急性膵炎
急性膵炎
急性膵炎
急性膵炎は、膵臓が自らの消化酵素で傷つけられ、急激に炎症を起こす病気です。軽く済むこともあれば、全身状態が一気に悪化して集中治療を要することもあり、発症直後の対応が経過を左右します。そして退院後には、なぜ起きたのかを突き止めて再発を防ぐという、もうひとつの大切な段階が待っています。当院では、急ぐべき腹痛を見極めて速やかに入院施設へつなぐことと、退院後の原因検索・再発予防・後遺症の管理を担います。
次のような痛みは、様子を見ずに救急要請・救急外来受診を
急性膵炎は、発症からの数時間から数日の対応が経過を大きく左右します。上記にあてはまる場合は、診療時間内であればまずお電話でご相談いただき、夜間・休日であればためらわず救急要請をしてください。とくに黄疸・発熱・血圧低下を伴う場合は、胆管炎の合併や重症化が疑われ、急いで治療を始める必要があります。
当院にご来院いただいた場合も、採血と腹部超音波検査で急性膵炎が疑われ、入院治療が必要と判断したときは、その場で連携医療機関へご連絡して搬送・受診の手配を行います。
急性膵炎は「治って退院すれば終わり」という病気ではありません。原因を突き止めずにいると再発し、くり返すうちに慢性膵炎へ移行することがあります。退院後こそ、やるべきことがはっきりしている時期です。
急性膵炎はアルコールと胆石で大半を占めますが、それ以外の原因も少なくありません。原因によって、退院後にとるべき手立てはまったく異なります。「原因不明」のまま終わらせないことが、二度目を防ぐうえでもっとも重要です。
急性期の治療は、入院での輸液と全身管理が中心です
急性膵炎と診断された場合、まず絶食として膵臓を休ませ、十分な輸液で全身の状態を支えます。痛みに対する治療を並行し、重症度を判定しながら管理します。この段階の治療は入院が前提であり、外来で経過を見ながら対応できるものではありません。当院が急性期に担うのは、疑いを持った時点で速やかに入院施設へつなぐという役割です。
胆石が原因だった場合は、手術で再発を防げます
胆石性膵炎では、胆のうを残したままにすると再発の危険が続きます。そのため、炎症が落ち着いた段階での腹腔鏡下胆のう摘出術が広く行われています。退院時に「そのうち手術を」と言われたまま時間が経ってしまう方が少なくありませんが、これは再発を確実に減らせる数少ない手立てです。当院では、手術の時期について外科と相談しながら段取りを整理します。
退院後にも、いくつか注意すべき変化があります
急性膵炎の後には、膵臓に液体のたまり(仮性のう胞)が残ること、消化酵素の分泌が低下して脂肪便や体重減少が出ること、そして新たに糖尿病が現れることがあります。いずれも退院直後ではなく数か月かけて現れることがあるため、症状がなくても定期的な確認が必要です。当院ではこの時期の経過を継続して診ていきます。
急ぐべき状態かどうかの判断と、退院後の原因検索・後遺症の確認が、当院の検査の目的です。院内で当日行えるものと、連携施設にお願いするものを整理してご説明します。
| 血液検査 (膵酵素・炎症・全身状態) |
アミラーゼ・リパーゼ、白血球数やCRP、腎機能、カルシウム、中性脂肪などを測定します。急性期には診断と重症度の手がかりとなり、退院後は原因検索と回復の確認に用います。 |
|---|---|
| 腹部超音波検査 | 胆石や胆管の拡張、膵臓の腫れ、のう胞の有無を確認します。原因が胆石かどうかを見極めるうえで中心となる検査で、退院後の経過観察でもくり返し行います。 |
| 心疾患・消化管疾患との鑑別 | 上腹部の激しい痛みは、心筋梗塞、消化管穿孔、腸閉塞、胆管炎などでも起こります。心電図や採血、必要に応じた内視鏡検査を組み合わせ、急を要する別の病気を見落とさないよう確認します。 |
| 糖代謝・栄養の評価 | 血糖・HbA1cで膵炎後の糖尿病が出ていないかを確認し、体重の推移や栄養指標、体成分分析(InBody)による筋肉量の測定で、回復の程度を把握します。 |
| 自己免疫性膵炎の評価 | 原因がはっきりしない膵炎やくり返す膵炎では、血液中のIgG4値などを測定し、自己免疫性膵炎の可能性を検討します。 |
| 造影CT・MRCP (連携施設) |
膵臓の炎症の広がりや合併症の評価、胆管・膵管の形態の確認に用います。急性期の重症度判定と、退院後の原因検索の両方で必要になります。 |
| 超音波内視鏡 (連携施設) |
通常の検査で原因が分からない場合に、小さな胆石や胆泥、膵臓の腫瘍を調べる目的で行います。原因不明とされた膵炎ほど、この検査の意義があります。 |
退院後の通院は、体調の確認だけが目的ではありません。原因への対策を仕上げること、後から現れる変化を捉えること、この二つを計画的に進めます。
| 飲酒への対応 | アルコールが原因の場合、再発を防ぐ手立ては禁酒に尽きます。意思の強さの問題として片づけず、飲酒の背景や生活の状況をうかがったうえで、必要に応じて専門的な治療につなぐことも含めてご相談します。喫煙も膵臓に負担をかけるため、あわせて見直します。 |
|---|---|
| 胆石への対応 | 胆石性の場合、胆のう摘出術を受けるかどうかが再発予防の中心になります。手術の時期や方法について外科と相談し、迷われている点を整理してご説明します。手術までの期間も、再発の兆候に注意しながら経過を見ます。 |
| 脂質・血糖の管理 | 中性脂肪が高い場合は、薬と食事の両面から目標値まで下げ、その状態を保ちます。糖尿病がある場合は血糖の管理が脂質にも影響します。管理栄養士4名体制の栄養指導と、当院の糖質制限を軸にした食事指導を組み合わせて進めます。 |
| 膵臓の働きの確認 | 脂肪便や体重減少があれば、消化酵素の補充を検討します。あわせて血糖の推移を追い、膵炎後に現れる糖尿病を早い段階でとらえます。この二つは退院後しばらくしてから出てくることがあるため、症状がなくても定期的に確認します。 |
| 合併症の経過観察 | 仮性のう胞が残っている場合は、超音波検査で大きさの変化を追います。腹痛や発熱、嘔吐が出た場合は速やかに評価し、処置が必要と判断したときは専門施設へご紹介します。 |
| 慢性膵炎への移行の監視 | 膵炎をくり返すと、膵臓の組織が線維に置きかわり慢性膵炎へ移行していきます。痛みの頻度、栄養状態、画像所見を定期的に確認し、移行の兆候があれば早い段階で管理の方針を切り替えます。 |
| 漢方薬による補助 | 退院後に残る腹部の張り、食欲不振、だるさなどに対して、標準的な治療を土台としたうえで漢方薬を用いることがあります。体質や症状の出方を診たうえで選択し、経過に応じて調整します。 |
一度経験された方は、「あのときと同じ痛み」を自分で分かることが多いものです。その感覚は診断のうえでも重要な情報になりますので、遠慮なくお伝えください。
TRIAGE
急ぐべき腹痛かどうかを、その場で見極めます
上腹部の激しい痛みは、急性膵炎のほか、心筋梗塞、消化管穿孔、胆管炎など、いずれも急を要する病気で起こります。当院では院内の採血・心電図・腹部超音波検査を組み合わせて速やかに評価し、入院治療が必要と判断した場合は、その場で連携医療機関へご連絡して受診・搬送の手配を行います。
AFTERCARE
退院後の原因検索と再発予防を引き受けます
入院で症状が治まっても、原因への対策が済んでいなければ再発の危険は残ります。当院では、飲酒・胆石・脂質・薬剤・自己免疫といった原因を順に確認し、必要な検査を組み立て直します。手術や精密検査が必要な段階では速やかに紹介し、日常的な管理は当院で継続します。
NUTRITION
管理栄養士4名体制で、食事と脂質・血糖を整えます
中性脂肪が原因の膵炎では、食事の見直しがそのまま再発予防になります。膵臓の働きが落ちた後の栄養の確保も、同じく食事の問題です。当院には管理栄養士が4名在籍し、体成分分析(InBody)で筋肉量まで確認しながら、続けられる形に落とし込みます。
KAMPO
漢方専門医として、回復期の不調にも対応します
退院後、検査値は落ち着いているのに食欲が戻らない、だるさが抜けないという時期があります。当院は漢方専門医としての診療も行っており、標準治療を土台としたうえで、体質と症状に応じた漢方薬を組み合わせ、回復を後押しします。
経緯と現在の状態をうかがう
発症の状況、入院中の治療内容、原因として何を指摘されたか、退院後の症状の変化をうかがいます。退院時の診療情報提供書、検査結果、画像データ、お薬手帳をお持ちいただくと、同じ検査をくり返さずに済みます。
院内で採血と腹部超音波検査を行う
膵酵素・脂質・カルシウム・血糖・栄養指標を確認し、超音波で胆石の有無、膵臓の状態、のう胞の残存を観察します。原因がまだ確定していない場合は、この段階で不足している検査を整理します。
原因への対策と、必要な紹介を決める
胆石であれば手術の相談、脂質であれば薬と食事、アルコールであれば断酒への具体的な手立てを組み立てます。超音波内視鏡やMRCPが必要な場合、外科的治療が必要な場合は、連携医療機関へご紹介します。
定期的に通院し、後から現れる変化を捉える
膵臓の働きの低下、糖尿病の出現、のう胞の変化、慢性膵炎への移行を、定期的な採血と超音波検査で追っていきます。症状が落ち着いている時期の受診にこそ意味があります。
アルコールが原因だった場合は、原則として断酒をお願いしています。飲酒を再開すると再発の危険が明らかに高くなり、くり返すうちに慢性膵炎へ移行していきます。アルコール以外が原因の場合でも、回復の期間は控えていただくのが安全です。やめ続けることが難しいと感じておられる場合は、その点も含めてご相談ください。
胆のうを残したままでは再発の危険が続くため、炎症が落ち着いた段階での胆のう摘出術が広く勧められています。ただし、年齢やほかのご病気の状況によって判断が変わることもあります。手術を受ける場合の利点と、受けない場合に残る危険を具体的にご説明したうえで、外科と相談しながら決めていきましょう。
原因不明とされた場合こそ、追加の検査を検討する価値があります。通常の検査では見つかりにくい小さな胆石や胆泥、膵管の形の異常、そして膵臓の腫瘍が隠れていることがあるためです。超音波内視鏡やMRCPでの評価が有効なことが多く、必要と判断すれば連携施設へご紹介します。
関係することがあります。膵炎によって膵臓の組織が傷つくと、インスリンを出す力が落ち、糖尿病が現れることがあります。この型の糖尿病は、血糖を上げるホルモンも同時に不足するため低血糖を起こしやすいという特徴があり、一般的な糖尿病とは管理の考え方が異なります。当院で継続して確認していきます。
原因への対策ができているかどうかで大きく変わります。飲酒を続けている場合や胆石が残っている場合は再発しやすく、くり返すうちに慢性膵炎へ移行していきます。逆に、原因を取り除ければ再発を大幅に減らせます。定期的な通院は、その経過を確かめるためのものです。
回復の程度と重症度によって異なるため、一律の目安はありません。一般には、脂肪の少ない食事から少しずつ量と内容を戻していきます。自己判断で一気に戻すと痛みがぶり返すことがありますので、管理栄養士とともに段階を決めて進めます。痛みが出たときは、その時点で立ち止まってご相談ください。
必要です。膵臓の働きの低下や糖尿病、のう胞の変化は、退院してしばらく経ってから現れることがあります。また、原因への対策が済んでいるかどうかを確認する意味もあります。症状のない時期の通院が、次の膵炎を防ぐことにつながります。
診療時間内であれば、まずお電話でご相談ください。採血と超音波検査で状態を確認し、入院が必要と判断すれば速やかに手配します。夜間・休日で痛みが強い場合、嘔吐で水分がとれない場合、発熱や黄疸を伴う場合は、ためらわず救急要請をしてください。一度膵炎を経験された方の「あのときと同じ痛み」という感覚は、重要な判断材料になります。
TOP