過度なプレッシャーを和らげるアプローチです。妊娠中は睡眠が細切れになるのが自然な身体の準備過程であると理解し、不安を軽減していきます。

リラクゼーション法

自律神経の過度な興奮を鎮めるため、筋肉にわざと力を入れてからスッと抜く「漸進的筋弛緩法」や、ゆっくりとした「腹式呼吸」などを就寝前に取り入れ、心身の緊張を解きほぐします。

睡眠衛生指導(生活環境と習慣の改善)

CBT-Iと並行して、日々の生活習慣を整えることも不可欠です。

光のコントロール

朝は決まった時間に起床し、太陽の光を浴びて体内時計をリセットします。夜間はスマートフォンやテレビなどのブルーライトを避けます。

日中の活動

医師の許可があれば、マタニティヨガや軽いウォーキングなどを取り入れ、日中に適度に体を動かすことで夜間の自然な眠気を促します。

寝室の環境調整

室温や湿度を快適に保ちます。お腹が大きい時期は、シムスの体位(体の左側を下にして横向きに寝る姿勢)をとり、抱き枕などを活用して身体の負担を減らす工夫が有効です。

カフェインの制限

夕方以降のコーヒー、紅茶、緑茶などの摂取を控えます。

また、不眠を紛らわすために寝酒(アルコール)に頼ることは、胎児の脳や身体の発達に深刻な障害を引き起こす「胎児性アルコール・スペクトラム障害」の絶対的な原因となるだけでなく、睡眠を浅くし不眠をさらに悪化させるため、絶対に避けてください。

薬物療法が必要な場合の選択肢

CBT-Iや生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られず、睡眠不足が母体の健康に影響するほど強い場合には、薬物療法が検討されます。ただし妊娠中の不眠に関する確立された治療ガイドラインは現時点で存在せず、医師との十分な話し合いのもとでリスクとベネフィットを個別に検討する必要があります。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬であるドキシラミンは、かつて米国食品医薬品局(FDA)から先天奇形リスク増加のない薬剤として分類されていた実績があり、比較的安全性データが豊富な選択肢とされています。ジフェンヒドラミンも同様に、催奇形性のリスク増加は報告されていません。トラゾドンとジフェンヒドラミンを比較したランダム化比較試験では、両薬剤とも睡眠時間と睡眠効率を改善し、新生児の異常も認められませんでした。

ベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z薬)

ゾルピデムなどのZ薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)については、早産や低出生体重児との関連を示す観察研究がある一方、家族内比較(同じ母親のきょうだい間比較)ではこうしたリスクの有意差が消失したとの報告もあり、evidence(根拠)は一貫していません。ベンゾジアゼピン系薬剤も、早期妊娠中の使用と流産リスクとの関連が報告されており、慎重な判断が必要です。

オレキシン受容体拮抗薬

近年よく処方されるスボレキサントなどの新しいタイプの睡眠薬ですが、妊婦に対する安全性のデータがまだ不十分であるため、原則として妊娠中には使用が避けられます。

市販の睡眠改善薬(抗ヒスタミン薬)やサプリメント

風邪薬の成分を利用した市販の睡眠改善薬は、一時的な使用にとどめるべきであり、自己判断での長期連用は危険です。また、睡眠サプリメントとして海外で有名なメラトニンも、妊娠中の安全性データが確立していないため推奨されません。

まとめ

妊娠中の強い不眠には、まずCBT-Iのような非薬物療法を第一選択として試すことが医学的に推奨されています。それでも改善が乏しい場合は、比較的安全性データの多い抗ヒスタミン薬などを含め、産婦人科医と相談しながら個別にリスクとベネフィットを検討していくことが重要です。自己判断で市販薬やハーブサプリメントを使用せず、必ず主治医に相談してください。

参考文献

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要約: 欧州不眠ネットワークによる周産期不眠の評価・治療に関する合意声明。CBT-Iを第一選択とする国際的な専門家見解をまとめた文献。

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要約: 妊婦を対象にデジタルCBT-Iの有効性を検証したRCT。不眠症状の有意な改善を示し、遠隔医療の有用性を裏付けた。

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要約: 台湾の大規模コホート研究。妊娠早期のベンゾジアゼピン系・Z薬使用と早産・低出生体重リスクとの関連を検証した論文。

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要約: 妊娠後期の不眠治療が産後うつ症状を軽減することを示したランダム化比較試験。母体メンタルヘルスへの影響を検証。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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