2026年10月09日

漢方薬で肌の老化は防げる?しみ・しわ・乾燥への効果を医師が解説
Skin Aging and Kampo Medicine
漢方薬で肌の老化は防げるのか
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年10月9日
年齢を重ねると、肌の乾燥やしわ、しみが気になってきます。「体の内側から整える」というイメージから、漢方薬に期待する方も少なくありません。
結論から言うと、高齢者の肌の乾燥とかゆみには漢方薬を試した国内の比較試験があり、皮膚科の指針でも「使用を考慮してよい」とされています[1]。一方、しわやしみといった見た目の老化を漢方薬で防げるかは、人では確かめられていません。見た目の老化を遅らせる方法として効果が確かめられているのは、毎日の日焼け止めです[2]。
Point
この記事のポイント
- 顔の見た目の老化には紫外線が大きく関わり、ある研究では約8割と推定されています
- 高齢者の乾燥とかゆみには漢方薬の比較試験があり、皮膚科の指針で「考慮してよい」とされています
- しわやしみへの効果は人では確かめられていません。漢方薬にも副作用があり、自己判断で長く飲み続けるのは避けましょう
肌の老化は何が原因?
肌の老化には、年齢そのものによる変化と、紫外線など外からの影響があります。フランスの女性298人を、日光を好む人と避ける人に分けて比べた研究では、しみなどの色むらは年齢にかかわらず紫外線と強く結びつき、たるみは年齢による影響が大きく、しわはその両方が関わっていました。顔の見た目の老化のおよそ8割は紫外線によると推定されています。ただし、化粧品会社の研究者による白人女性の調査です[3]。
高齢になると、肌の水分を保つ成分(天然保湿因子やセラミドなど)が減り、皮膚の生まれ変わりも遅くなるため、肌が乾燥しやすくなります。この乾燥が、高齢者のかゆみの最も多い原因です[1]。
漢方では肌の老化をどうとらえるか
漢方では、肌の乾燥を「血虚(けっきょ)」、しみやくすみを「瘀血(おけつ)」と関連づけるなど、肌の変化を体全体の状態と結びつけて考えます。そのうえで、体質や症状(証)に合わせて処方を選びます[4]。
医療用の漢方薬には、効能・効果に「かゆみ」や「しみ」が書かれているものもあります。たとえば当帰飲子は冷え症の人の慢性湿疹やかゆみ、桂枝茯苓丸加薏苡仁はにきび、しみ、手足のあれなどが効能に含まれています[4][5]。
研究があるのは「高齢者の乾燥とかゆみ」
日本皮膚科学会の皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020は、漢方薬について「使用を考慮してよい」としています。推奨度は「考慮してもよいが、十分な根拠はない」を意味するC1です。根拠となった高齢者の試験は次のとおりです。
研究の種類ランダム化比較試験(国内)/対象 高齢者の皮膚瘙痒症
| 漢方薬 | 比べた相手 | 結果 |
|---|---|---|
| 黄連解毒湯、牛車腎気丸 | 抗ヒスタミン薬 | 同じくらいの効果 |
| 八味地黄丸 | 抗アレルギー薬 | 差はなく、有効率は約8割 |
| 八味地黄丸 | 六味丸 | 同じくらいの効果 |
| 当帰飲子 | 甘草エキス入りの入浴剤(単独・併用) | どの方法でも肌の水分は増えたが、乾燥がよくなった人のうち、かゆみが軽くなったのは半数以下 |
日本皮膚科学会のガイドラインにまとめられた試験をもとに作成[1]。いずれも1991〜1996年に国内で報告された試験で、偽薬とは比べていません。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
黄連解毒湯と牛車腎気丸の試験では、体力が中くらい以上の人には黄連解毒湯、中くらい以下の人には牛車腎気丸と、体質(証)に合わせて使い分けていました。ただし、比べた相手の抗ヒスタミン薬も、このかゆみへの効果は十分に確かめられていません。そのため「同じくらい効いた」ことが、そのまま「よく効く」ことを意味するわけではありません。当帰飲子の試験のように、肌のうるおいが戻っても、かゆみまで改善するとは限らない点にも注意が必要です[1]。
しわ・しみへの効果は?
しみを効能に含む桂枝茯苓丸加薏苡仁については、製薬会社の研究者がマウスで調べた実験があります。黄体ホルモンで増えた色素細胞は減りましたが、紫外線で増えた色素細胞には効果がみられませんでした[6]。
しわやしみに対する漢方薬の効果を、人で偽薬と比べて確かめた試験は、当院が調べた範囲では見当たりませんでした(2026年9月時点)。効能にしみが書かれていても、しみを防いだり消したりする効果が、現代の比較試験で示されているとは限りません。
効果が確かめられている対策
見た目の老化を防ぐ方法のうち、くじ引きで分けた試験で効果が確かめられているのが日焼け止めです。オーストラリアで55歳未満の903人を分けた試験では、手の甲の皮膚の型を取って老化の程度を比べました。広い波長の紫外線を防ぐ日焼け止めを毎日塗った人は4年半のあいだ肌の老化がほとんど進まず、ときどき塗る人より老化の進み方が24%少なくなりました[2]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 903人(オーストラリア)
同じ試験で、抗酸化作用のあるβカロテンのサプリメントには効果がみられませんでした[2]。「体の中から抗酸化」という考え方が、そのまま肌の若さにつながるとは限りません。乾燥によるかゆみには、保湿剤が皮膚科の指針で推奨されています(推奨度B)[1]。
漢方薬にも副作用があります
国の副作用報告を分析した研究では、2003〜2018年に医療用の漢方薬で4,232件の報告があり、肝障害(1,193件)、肺の障害(1,177件)、偽アルドステロン症(889件)の順に多くみられました。偽アルドステロン症の報告には、筋肉の障害や心不全、不整脈に関するものも含まれていました。件数は報告の数で、実際の患者数とは一致しません[7]。
甘草を含む漢方薬では、むくみや血圧の上昇、低カリウム血症などの偽アルドステロン症が起こることがあり、当帰飲子にも甘草が含まれています。ほかの漢方薬や市販薬と重ねて飲むと、同じ生薬が重なって起こりやすくなります[4]。黄芩を含む漢方薬では肝障害や間質性肺炎が、山梔子を含む漢方薬を長く飲み続けると腸の静脈が硬くなる腸間膜静脈硬化症が報告されています[8]。桂枝茯苓丸加薏苡仁は、流産・早産の危険があるため、妊娠中は避けることが望ましいとされています[5]。
漢方薬も医薬品です。しわやしみの予防を目的に、自己判断で長く飲み続けることはおすすめしません。ほかに飲んでいる薬や体調を伝えたうえで、医師に相談してください。
こんな方は、一度ご相談ください
- 保湿を続けても、肌の乾燥やかゆみがよくならない
- 湿疹などが見当たらないのに、全身がかゆい
- 漢方薬や市販薬を、いくつも組み合わせて飲んでいる
よくあるご質問
漢方薬で、しわやしみは消えますか?
人で効果を確かめた比較試験は見当たらず、消える、あるいは防げるとは言えません。日焼け止めによる紫外線対策と保湿を基本にしてください。
市販の漢方薬を自分で選んで飲んでもよいですか?
複数の漢方薬を組み合わせると、甘草などの生薬が重なって副作用が起こりやすくなります。ほかに飲んでいる薬を伝えて、医師や薬剤師に相談してください。
かゆみのために漢方薬を飲んでいます。いつまで続ければよいですか?
効果があるかどうかを主治医と確かめながら判断します。よくならない場合は漫然と続けず、ほかの治療への切り替えも検討します。
当院でのサポート
当院では、漢方専門医が体質や症状、ほかに飲んでいる薬を確かめたうえで、漢方薬が合うかどうかを一緒に考えます。甘草を含む漢方薬を続ける場合は、血圧や血液中のカリウムの値を確認します。
全身のかゆみの陰には、糖尿病や腎臓・肝臓・甲状腺の病気が隠れていることもあるため、必要に応じて血液検査で確かめます[1]。しみやほくろが急に大きくなる、形が変わるなど皮膚の病気が疑われる場合は、皮膚科専門医へ紹介します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
参考文献
- 皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020著者:佐藤貴浩, 横関博雄, 室田浩之, ほか(最終著者 片山一朗)雑誌:日本皮膚科学会雑誌. 2020;130(7):1589-1606発行日:2020年URL:dermatol.or.jp(ガイドラインPDF)要約:日本皮膚科学会の指針。高齢者のかゆみの原因で最も多いのは肌の乾燥とし、保湿剤を推奨度B、漢方薬をC1とした。漢方薬の根拠は1990年代の国内の比較試験で、黄連解毒湯、牛車腎気丸、八味地黄丸、当帰飲子などが検討されている。
- Sunscreen and Prevention of Skin Aging: A Randomized Trial著者:Hughes MCB, Williams GM, Baker P, Green AC雑誌:Ann Intern Med. 2013;158(11):781-790発行日:2013年6月4日DOI:10.7326/0003-4819-158-11-201306040-00002要約:オーストラリアの55歳未満903人のランダム化比較試験。日焼け止めを毎日塗った群は4.5年間で肌の老化がほぼ進まず、時々塗る群より老化の進行が24%少なかった。βカロテンのサプリメントには全体として効果がみられなかった。
- Effect of the sun on visible clinical signs of aging in Caucasian skin著者:Flament F, Bazin R, Laquieze S, Rubert V, Simonpietri E, Piot B雑誌:Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013;6:221-232発行日:2013年9月27日DOI:10.2147/CCID.S44686要約:フランスの白人女性298人を、日光を好む群と避ける群に分けて顔の老化を比較した研究。しみなどの色むらは紫外線と強く関係し、たるみは年齢の影響が大きかった。顔の見た目の老化の約8割は紫外線によると推定した。化粧品会社の研究者による報告。
- ツムラ当帰飲子エキス顆粒(医療用) 電子添文(2023年12月改訂 第1版)著者:株式会社ツムラ雑誌:PMDA 医療用医薬品情報発行日:2023年12月改訂URL:pmda.go.jp(添付文書情報)要約:効能は冷え症の人の慢性湿疹(分泌物の少ないもの)とかゆみ。証(体質・症状)を考慮して使い、改善しなければ続けないよう求めている。甘草を含み、偽アルドステロン症やミオパチーに注意し、他の漢方薬との生薬の重複にも注意するとしている。
- ツムラ桂枝茯苓丸加よく苡仁エキス顆粒(医療用) 電子添文(2023年12月改訂 第1版)著者:株式会社ツムラ雑誌:PMDA 医療用医薬品情報発行日:2023年12月改訂URL:pmda.go.jp(添付文書情報)要約:比較的体力があり、のぼせて足が冷えるなどを訴える人の月経不順、血の道症、にきび、しみ、手足のあれが効能。含まれる桃仁と牡丹皮に流早産の危険があるため、妊婦または妊娠の可能性がある女性には投与しないことが望ましいとしている。
- Effects of keishibukuryoganryokayokuinin (gui-zhi-fu-ling-wanliao-jia-yiyiren) on the Epidermal Pigment Cells from DBA/2 Mice Exposed to Ultraviolet B (UVB) and/or Progesterone著者:Norimoto H, Yomoda S, Fujita N, ほか(最終著者 Okubo T)雑誌:Yakugaku Zasshi. 2011;131(11):1613-1619発行日:2011年11月URL:yakushi.pharm.or.jp(論文PDF)要約:製薬会社クラシエの研究者によるマウスの実験。桂枝茯苓丸料加薏苡仁の投与で、黄体ホルモンにより増えた表皮の色素細胞は減ったが、紫外線Bで増えた色素細胞には効果がなかった。人での効果を調べた研究ではない。
- Adverse Events Associated with Ethical Kampo Formulations: Analysis of the Domestic Adverse-Event Data Reports of the Ministry of Health, Labor, and Welfare in Japan著者:Shimada Y, Fujimoto M, Nogami T, Watari H雑誌:Evid Based Complement Alternat Med. 2019;2019:1643804発行日:2019年4月15日DOI:10.1155/2019/1643804要約:厚生労働省が公表した副作用報告のうち、2003〜2018年の医療用漢方製剤4,232件を分析。肝障害1,193件、肺障害1,177件、偽アルドステロン症889件、腸間膜静脈硬化症223件の順に多かった。件数は報告数で、実際の患者数とは一致しない。
- Adverse Effects of Kampo Medicines著者:Shimada Y雑誌:Intern Med. 2022;61(1):29-35発行日:2022年1月1日(オンライン公開 2021年2月8日)DOI:10.2169/internalmedicine.6292-20要約:漢方薬の副作用をまとめた総説。間質性肺炎や肝障害の多くは黄芩を含む処方で報告され、甘草による偽アルドステロン症、麻黄や附子による症状も挙げる。山梔子を含む処方の長期服用による腸間膜静脈硬化症にも注意が必要としている。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本東洋医学会 漢方専門医・指導医)