GIST(消化管間質腫瘍)
GIST(消化管間質腫瘍)
GIST(消化管間質腫瘍)
GISTは、胃や小腸の壁の中にある「カハール介在細胞」という細胞から発生する腫瘍です。胃がんや大腸がんのように粘膜から発生するのではなく、粘膜の下、筋肉の層から膨らむように育つため、内視鏡では「粘膜下腫瘍」という盛り上がりとして映ります。小さいうちは症状がなく、健診の胃カメラやCTで偶然見つかることがほとんどです。リンパ節に転移することはまれで、大きさと細胞の増え方によって再発の危険度を段階的に評価し、経過観察でよいものと、切除すべきものを分けて考えます。当院では、指摘された粘膜下腫瘍を内視鏡で確認し、GISTが疑われる場合は診断のつく施設へ速やかにおつなぎしています。手術後や薬物治療中の方の経過や体調管理も、当院で分担しています。
粘膜下腫瘍の多くはGIST以外の良性の腫瘍です。ただし、見た目だけでは区別がつかないため、大きさと形を記録し、変化を追うことが出発点になります。
GISTは、消化管の運動のリズムをつくるカハール介在細胞から発生する腫瘍です。KITやPDGFRAという遺伝子の変化によって、細胞が増え続けることが原因と分かっており、この仕組みが治療薬にそのまま結びついています。
壁の中から膨らむため、つまむ生検では診断がつきません
胃や腸の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜という層でできています。胃がんや大腸がんは一番内側の粘膜から発生しますが、GISTは主に固有筋層から発生し、正常な粘膜に覆われたまま内側に盛り上がってきます。
このため、内視鏡で表面をつまむ通常の生検では、正常な粘膜が採れるだけで診断はつきません。「生検で異常なし」は、GISTを否定した結果ではありません。診断には、超音波内視鏡で腫瘍に針を刺して組織を採る検査(EUS-FNA)が必要で、これを行える施設へご紹介します。
「良性か悪性か」ではなく、再発の危険度で考えます
GISTは、はっきり良性と悪性に分かれる腫瘍ではなく、程度の差はあってもすべてに再発の可能性があると考えます。危険度は、腫瘍の大きさ、細胞分裂の数、発生した部位、手術の際に腫瘍が破れたかどうかで判断し、超低リスクから高リスクまで段階的に評価します。
同じ3cmでも、胃にできたものと小腸にできたものでは危険度が違い、小腸のほうが高く見積もられます。手術の後にお薬を飲むかどうかは、この危険度の評価によって決まります。
リンパ節への転移は、まれです
胃がんや大腸がんでは周囲のリンパ節を一緒に取ることが標準ですが、GISTではリンパ節転移がまれなため、リンパ節郭清は原則として行いません。腫瘍を含めて必要最小限を切除すれば足りるため、胃を大きく切らずに済むことが多くあります。
一方で、進行した場合の転移先は肝臓と腹膜です。手術後の経過観察で造影CTを定期的に行うのは、この二つを確認するためです。
粘膜下腫瘍を指摘されたとき、そのまま経過を追ってよいのか、診断と切除に進むべきかは、できた場所と大きさ、形の変化によって決まります。
当院の役割は、指摘された粘膜下腫瘍を記録に残る形で確認し、経過観察でよいものと、診断が必要なものを分けることです。内視鏡、腹部エコー、血液検査を院内で行います。
| 問診と診察 | いつ、どの検査で、どこに、どのくらいの大きさのものを指摘されたのかをうかがいます。黒い便、貧血、腹痛、体重減少の有無、これまでの内視鏡やCTの記録も確認します。過去の検査結果や画像は、大きさの変化を比べる貴重な情報ですので、必ずご持参ください。 |
|---|---|
| 上部消化管内視鏡 (胃カメラ) |
粘膜下腫瘍の位置、大きさ、形、表面のくぼみや潰瘍の有無、周囲の粘膜の張り具合を確認し、画像を記録します。前回の検査と比べて大きくなっていないかを見ることが、最も重要な情報になります。表面をつまむ生検では診断がつかないため、必要な場合は穿刺生検のできる施設へおつなぎします。 |
| 腹部エコー | 大きな腫瘍では、壁の外への広がり方や、肝臓に転移を疑う所見がないかを確認します。胃や腸のガスの影響を受けるため、これだけで小さな腫瘍を評価することはできませんが、負担なく繰り返せる検査として、経過の確認に用います。 |
| 血液検査 | 貧血の有無と程度、鉄の不足(ヘモグロビン、フェリチン)、肝機能を調べます。腫瘍が出血していると、自覚がないまま鉄欠乏性貧血が進むことがあります。GISTには、診断や経過の判断に使える腫瘍マーカーはありません。数値が正常であることは、腫瘍がないことの根拠にはなりません。 |
| 精密検査の ご紹介 |
診断が必要な場合は、超音波内視鏡(EUS)と穿刺生検(EUS-FNA)、造影CTを行える連携病院へご紹介します。EUSは腫瘍がどの層から出ているかと内部の性状を、造影CTは腫瘍の広がりと肝臓・腹膜への転移を評価します。当院の内視鏡画像と経過を添えて、先方での判断が早く進むようにします。 |
| 治療中・治療後の 経過 |
手術を受けた方には、術後の食事の調整、体重や貧血の確認を行います。分子標的薬を内服中の方には、むくみ、下痢、皮疹、血球減少、肝機能障害といった副作用の確認と対応を、治療を担当する病院と連携しながら分担します。 |
GISTの治療は、切除できるものは手術で取りきることが基本です。取りきれない場合や再発した場合には、原因となる遺伝子の働きを抑える分子標的薬が中心となり、長期にわたって効果を保つことが期待できます。
| 経過観察 | 胃にできた2cm未満の粘膜下腫瘍で、超音波内視鏡に悪性を疑う所見がなければ、年に1〜2回の内視鏡で大きさと形を確認します。変化がなければそのまま経過を追い、増大や形の変化があれば診断と切除に進みます。「放置」ではなく、間隔を決めて確認を続けることが経過観察です。 |
|---|---|
| 手術 | 腫瘍を含めて必要最小限の範囲を切除します。リンパ節郭清は原則として不要で、胃であれば部分切除で済むことが多く、腹腔鏡での手術や、内視鏡と腹腔鏡を組み合わせて切除範囲を小さくする方法(LECS)も行われています。手術中に腫瘍の被膜を破らないことが、その後の経過を左右する重要な点です。 |
| 手術前の 薬物治療 |
腫瘍が大きい場合や、直腸や食道と胃のつなぎ目など、そのまま切除すると機能が大きく損なわれる場所にある場合は、先にイマチニブを内服して腫瘍を小さくしてから手術を行うことがあります。切除範囲を小さくし、被膜を破らずに取りきるための方法です。 |
| 手術後の 補助療法 |
再発の危険度が高いと判断された場合には、手術後にイマチニブを3年間内服します。再発を減らし、経過を改善することが目的です。効いているかどうかが実感しにくい治療ですが、決められた期間を飲みきることに意味があります。危険度が低い場合には、内服は行わず経過観察のみとなります。 |
| 転移・再発 した場合 |
イマチニブの内服が治療の中心となり、効果がある限り続けます。効果が弱まった場合には、スニチニブ、レゴラフェニブ、リプレチニブと薬を切り替えていきます。イマチニブが効きにくい特定の遺伝子変化(PDGFRA D842V)には、アバプリチニブという別の薬が用いられます。治療前に遺伝子の変化を調べることが、薬選びにつながります。 |
| 副作用への 対応 |
イマチニブでは、まぶたや足のむくみ、吐き気、下痢、皮疹、筋肉のけいれん、白血球や赤血球の減少、肝機能の数値の上昇が起こることがあります。多くは対応が可能で、自己判断で中止すると効果が失われるため、まずご相談ください。当院では内服中の血液検査と体調の確認を分担します。 |
治療は病院で、日々の体調は当院で
GISTの手術や薬物治療は、専門施設で行われます。しかし、内服中の副作用の確認、食事が取れないときの対応、発熱時の初期対応、貧血や体重減少への対応は、近くのかかりつけ医が担うほうが、患者さんにとって負担が少なくなります。当院では、治療を担当する病院と情報を共有しながら、治療中・治療後の日常を支える役割を引き受けています。胃を切除した後の食事については管理栄養士が、食欲不振や倦怠感には漢方治療も含めて対応します。
ENDOSCOPY
「粘膜下腫瘍」と言われた方の受け皿になります
健診の胃カメラで粘膜下腫瘍を指摘されたものの、どこで何を確認すればよいか分からないまま数年が過ぎてしまう方が多くおられます。当院では、位置と大きさ、表面の状態を画像として記録し、経過観察でよいのか、診断へ進むべきかを当日にお伝えします。ここが、GISTを適切な時期に捉える入口になります。
RIGHT DIAGNOSIS
診断のつく方法へ、確実につなぎます
粘膜下腫瘍は、通常の生検では診断がつきません。当院ではその限界をあらかじめお伝えし、診断が必要と判断した場合には、超音波内視鏡下の穿刺生検を行える連携病院へご紹介します。「生検で異常なし」という結果だけで安心して終わりにしないことが、この病気では大切です。
FOLLOW-UP
経過観察の間隔を決め、記録に残します
2cm未満で経過観察となる方には、次にいつ内視鏡を受けるべきかを具体的にお伝えし、記録に残します。毎回、前回の画像と比べて大きさと形の変化を確認します。経過観察の目的は、変化を見逃さないことと、変化がないことを確認して安心していただくことの両方です。
SHARED CARE
術後・内服中の日常を、近くで支えます
胃を切除した後の食事の組み立て、体重や貧血の確認、分子標的薬の内服中の副作用への対応や採血を、治療を担当する病院と連携して分担します。むくみや下痢、皮疹といった困りごとに、近くで相談できる場所があることが、治療を続ける支えになると考えています。
まずは診察でご相談ください
指摘された所見の内容と時期、その後の変化、症状の有無をうかがいます。健診結果、過去の内視鏡やCTの記録・画像、お薬手帳をお持ちいただくと、大きさの変化を比べることができます。すでに他院で治療中の方は、治療の内容が分かる資料や紹介状をお持ちください。
内視鏡と血液検査で現状を確認します
胃カメラで腫瘍の位置、大きさ、表面の状態を確認し、画像を記録します。あわせて血液検査で貧血と鉄の状態、肝機能を調べます。必要に応じて腹部エコーを行います。検査の日程はご都合に合わせて調整します。
方針のご説明と、必要な場合のご紹介
経過観察でよい場合は、次の内視鏡の時期を具体的にお伝えします。診断が必要と判断した場合は、超音波内視鏡と穿刺生検、造影CTを行える連携病院へご紹介します。紹介先での結果は当院にも共有され、その後の方針を一緒に確認します。
経過観察、あるいは治療中・治療後の経過
経過観察の方は、決められた時期に内視鏡で変化を確認します。手術や薬物治療を受けた方は、治療を担当する病院と連携しながら、食事の調整、副作用への対応、定期的な血液検査を当院で行います。
次の症状があるときは、様子を見ずにご連絡ください
黒色便や吐血は、腫瘍の表面から出血しているサインで、貧血が急速に進むことがあります。強い腹痛と嘔吐は、腸閉塞や腸重積、まれに腫瘍の破裂の可能性があり、急を要します。イマチニブ内服中の急なむくみや体重増加は体液が貯まっているサイン、発熱は白血球が減った状態での感染の可能性があり、いずれも「様子を見る」対象ではありません。診療時間外であれば、治療を担当している病院か救急外来へ連絡してください。当院では、治療中の方に、時間外の連絡先をあらかじめ確認していただいています。
粘膜下腫瘍と呼ばれるもののなかには、平滑筋腫、神経鞘腫、脂肪腫、異所性膵など良性のものが多く含まれ、肝臓や脾臓に外から押されているだけのこともあります。見た目だけで区別することは難しいため、まずは位置と大きさ、形を記録し、変化を追うことから始めます。2cm以上のものや、増大しているもの、表面にくぼみがあるものでは、診断を確定させる検査へ進みます。
通常の生検は粘膜の表面をつまむ検査で、粘膜下腫瘍は正常な粘膜に覆われているため、腫瘍そのものが採れないことがほとんどです。「異常なし」はGISTを否定した結果ではなく、「腫瘍にたどり着いていない」という意味だとお考えください。診断が必要な場合は、超音波内視鏡で腫瘍に直接針を刺して組織を採る検査を行える施設をご紹介します。
胃にできた2cm未満の粘膜下腫瘍で、悪性を疑う所見がなければ、経過観察が妥当な選択です。ただし、これは「何もしない」ことではなく、年に1〜2回の内視鏡で大きさと形を確認し続けることを意味します。実際に問題となるのは、経過観察と言われたまま次の検査を受けずに数年が過ぎてしまうことです。当院では次回の時期をお伝えし、記録に残しています。
大部分のGISTは、生まれ持った体質ではなく、その細胞に後から起きた遺伝子の変化によるもので、ご家族に遺伝することはありません。ごくまれに、家族内で発生する型や、神経線維腫症1型、若年に多いSDH欠損型といった特別な背景を持つものがあり、こうした場合は専門施設での相談をご案内します。ご心配な点があれば、診察の際にお伝えください。
GISTはリンパ節に転移することがまれなため、リンパ節を取る手術は原則として行いません。腫瘍を含めて必要最小限の範囲を切除すれば足り、胃であれば部分切除で済むことが多くあります。腹腔鏡での手術や、内視鏡と組み合わせて切除範囲をさらに小さくする方法も行われています。手術中に腫瘍の被膜を破らないことが、最も重視される点です。
再発の危険度が高いと判断された場合の手術後の内服は、3年間が目安です。効果を実感しにくい治療ですが、決められた期間を飲みきることで再発が減ることが分かっています。転移や再発に対する治療の場合は、効果がある限り続けます。むくみや下痢などの副作用で続けにくいときは、自己判断で中止せず、まずご相談ください。対応できることが多くあります。
手術や薬物治療そのものは専門施設で受けていただくのが最善です。一方で、内服中の副作用の確認と採血、胃を切除した後の食事の相談、貧血や体重減少への対応、発熱時の初期対応は、近くのかかりつけ医が担うほうが負担が少なくなります。当院では治療を担当する病院と情報を共有し、日常の困りごとに近くで対応する役割を引き受けています。
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