肝血管腫
肝血管腫
肝血管腫
「健診のエコーで、肝臓に腫瘍があると言われた」「血管腫だと思うと書いてあるが、『思う』が気になって眠れない」——肝血管腫は、肝臓にできる腫瘍のなかで最も多い良性の腫瘍です。がんに変わることはなく、大半は治療も経過観察も必要ありません。それでも「腫瘍」という言葉に不安を抱えたまま過ごしている方が少なくありません。当院では消化器病専門医が院内の腹部超音波検査で所見を確認し、なぜ心配がいらないのか、どういう場合だけ確認が必要なのかを、画像をお見せしながらご説明します。
肝血管腫は、細い血管が集まってできた良性の腫瘤で、成人の数%にみられるとされる、ごくありふれた所見です。生まれつきの血管の構造に由来すると考えられており、がん化することはありません。健診の記録に「腫瘍」と書かれるため驚かれますが、悪性腫瘍とはまったく別のものです。
この所見に対して知っておいていただきたいのは、「なぜ良性と判断できるのか」「どういうときだけ追加の検査が必要か」の二点です。ほとんどの方は、この二点をご理解いただければ不安が解消します。
境界がはっきりした均一な高エコー(白く見える)の腫瘤で、辺縁に細い高エコーの縁取りを伴い、後方の信号が強まって見えるのが典型像です。この特徴がそろっていれば、それだけで良性と判断できることがほとんどです。
血液の入った柔らかい構造であるため、探触子で軽く圧迫すると形が変わることがあります。悪性腫瘍にはみられない性質で、良性を示す手がかりのひとつです。実際に検査中に確認できます。
脂肪肝が強い方では、周囲の肝臓が白く見えるため、血管腫が逆に黒く(低エコーに)見えることがあります。「去年と見え方が違う」と言われても、腫瘤が変化したのではなく、背景の肝臓が変わったためであることが少なくありません。
数センチのものが最も多く、まれに10センチを超えるものもあります。ただし大きいこと自体は危険を意味しません。判断のうえで重要なのは、大きさよりも典型的な所見がそろっているかどうかです。
所見が典型的でない、短期間で明らかに大きくなった、慢性肝炎や肝硬変を背景に持つ、悪性腫瘍の治療歴がある——こうした場合には、造影検査による確認をお勧めします。肝細胞がんや転移性腫瘍との区別が必要になるためです。
限局性結節性過形成(FNH)や肝細胞腺腫といった他の良性腫瘍、そして肝細胞がんや転移性肝がんが鑑別に挙がります。造影CTやEOB-MRI、造影超音波では、血流の入り方の違いから高い精度で区別できます。
血管の塊であるため、針を刺すと出血の危険があります。したがって診断は画像で行うのが原則です。「組織を取って確かめないと不安」と感じられるかもしれませんが、画像診断のほうが安全かつ確実な場面です。
自然に破裂した報告は世界的にもごくわずかで、日常生活で心配する必要はありません。スポーツ、旅行、飛行機、腹部のマッサージなども、通常どおりで差し支えありません。制限をかける根拠はないとお考えください。
「腫瘍」という言葉が、不安の大部分をつくっています
医学用語としての「腫瘍」は、良性と悪性の両方を含みます。しかし日常の言葉では、腫瘍=がんとして受け取られることがほとんどです。肝血管腫は血管が集まってできた良性の構造物であり、がんとは成り立ちがまったく異なります。放置しても悪性化せず、大きくなっても命に関わることはありません。この点を、画像を見ながら具体的にご説明することが、診察の中心になります。
確認が必要なのは、背景の肝臓に病気があるときです
健康な肝臓に見つかった典型的な血管腫であれば、追加の検査はほとんど必要ありません。一方、慢性肝炎や肝硬変を背景に持つ方では、肝細胞がんとの区別を確実にしておく意味があります。また、他のがんの治療歴がある方では転移との区別が必要になります。当院ではまず背景の肝疾患の有無を確認し、そこから追加検査の要否を判断します。
症状の原因を、血管腫のせいにして終わりにしません
血管腫が痛みや不快感を起こすことは、非常に大きなものを除いてほとんどありません。右上腹部の張りや違和感の原因は、胆石、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、便秘など別のところにあることが大半です。当院では消化器の診療として、症状そのものの原因を確認します。「血管腫があるからでしょう」で説明を終わらせないことを大切にしています。
多くの場合、腹部超音波検査と採血だけで判断がつきます。追加の検査が必要になるのは、所見が非典型的な場合や、背景に肝疾患がある場合に限られます。
| 問診と健診結果の確認 | いつ指摘されたか、大きさの記載、以前との比較、症状の有無、肝炎や飲酒の既往、悪性腫瘍の治療歴をうかがいます。過去の健診結果をお持ちいただけると、大きさが変わっていないことを確認でき、その場で判断できることが多くなります。 |
|---|---|
| 腹部超音波検査 | 腫瘤の大きさ、境界、内部の均一さ、辺縁の高エコー帯、後方エコーの増強、圧迫による変形を確認します。同時に、肝臓そのものの状態(脂肪肝の有無、線維化を示す所見)、胆道、脾臓も評価します。被ばくがなく、その場で結果をご説明できます。 |
| 血液検査 | AST・ALT・ALP・γ-GTP・ビリルビン・血小板数で肝臓の状態を確認し、B型・C型肝炎ウイルスの有無を調べます。背景に慢性肝疾患がないことが確認できれば、血管腫と判断する確からしさが高まります。 |
| 腫瘍マーカー (必要時) |
慢性肝疾患の背景がある方や、所見が非典型的な方では、AFP、PIVKA-II、CEA、CA19-9を測定することがあります。典型的な血管腫と判断できる方には、通常必要ありません。 |
| 連携医療機関での検査 (必要時) |
所見が典型的でない、短期間で明らかに増大した、背景に慢性肝疾患がある、悪性腫瘍の治療歴があるといった場合には、造影CT・EOB-MRI・造影超音波による確認をお勧めします。これらは連携病院へご紹介します。血管腫は造影検査で特徴的な染まり方を示すため、高い精度で区別できます。 |
肝血管腫と判断できた場合、ほとんどの方は何もする必要がありません。以下は、状況ごとの実際の対応です。
| 経過観察も不要と判断する場合 | 典型的な所見で、背景に肝疾患がなく、大きさも変わっていない場合には、それ以上の通院や検査は必要ありません。今後の健診で同じ指摘があっても心配のない所見であることをお伝えし、毎年の不安を持ち越さないようにします。 |
|---|---|
| 1回だけ確認を行う場合 | 初めて指摘された方や、以前の記録がなく比較できない方には、6か月〜1年後に一度だけ超音波で確認することをお勧めすることがあります。大きさと形が変わっていなければ、そこで観察を終了できます。 |
| 造影検査をお勧めする場合 | 所見が典型的でない場合、背景に慢性肝炎・肝硬変がある場合、悪性腫瘍の治療歴がある場合には、造影CT・EOB-MRI・造影超音波による確認をお勧めします。連携病院へご紹介し、結果を踏まえて当院で今後の方針をご説明します。 |
| 背景の肝疾患を管理する場合 | 血管腫そのものではなく、同時に見つかった脂肪肝や慢性肝炎のほうが管理を要することがあります。この場合は、そちらの診療に軸足を移します。管理栄養士による栄養指導や、定期的な肝機能の評価を行います。 |
| 治療を検討する場合 | 非常に大きく、圧迫による症状がはっきりしている場合や、まれな合併症を伴う場合には、外科的切除や動脈塞栓術が検討されます。ただし該当する方はごくわずかで、実際にはほとんどありません。必要と判断した場合は専門施設へご紹介します。 |
| 症状の原因を別に探す場合 | 血管腫では説明できない腹部症状がある場合には、胆石、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、便秘、大腸疾患など、他の原因を消化器内視鏡専門医として評価します。必要と判断すれば、院内で胃カメラ・大腸カメラを実施できます。 |
ULTRASOUND
院内の腹部超音波検査で、その場で確認しご説明します
当院では腹部超音波検査を院内で実施しています。健診の記録だけで判断するのではなく、実際の画像で境界や内部の性状、圧迫による変形を確認します。良性と判断できる根拠を目で見ていただけるため、「大丈夫と言われたが不安が残る」という状態になりにくいことが利点です。
BACKGROUND
背景の肝臓まで確認したうえで判断します
血管腫の判断で重要なのは、背景に慢性肝疾患がないかどうかです。当院では肝炎ウイルス、肝機能、線維化の指標、脂肪肝の有無まで確認し、そのうえで追加検査の要否を決めます。血管腫そのものより、同時に見つかる脂肪肝や肝機能異常のほうが管理を要することもあります。
ENDOSCOPY
症状の本当の原因を、消化器全体から探します
腹部の張りや違和感は、血管腫ではなく胃や食道、腸に原因があることが大半です。当院は消化器内視鏡専門医が診療と内視鏡検査を担当しており、必要と判断した場合は院内で胃カメラ・大腸カメラまで完結できます。症状そのものに向き合うことを重視しています。
CLOSURE
「もう心配しなくてよい」とお伝えすることを目標にします
この所見に対する診療の目的は、不安を取り除くことです。心配のいらない所見であればそのことをはっきりお伝えし、必要のない通院や検査を続けていただかないようにします。確認が必要な場合も、何をもって終了とするかをあらかじめお示しします。
健診結果と、これまでの経過をうかがう
いつ指摘されたか、大きさの記載、症状の有無、肝炎や飲酒の既往を確認します。過去の健診結果や画像をお持ちいただけると、大きさが変わっていないことを確認でき、その場で結論が出せることが多くなります。
腹部超音波検査と採血で、所見と背景を確認する
腫瘤の性状を実際に確認するとともに、肝機能、肝炎ウイルス、脂肪肝や線維化の有無を評価します。背景の肝臓に問題がないことが、良性と判断するうえでの大きな根拠になります。
良性と判断できるかどうかをご説明する
典型的な所見であれば、その理由を画像でお示ししたうえで、経過観察の要否をお伝えします。確認を要する場合は、なぜその検査が必要かをご説明し、連携病院へご紹介します。
必要な場合のみ、確認を続ける
経過観察が必要な場合は次回の時期を明示し、変化がなければ観察を終了することもあらかじめお伝えします。脂肪肝など別の管理が必要な所見があれば、そちらの診療に切り替えて継続します。
肝血管腫を指摘されている方で、次の症状があるときはご相談ください
これらは通常、典型的な肝血管腫ではみられない症状です。血管腫以外の病気が隠れている可能性や、背景の肝疾患の進行を確認する必要があります。強い痛みが続く場合は、当日中の受診をお勧めします。
なりません。血管が集まってできた良性の構造物で、がん細胞とは成り立ちがまったく異なります。時間が経ってがん化することもありません。健診の記録に「腫瘍」と書かれるため不安になりますが、医学用語の腫瘍は良性のものも含む言葉であり、悪性を意味するものではありません。
原則として必要ありません。治療を検討するのは、非常に大きくなって周囲の臓器を圧迫し、明らかな症状が出ている場合など、ごく限られた状況だけです。大きさだけを理由に切除することはありませんし、放置して悪化する性質のものでもありません。
自然破裂の報告は世界的にもきわめてまれで、日常生活で心配する必要はありません。スポーツ、旅行、飛行機の搭乗、腹部のマッサージなども通常どおりで差し支えありません。制限をかける医学的な根拠はありませんので、これまでどおりの生活を続けてください。
数ミリ程度の変化であれば、測定の条件や角度の違いで生じることも多く、通常は問題ありません。また脂肪肝の程度が変わると見え方そのものが変化するため、「大きくなった」ように見えることもあります。注意が必要なのは、短期間で明らかに増大した場合で、この場合は造影検査での確認をお勧めします。当院では実際の画像で確認し、判断の根拠をお伝えします。
典型的な所見がそろい、背景に慢性肝疾患がない方であれば、超音波だけでもかなり確実に判断できます。所見が典型的でない場合や、慢性肝炎・肝硬変を背景に持つ場合には、造影CT・EOB-MRI・造影超音波で確認します。血管腫は造影剤の入り方に特徴があり、これらの検査で高い精度で区別できます。
血管腫に対しては、原則として針を刺す検査は行いません。血液の入った構造であるため、出血の危険があるためです。この病変については、画像診断のほうが安全かつ確実な方法です。不安が残る場合は、造影検査による確認をご提案します。
典型的な所見で、1回の確認で変化がなければ、そこで終了できることがほとんどです。「一生毎年」というものではありません。当院では、どの条件を満たせば観察を終えられるかを最初にお伝えし、不要な通院が続かないようにしています。
その可能性は高くありません。血管腫が症状を起こすのは、周囲の臓器を押すほど大きい場合に限られます。多くの場合、原因は胆石、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、便秘など別のところにあります。当院では消化器の診療として、症状そのものの原因を確認し、必要に応じて内視鏡検査まで行います。
もちろん構いません。結果の読み方をご説明したうえで、当院の超音波であらためて確認するかどうかを一緒に決めます。過去の健診結果もあわせてお持ちいただけると、変化がないことを確認でき、その場で結論が出せることが多くなります。不安を抱えたまま1年待つ必要はありません。
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