吐き気
吐き気
吐き気・嘔吐
胃がむかむかする、食べると吐いてしまう、吐き気が何日も続いている。吐き気や嘔吐は、胃腸の不調として受け取られがちですが、実際にはそれだけではありません。胆のうや膵臓の病気、腸の通過障害、めまいや頭痛、糖尿病や電解質の異常、飲んでいるお薬、そして心臓や脳の病気が、吐き気という形で現れることがあります。一方で、検査をしても異常が見つからず、吐き気だけが続く方も少なくありません。当院では、まず急いで対応すべきものを見分け、必要な検査で原因を確かめたうえで、それでも残る吐き気に対して、漢方専門医として漢方薬を用いた治療を行っています。吐き気は、漢方が古くから得意としてきた症状の一つです。
目次CONTENTS
嘔吐が続くと、水分がとれずに脱水が進みます。とくにご高齢の方やお子さん、糖尿病のある方では、短時間で状態が悪化することがあります。水分がとれない状態が続いている場合は、我慢せずご相談ください。
吐き気・嘔吐は症状であって、病名ではありません。数時間の対応を要するものから、何か月も続く慢性的なものまで幅があり、まずそのどちらであるかを見分けることが最初の仕事になります。
先に見分けるべきものがあります
腸閉塞、胆石や胆のう炎、急性膵炎、虫垂炎といった、おなかの中で急いで対応すべき病気。心筋梗塞や脳の病気のように、おなかの症状として現れる緊急の病気。糖尿病でインスリンが不足したときに起こる状態や、著しい電解質の異常。いずれも吐き気・嘔吐が最初の症状になることがあります。
強い腹痛をともなう、便もガスも出ずにおなかが張る、吐いたものに血液やコーヒーの残りかすのようなものが混じる、突然の激しい頭痛や胸の痛みをともなう。こうした場合は、経過を見るのではなく、その場での評価が必要です。当院では診察と血液検査、腹部超音波、心電図で速やかに判断し、入院や手術が必要と考えられる場合は連携先の病院へご紹介します。
繰り返す吐き気には、確かめておくべき原因があります
週単位、月単位で続く吐き気では、胃や食道の病気、胃の出口が狭くなる状態、胆のうや膵臓の病気、そして飲んでいるお薬そのものが背景にあることがあります。痛み止め、抗菌薬、鉄剤、骨の薬、一部の糖尿病の薬や抗がん剤などは、吐き気の原因としてよく経験します。
また、めまいをともなう吐き気では内耳が、頭痛をともなう吐き気では片頭痛が関わっていることがあります。妊娠の可能性も、必ず確認しておくべき事柄です。原因によって対応がまったく異なるため、「吐き気止め」を出す前に、どこから来ている吐き気なのかを考えます。
「異常なし」は、終わりではなく出発点です
検査で異常が見つからないと、「では様子を見ましょう」で話が終わってしまうことがあります。しかし、吐き気があるという事実は変わりません。検査で異常がないことと、胃腸が正常に働いていることは別です。
胃の動きが落ちている、胃の知覚が過敏になっている、水分が胃に停滞している、気持ちの緊張が胃に及んでいる。漢方医学は、こうした状態を言葉にし、処方に結びつけてきました。吐き気は、漢方が最も力を発揮する領域の一つです。当院の院長は漢方専門医として、この部分を診療の柱の一つに据えています。
吐き気の原因は消化器にとどまりません。「いつ吐き気が出るか」「何をともなうか」が、原因を絞り込むうえでの重要な手がかりになります。
やみくもに検査を重ねるのではなく、症状と経過から必要なものを選びます。急ぐ状態かどうかは、診察と血液検査、腹部超音波、心電図でおおむね判断できます。
| 問診と診察 | いつから、どのようなときに吐き気が出るのかをうかがいます。食後か空腹時か、朝方か、めまいや頭痛をともなうか、便やガスは出ているかは、原因を絞り込むうえで決定的な手がかりになります。お薬の内容、飲酒、妊娠の可能性も必ず確認し、おなかの診察を行います。 |
|---|---|
| 漢方の診察 | 脈をみる、舌をみる、おなかを触れる(脈診・舌診・腹診)という漢方独自の診察を行います。胃に水が停滞していないか、冷えがあるか、体力がどの程度かといった状態を把握し、処方を選ぶ根拠にします。時間はかかりませんが、処方の精度を大きく左右します。 |
| 血液検査 | 炎症の程度、肝臓や胆道、膵臓の酵素、腎機能、電解質、血糖、甲状腺ホルモン、貧血の有無、脱水の程度などを調べます。嘔吐が続いている場合は、それ自体が電解質の異常を引き起こすため、補正が必要かどうかの判断にも用います。 |
| 腹部超音波検査 | 胆石や胆のう炎、膵臓の腫れ、肝臓や腎臓の状態、腸の拡張などを、被ばくなくその場で確認できます。強い腹痛や発熱をともなう吐き気では、最初に行う検査の一つです。 |
| 上部消化管 内視鏡検査 |
胃がんや潰瘍、逆流性食道炎、胃の出口の狭窄などがないかを確認します。あわせて慢性胃炎・萎縮性胃炎の程度や、ピロリ菌感染の有無も確認し、必要な場合は除菌治療をご案内します。繰り返す嘔吐、体重が減っている方、黒い便が出た方、これまで内視鏡を受けたことのない方には、早い段階でおすすめします。ご希望に応じて鎮静剤を用い、眠っている間に受けていただけます。 |
| 心電図など | 胸の症状や冷や汗、息苦しさをともなう吐き気では、心筋梗塞を見落とさないために心電図を確認します。必要に応じて胸部レントゲンも行います。CTや脳の画像検査が必要と判断した場合は、速やかに連携先の医療機関へご紹介します。 |
原因が見つかった場合は、その治療を優先します。そのうえで、原因がはっきりしない場合や、治療をしても吐き気が残る場合に、漢方薬が力を発揮します。同じ「吐き気」でも、水の停滞、胃の動き、冷え、気持ちの緊張のどれが主かによって、選ぶ処方はまったく異なります。
| 原因が 見つかった場合 |
胃潰瘍や逆流性食道炎には胃酸を抑える薬を、胆石や膵炎、腸閉塞が疑われる場合には入院可能な施設への紹介を行います。薬が原因と考えられる場合は、まず処方の見直しから始めます。原因に対する治療が、最も確実な近道です。 |
|---|---|
| 脱水への対応 | 嘔吐が続いて水分がとれない場合には、点滴で水分と電解質を補います。飲めるようになってからの水分のとり方も具体的にお伝えします。脱水は、それ自体がさらに吐き気を強めるため、早めに断ち切ることが大切です。 |
| 証を見極める | 漢方では、症状の名前ではなく、その方の体の状態(証)に合わせて処方を決めます。同じ吐き気でも、胃に水が溜まっている方と、気の巡りが滞っている方とでは別の薬を使います。逆に言えば、合っていない漢方薬を飲んでも効きません。この見極めが、漢方専門医の役割です。 |
| 水の停滞に 対する処方 |
吐き気に加えて、のどが渇くのに尿が少ない、頭痛やめまいをともなう、天候で悪化するといった状態には、五苓散を用います。体内の水分の偏りを整える処方で、二日酔いや乗り物酔い、感染性胃腸炎のあとの吐き気にも用いられます。効果の現れ方が比較的早い処方です。 |
| 胃の動きを 助ける処方 |
むかつきが続く、みぞおちに水が溜まった感じがするといった状態には、小半夏加茯苓湯を用います。胃がもたれる、少しで満腹になる、疲れやすいといった状態をともなう場合には、六君子湯を選びます。六君子湯は胃の動きを整え、食欲に関わるホルモンにも働くことが研究で示されている処方です。 |
| 緊張・冷えに 対する処方 |
のどのつかえ感があり、緊張すると吐き気が出るという場合には半夏厚朴湯を用います。冷えをともない、頭痛とともに吐き気が起こる場合には呉茱萸湯を選びます。呉茱萸湯は片頭痛にともなう吐き気にも用いられ、西洋薬では対応しにくい部分を補えます。 |
| 食事と生活の 調整 |
吐き気があるときは、量よりも食べ方が大切です。当院には管理栄養士が4人在籍し、少量を回数を分けてとる方法、脂の多いものを避ける工夫、水分のとり方を具体的にご提案します。無理に食べることを勧めるのではなく、通せるものから通していく考え方でお伝えします。吐き気とともに食欲不振が続いている場合には、そちらもあわせてご相談ください。 |
漢方薬は保険で処方できます
医療機関で処方する漢方薬(医療用漢方製剤)は、健康保険の適用があります。市販の漢方薬より種類が多く、その方の状態に合わせて細かく選べます。吐き気に用いる処方は比較的効果の現れ方が早く、五苓散などでは服用したその日のうちに変化を感じる方もおられます。効果を判定する時期をあらかじめお伝えし、合わないと感じた場合は処方を変更しますので、飲み続けて我慢する必要はありません。
KAMPO
漢方専門医が、状態に合わせて処方を選びます
院長は漢方専門医として診療を行い、大学病院の漢方診療科と関わりながら、漢方薬の作用の研究にも携わってきました。吐き気は、漢方が最も得意とする症状の一つです。決まった一つの薬を出すのではなく、脈や舌、おなかの所見から状態を見極め、その方に合う処方を選びます。効かなければ処方を変えるところまで含めて、責任を持って担当します。
TRIAGE
急ぐものかどうかを、その場で見分けます
吐き気の診療で最も大切なのは、腸閉塞や胆道の病気、心筋梗塞のような急ぐ状態を見落とさないことです。当院では診察に加え、血液検査、腹部超音波、心電図を院内で行い、その場で方向性を判断します。入院や手術が必要と考えられる場合には、速やかに連携先の病院へご紹介します。
ENDOSCOPY
必要なときは、内視鏡で確かめます
繰り返す吐き気や体重減少の背景に、胃がんや潰瘍、胃の出口の狭窄が隠れていることがあります。当院は消化器内視鏡の専門医として、ご希望に応じて鎮静剤を用い、負担の少ない検査を行っています。漢方だけに頼らず、西洋医学の診断を土台に置くことを、診療の原則としています。
MEDICATION
飲んでいる薬全体を、見直します
吐き気の原因が、飲んでいる薬にあることは少なくありません。とくに複数の医療機関から処方を受けている方では、全体を見る役割が必要です。当院では一般内科として、お薬手帳をもとに、減らせるもの、変更できるものを整理します。吐き気止めを足す前に、引くことを考えます。
NUTRITION
管理栄養士4人体制で、食べ方を一緒に考えます
吐き気があるときに必要なのは、我慢や気合いではなく具体的な方法です。少量で栄養のとれるもの、口当たりのよいもの、回数を分ける工夫、水分の補い方を、生活に合わせてご提案します。ご高齢の方については、ご家族への説明も含めて対応します。
診察でご相談ください
吐き気がいつ、どのようなときに出るのか、嘔吐の回数、腹痛や発熱、めまいや頭痛の有無、便通、水分がとれているかをうかがい、おなかの診察と、脈・舌・おなかの漢方的な診察を行います。お薬手帳、健診結果、過去の内視鏡の結果をお持ちいただくと判断がしやすくなります。
急ぐ状態かどうかを判断します
血液検査、腹部超音波、必要に応じて心電図を行い、その場で対応が必要な病気がないかを確認します。脱水が進んでいる場合には点滴を行います。入院や手術が必要と判断した場合は、連携先の医療機関へ速やかにご紹介します。
原因に応じた治療、または漢方薬を始めます
原因が見つかった場合はその治療を優先します。原因がはっきりしない場合や、治療をしても吐き気が残る場合には、状態に合わせて漢方薬を選び、飲み方と効果を判定する時期をお伝えします。吐き気が強くて飲みにくい場合の工夫も、あわせてご説明します。
経過を見ながら、調整します
効き方を確認し、合っていなければ処方を変更します。症状が落ち着いたら、薬を減らしていくことも検討します。長く続ける場合には、定期的な血液検査で副作用の有無も確認します。合わないまま飲み続けることのないよう、遠慮なくお伝えください。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
胸の痛みや冷や汗をともなう吐き気は、心臓の病気のことがあります。突然の激しい頭痛をともなう嘔吐は、脳の病気を考える必要があります。いずれもためらわず救急要請をしてください。また、水分がとれない状態が続くと脱水が進み、とくにご高齢の方やお子さん、糖尿病のある方では急速に体調が悪化します。ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍いといった場合も、救急対応が必要です。
あります。検査で異常がないことと、胃腸が正常に働いていることは別です。胃の動きの低下や知覚の過敏、自律神経のバランスが関わっていることが多く、この領域は漢方が得意とするところです。また、吐き気の原因が胃ではなく、内耳や薬、全身の状態にある場合もあります。「異常なし」で終わってしまった方こそ、一度ご相談ください。
吐き気止めは、どこから来ている吐き気かによって向き不向きがあります。胃の動きが落ちているのか、内耳が関わっているのか、水分が停滞しているのか、緊張が背景にあるのかで、選ぶべき薬が変わります。効かない場合は、薬を増やすのではなく、原因の見立てからやり直す必要があります。漢方薬が有効な場面も多くあります。
用いられます。五苓散は体内の水分の偏りを整える処方で、のどが渇くのに尿が少ない、頭痛やむくみをともなうといった状態に向いています。二日酔い、乗り物酔い、感染性胃腸炎のあとの吐き気などに使われ、比較的早く効果が現れるのが特徴です。ただし、吐き気が続く場合には原因を確かめることが先ですので、常用される前に一度ご相談ください。
工夫があります。漢方薬は白湯に溶かして冷ましたものを、少量ずつ何回かに分けて飲むと、吐き気があっても飲めることがあります。五苓散などは冷やして服用するほうが飲みやすい場合もあります。処方によっては錠剤が用意されているものもあり、飲めない状態が続く場合には点滴での対応も行います。飲み方の相談も遠慮なくお申し出ください。
つわりに対して小半夏加茯苓湯などが用いられることがあります。ただし妊娠中の内服は、産科の主治医と情報を共有したうえで判断するのが原則です。当院で処方を検討する場合も、妊娠週数や経過を確認し、必要に応じて産科と連携します。水分がとれず体重が減っている場合は、漢方の前に産科での評価が必要です。
片頭痛では吐き気や嘔吐をともなうことがよくあります。この場合、吐き気だけを抑えても根本的な改善にはならず、頭痛そのものへの対応が必要です。冷えをともなう頭痛と吐き気には呉茱萸湯が用いられます。一方、これまでにない突然の激しい頭痛や、朝方に強くなる頭痛をともなう場合は、脳の病気を考えて画像検査の受けられる施設へご紹介します。
あります。多くの処方に含まれる甘草という生薬では、むくみ、血圧の上昇、体のだるさや脱力(低カリウム血症)が起こることがあります。まれに肝臓の障害や、間質性肺炎が生じることもあります。長く続ける場合は定期的に血液検査で確認します。むくみや息切れ、から咳が出たときはご連絡ください。
吐いた直後は、しばらく何も口にせず胃を休めます。落ち着いてきたら、経口補水液などを小さじ数杯程度から、少量を何度も分けてとってください。一度に飲むと、かえって吐き戻してしまいます。冷たすぎるもの、脂の多いもの、柑橘類は避けます。それでも水分がとれない、尿が半日以上出ない、ぐったりしているという場合は、自宅での対応にこだわらず受診してください。
吐き気の背景として考えられる病気について、それぞれ詳しくご説明しています。思い当たる症状のあるページも、あわせてご覧ください。
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