肝癌
肝癌
肝癌
肝癌は、症状が出てから見つかったときには治療の選択肢が限られてしまう病気です。一方で、慢性肝炎や肝硬変、脂肪肝炎といった発生しやすい背景を持つ方があらかじめ分かっているという、他の癌にはない特徴があります。だからこそ、症状のないうちに定期的な検査を続けることが、治療できる段階で見つける唯一かつ確実な方法になります。当院では消化器病専門医が、院内の腹部超音波検査と腫瘍マーカーによる定期的な監視、疑わしい所見を認めた際の速やかな紹介、そして治療中・治療後の併診を担当します。
これらに当てはまる方は、肝癌の高危険群にあたります。危険群であること自体は、悪い知らせではありません。監視の対象がはっきりしているということは、定期的な検査によって早期に見つけられるということでもあるからです。実際、超音波検査で発見された小さな肝癌は、体への負担の少ない治療で対応できることが多くあります。
肝癌という言葉には、いくつかの異なるものが含まれます。また、背景となる病気によって、監視の間隔や治療の選び方が変わります。
肝癌の大部分を占め、肝細胞から発生します。慢性肝炎や肝硬変を背景に生じることがほとんどで、初期には症状がありません。血流の特徴が明瞭なため、造影検査によって高い精度で診断できるという特徴があります。
肝臓の中の胆管から発生する癌で、肝細胞癌とは治療方針が異なります。ALP・γ-GTPの上昇や胆管の拡張が手がかりになることがあります。頻度は肝細胞癌より低いものの、区別して評価する必要があります。
大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌などが肝臓に転移したもので、実は肝臓にできる悪性腫瘍としては最も多いものです。もとの癌の種類によって治療が決まるため、原発巣を明らかにすることが最優先になります。
B型・C型肝炎による肝硬変は、最も発生率の高い背景です。この場合は3〜4か月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー、加えて年に1〜2回の造影CT・MRIによる監視が推奨されます。C型肝炎の治療でウイルスが消えた後も、監視は継続します。
脂肪肝炎やアルコール性肝障害を背景とする肝癌が、近年増加しています。ウイルス性に比べて監視の対象として認識されにくく、進行してから見つかる傾向があります。肝硬変に至っていない段階でも発生することがあり、注意が必要です。
早期にはまったく症状がありません。腹部のしこり、痛み、体重減少、黄疸、腹水といった症状が現れる段階では、すでに進行していることが多いのが実情です。症状を待つのではなく、定期検査で見つけることが原則となります。
肝血管腫、限局性結節性過形成、肝のう胞など、超音波で腫瘤として見えても治療の必要がないものが多くあります。「肝臓に影がある」と言われても、良性であることのほうが多いのが実際です。造影検査で区別できます。
肝癌の治療では、腫瘍の大きさや個数だけでなく、残された肝臓がどれだけ働けるかが治療法の選択を左右します。癌が小さくても肝硬変が進んでいれば手術ができないことがあり、逆もあります。この点が他の癌と大きく異なる特徴です。
サーベイランス(定期的な監視)が、最も効果の確認された対策です
高危険群の方に対して、腹部超音波検査と腫瘍マーカーを定期的に行うことは、肝癌を治療可能な段階で見つけるための確立された方法です。高危険群では6か月ごと、肝硬変を伴う超高危険群では3〜4か月ごとが目安になります。当院では院内で超音波検査を実施でき、次回の時期を明示したうえで、通院が途切れないよう管理します。症状も自覚もない時期の検査こそが、この病気に対する最大の備えです。
疑わしい所見があれば、その日のうちに次へつなぎます
超音波で結節を認めた場合、あるいは腫瘍マーカーの明らかな上昇があった場合には、造影CT・EOB-MRI・造影超音波による確定が必要です。これらは連携病院での検査となりますが、紹介までの時間を短くすることが結果を左右します。当院では判断がついた時点で速やかに連絡を取り、当院での検査結果をお渡ししたうえで受診していただけるようにします。
治療中・治療後こそ、かかりつけ医の役割があります
手術、ラジオ波焼灼、カテーテル治療、薬物療法——いずれの治療も専門施設で行われますが、その間も糖尿病や高血圧の管理、栄養状態の維持、副作用への対応、日常の体調管理は続きます。当院では治療を担当する病院と連携しながら、こうした部分を担う併診が可能です。大きな病院への通院回数を抑えながら、日常の困りごとに身近な場所で対応できる形をご提案します。
再発の監視は、治療の終わりではなく続きです
肝癌は、治療がうまくいった後も、肝臓の別の場所に新たに発生することがあります。これは治療の失敗ではなく、肝臓全体に発生しやすい状態があるためです。したがって治療後も、同じ間隔での画像検査と腫瘍マーカーによる監視を続けます。当院はこの長期の監視を、かかりつけ医として担当します。
当院の役割は、高危険群の方の定期監視と、疑わしい所見の拾い上げです。確定診断のための造影検査や組織診断は、連携病院で行っていただきます。
| 腹部超音波検査 | 肝癌の監視の中心となる検査です。肝内の結節の有無、肝臓の表面や内部の性状、脾臓の大きさ、門脈の血流、腹水を確認します。被ばくがなく繰り返し行えるため、定期的な監視に最も適しています。当院では院内で実施し、その場で結果をご説明します。 |
|---|---|
| 腫瘍マーカー | AFP、AFP-L3分画、PIVKA-IIを測定します。それぞれ性質が異なり、組み合わせることで検出の精度が上がります。単独で診断できるものではありませんが、超音波と併せることで小さな変化を捉えやすくなります。推移を追うことに意味があります。 |
| 肝予備能・線維化の評価 | アルブミン、総ビリルビン、プロトロンビン時間、血小板数を確認し、肝臓の働きと線維化の程度を評価します。これらは治療法の選択に直結する情報であり、紹介時にお渡しすることで、その後の判断が速くなります。 |
| 背景疾患の評価 | 肝炎ウイルス、自己抗体、代謝の指標を確認し、背景にある肝疾患を明らかにします。背景が分かれば、監視の間隔も、抗ウイルス治療などの対応も決まります。まだ原因を調べていない方には、この評価から始めます。 |
| 全身状態と合併症の評価 | 血糖・HbA1c、脂質、腎機能、栄養状態を確認します。糖尿病は肝癌の発生と関連することが知られており、その管理自体が対策の一部になります。当院では院内でPWV・ABI検査も実施でき、動脈硬化の評価も同時に行えます。 |
| 上部・下部消化管内視鏡検査 | 肝硬変がある方では、食道・胃静脈瘤の有無を確認する必要があります。また転移性肝癌が疑われる場合には、原発巣を探すために胃カメラ・大腸カメラを行います。当院では消化器内視鏡専門医が担当し、院内で実施できます。 |
| 連携医療機関での検査 | 造影CT、EOB-MRI、造影超音波、血管造影、必要に応じた組織診断は、連携病院で行います。当院で結節を認めた場合には、速やかにご紹介し、これまでの検査データをお渡しします。診断が確定した後の治療も、専門施設で受けていただきます。 |
肝癌の治療は、腫瘍の大きさ・個数・広がりと、肝臓の働き(肝予備能)の両方から決まります。以下は専門施設で行われる治療ですが、当院ではその前後と併走する部分を担当します。
| 肝切除 | 腫瘍を含む肝臓の一部を外科的に切除します。肝予備能が保たれ、腫瘍の広がりが限られている場合に選択されます。腹腔鏡下で行われることも増えています。手術後の栄養管理や生活習慣病の管理は、当院で担当できます。 |
|---|---|
| ラジオ波焼灼療法 (RFA)など |
皮膚から針を刺し、熱で腫瘍を焼き固める治療です。小さな腫瘍に対して、体への負担が少なく行えます。定期検査によって早期に見つかった場合に選べる治療であり、監視を続ける意義がここに現れます。 |
| カテーテル治療 (TACE など) |
腫瘍を養う動脈に薬剤と塞栓物質を注入し、栄養を断つ治療です。複数の腫瘍がある場合などに用いられます。治療後の発熱や倦怠感(塞栓後症候群)への対応について、当院でもご相談いただけます。 |
| 薬物療法 | 免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬による治療が、進行例の中心となっています。治療は専門施設で行われますが、皮疹、下痢、甲状腺機能異常、血圧上昇といった副作用の初期対応や、日常の体調管理については、当院で併診しながら支えることができます。 |
| 肝移植 | 肝予備能が低下し、他の治療が難しい場合に、一定の条件を満たせば選択肢となります。適応の判断は移植施設で行われます。 |
| 背景肝疾患の治療 | B型肝炎の核酸アナログ、C型肝炎の抗ウイルス治療、脂肪肝炎に対する減量と栄養指導、断酒——これらは肝癌の再発を減らす意味を持ちます。当院では管理栄養士4名体制で糖質制限をベースにした栄養指導を行い、この部分を継続して支援します。 |
| 支持療法としての漢方治療 | 抗癌剤治療に伴う倦怠感、食欲不振、下痢、しびれなどに対して、漢方薬を併用することがあります。ただし肝硬変・肝癌のある方には使用してはならない漢方薬があり、また生薬製剤自体が肝障害の原因となることもあります。当院は漢方専門医として、病期と治療内容を確認したうえで安全に使える処方を選びます。自己判断での服用は避けてください。 |
| 治療後の再発監視 | 治療が成功した後も、肝臓の別の場所に新たな病変が生じることがあります。当院では専門施設と間隔を調整しながら、腹部超音波検査と腫瘍マーカーによる監視を継続して担当します。 |
最も大切なのは一つ目です。肝癌の監視は、体調が良い時期に受ける検査だからこそ意味があります。「調子がいいから今回は見送る」という判断が、最も治療しやすい時期を逃す原因になります。当院では次回の予定を明示し、通院が途切れないようお声がけしています。
SURVEILLANCE
高危険群の方の定期監視を、院内で完結して続けます
当院では腹部超音波検査と腫瘍マーカーの測定を院内で実施でき、背景疾患に応じた間隔で監視を継続します。通いやすい場所で、予約から結果説明までを短時間で行えることが、長く続けるうえでの利点です。次回の時期を明示し、通院が途切れないよう管理します。
REFERRAL
疑わしい所見は、速やかに専門施設へおつなぎします
結節を認めた場合や腫瘍マーカーの上昇があった場合には、判断がついた時点で連携病院にご連絡します。当院での超音波所見、肝予備能、背景疾患の情報をまとめてお渡しすることで、紹介先での検査と治療決定を速やかに進めていただけます。
CO-MANAGEMENT
治療中の日常を、身近な場所で支えます
専門施設で治療を受けながら、糖尿病や高血圧の管理、栄養状態の維持、副作用の初期対応、日常の体調不良への対処を当院で担当できます。大きな病院への通院回数を抑えながら、困ったときにすぐ相談できる場所があることを目指しています。
NUTRITION & KAMPO
栄養と漢方で、治療を続けられる体調を保ちます
当院には管理栄養士が4名在籍し、肝疾患と癌治療中の栄養管理に対応します。また漢方専門医として、倦怠感や食欲不振に漢方薬を用いることがあります。同時に、肝硬変・肝癌の方が使用してはならない漢方薬についても把握しており、安全性を確認したうえで処方します。
背景となる肝疾患と、これまでの経過をうかがう
肝炎ウイルスの有無、飲酒歴、脂肪肝の指摘、これまでの検査結果を確認します。過去の健診結果や他院の採血・画像データ、服用中の薬が分かるものをお持ちください。すでに治療中の方は、診療情報提供書や治療内容の記録もご持参いただけると助かります。
超音波検査と採血で、現在の状態を評価する
肝内の結節の有無、肝予備能、線維化の程度、腫瘍マーカーを確認します。背景疾患がまだ特定されていない方は、原因の検索もあわせて行います。
監視の間隔を決める、あるいは速やかに紹介する
危険度に応じて、検査の間隔(3〜4か月ごと、または6か月ごと)を決め、次回の予定をお示しします。疑わしい所見があった場合は、その場で連携病院へのご紹介を手配します。
長期にわたり、監視と全身の管理を続ける
治療の有無にかかわらず、監視は年単位で続きます。背景疾患の治療、生活習慣病の管理、栄養指導、体調の相談を含めて、かかりつけ医として継続して担当します。専門施設との連携も、そのつど調整します。
次の症状があるときは、次回予約を待たずにご相談ください
これらは、肝機能の低下、腹水、静脈瘤からの出血、肝性脳症、腫瘍の進行を示唆する症状です。吐血・黒い便・意識の変化がある場合は、当日中の受診または救急要請をご検討ください。判断に迷う場合も、まずご連絡いただければ対応します。
肝臓に見つかる腫瘤の多くは、肝血管腫や肝のう胞といった良性のものです。慢性肝疾患の背景がない方であれば、その可能性がさらに高くなります。ただし、背景に肝炎や肝硬変がある場合は確認が必要です。当院ではまず超音波であらためて所見を確認し、造影検査が必要かどうかを判断してご説明します。
背景となる肝疾患によって異なります。慢性肝炎の方は6か月ごと、B型・C型肝炎による肝硬変がある方は3〜4か月ごとの腹部超音波検査と腫瘍マーカー測定が目安です。肝硬変の方では、加えて年に1〜2回の造影CT・MRIが推奨されます。当院では、ご自身がどの区分にあたるかをお伝えし、次回の予定を明示します。
残念ながら、必要です。ウイルスが排除されても、それまでに進んだ線維化がすぐに元に戻るわけではなく、肝癌の発生リスクは残ります。「治ったから通院終了」と考えて中断してしまうことが、進行した状態で見つかる典型的な経過です。治療後こそ、監視を続ける意味があります。
腫瘍マーカーだけでは判断できません。小さな肝癌ではAFPやPIVKA-IIが上がらないことも多く、逆に肝炎の活動性で上昇することもあります。だからこそ、画像検査(腹部超音波)と組み合わせることが必要です。当院では両方を同じ日に行い、推移を追いながら評価します。
背景に慢性肝疾患がある方には、原則として禁酒をお勧めします。少量であっても線維化の進行を早め、肝癌の発生リスクを高めるためです。特にウイルス性肝炎や脂肪肝炎と重なっている場合、飲酒の影響は大きくなります。やめることの難しさも含めて、一緒に取り組み方をご相談させてください。
併診が可能です。治療そのものは専門施設で継続していただき、糖尿病・高血圧の管理、栄養指導、副作用の初期対応、日常の体調不良への対処を当院で担当する形をとれます。通院の負担を減らしながら、身近な場所で相談できる体制を作ることが目的です。現在の治療内容を踏まえ、役割分担をご相談させてください。
お勧めできません。効果が確認された健康食品はなく、それどころか肝障害を起こして本来の治療を中断せざるを得なくなることがあります。高額な自費療法についても同様です。ご不安な気持ちは当然のことですので、どういった選択肢が科学的に確認されているかを含めて、診察のなかで率直にご説明します。
使える場合もありますが、必ず事前にご相談ください。肝硬変や肝癌のある方には、使用してはならない漢方薬があります。また生薬製剤そのものが肝障害の原因となることもあります。当院は漢方専門医として診療しており、病期と現在の治療内容を確認したうえで、安全に使える処方を選んでご提案します。
肝癌そのものが遺伝するわけではありませんが、B型肝炎ウイルスの母子感染や、家庭内での生活習慣の共有といった背景が共通することがあります。まずは肝炎ウイルス検査を一度受けていただくことをお勧めします。採血一回で確認でき、陰性であればその心配を減らせます。あわせて腹部超音波検査で肝臓の状態を確認することも可能です。
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