急性肝炎
急性肝炎
急性肝炎
「だるさが抜けない」「食欲がなく、吐き気が続く」「尿の色が濃くなった」「白目が黄色い気がする」——急性肝炎は、風邪のような症状で始まりながら、まれに急速に悪化して命に関わることのある病気です。一方で、原因を突き止めれば回復が見込めるものが大半でもあります。当院では消化器病専門医が、採血と腹部超音波検査によってその場で重症度を評価し、原因の絞り込みと、入院が必要かどうかの判断を速やかに行います。
次の症状があるときは、様子を見ずに当日中の受診をお願いします
意識の変化、強い黄疸、出血しやすさは、肝臓の働きが急速に落ちている(急性肝不全)ときのサインです。この場合は入院での治療が必要になりますので、ご家族に付き添っていただくか、動けない場合は救急要請をご検討ください。
急性肝炎の初期は、倦怠感・食欲不振・微熱といった、風邪や胃腸炎とほとんど見分けのつかない症状で始まります。黄疸が出て初めて肝臓の病気と気づかれることも多く、逆に黄疸が出ないまま経過する例も少なくありません。「風邪にしては長い」「胃腸炎にしてはだるさが強い」と感じたときが、採血をお勧めする目安です。
急性肝炎は「肝臓が急に強い炎症を起こした状態」を指す言葉で、原因はひとつではありません。原因によって、感染対策の要否、使える治療、家族への予防、そして今後の見通しがすべて変わります。まず原因を突き止めることが治療の出発点です。
汚染された水や食品、生ガキなどから口を介して感染します。潜伏期は約1か月で、発熱を伴うことが多いのが特徴です。慢性化せず治癒しますが、高齢の方では重症化することがあります。ワクチンによる予防が可能で、流行地域への渡航前接種も有効です。
加熱の不十分な豚肉・イノシシ・シカの肉やレバー(ジビエを含む)から感染します。国内での報告は増えており、決してまれではありません。多くは自然に治りますが、妊娠中の方や慢性肝疾患のある方では重症化しやすく、注意が必要です。
血液や体液を介して感染し、性行為による感染が中心です。急性B型肝炎の一部は劇症化し、また特定の遺伝子型では慢性化することがあります。ワクチンで予防でき、感染の可能性がある接触の後には、時間を置かずに対応を検討します。
処方薬だけでなく、市販薬、漢方を含む生薬製剤、健康食品、プロテインやアミノ酸製品でも起こります。開始から数週間〜数か月後の発症が多く、被疑薬を中止すれば改善するのが原則です。「肝臓に良い」とされる製品が原因になっている例も、しばしば経験します。
伝染性単核球症を起こすEBウイルスやサイトメガロウイルスでも、肝障害が起こります。発熱、のどの痛み、首のリンパ節の腫れを伴い、若い方に多いのが特徴です。多くは経過観察で回復しますが、他の肝炎との区別が必要です。
短期間の大量飲酒をきっかけに、強い炎症と黄疸をきたすことがあります。ASTがALTより高いこと、γ-GTPの上昇が目立つことが手がかりです。禁酒が治療の中心となり、重症例では入院管理が必要になります。
本来は慢性に経過する病気ですが、急性肝炎のかたちで発症することがあります。ウイルスも薬剤も見当たらないとき、抗核抗体やIgGを調べることで手がかりが得られます。ステロイドが有効なため、見つけ出す意義の大きい原因です。
総胆管結石や腫瘍による胆道の閉塞、うっ血肝や虚血性肝障害、胆嚢炎なども、似た採血結果を示すことがあります。これらは治療の方向がまったく異なるため、超音波検査による確認が欠かせません。
見るべきは「数値の高さ」より「肝臓が働けているか」です
AST・ALTが1000を超えていると驚かれますが、この数値は壊れた肝細胞の量を映すもので、そのまま重症度を意味するわけではありません。本当に注目すべきは、プロトロンビン時間(凝固能)、ビリルビン、そして意識の状態です。凝固能が保たれ、意識がはっきりしていれば、数値が高くても外来で経過を追える場合があります。逆に数値が下がってきても凝固能が悪化していれば、危険な経過を意味します。当院では、この見極めを最優先に行います。
お薬・サプリメントの情報が、診断の決め手になります
薬剤性肝障害は急性肝炎の主要な原因のひとつですが、患者さんご自身が「これが原因かもしれない」と思っていないものほど見落とされます。処方薬に加えて、市販の風邪薬や鎮痛薬、漢方薬、健康食品、プロテイン、ダイエット関連の製品まで、この2〜3か月に口にしたものをすべてお教えください。製品そのものや写真をお持ちいただけると確実です。原因が分かれば、中止するだけで回復に向かうことが少なくありません。
ご家族への感染予防まで含めて考えます
A型肝炎やE型肝炎は食べ物や水を介して、B型肝炎は血液や体液を介して広がります。原因が特定できれば、同じ食事をしたご家族への注意喚起、トイレや手洗いの工夫、B型肝炎ワクチンの検討など、周囲への対応を具体的にお伝えできます。ご本人の治療と同時に、二次感染を防ぐことも外来の役割だと考えています。
急性肝炎では、重症度の評価と原因の特定を並行して進めます。当院では採血と腹部超音波検査を院内で実施でき、初診当日に方針の骨格をお示しすることを目指します。
| 問診 (経過・曝露歴・薬歴) |
症状の始まった時期と進み方、飲酒量、この数か月に開始した薬・サプリメント、食事内容(生ガキ、加熱不十分な豚肉やジビエ)、海外渡航歴、性交渉歴、輸血歴、家族や職場での同様の症状の有無をうかがいます。原因を絞り込むうえで、最も情報量の多い過程です。 |
|---|---|
| 肝機能・重症度の採血 | AST・ALT・ALP・γ-GTP・総ビリルビン(直接/間接)に加え、アルブミン、血小板、そしてプロトロンビン時間を確認します。凝固能とビリルビンは、入院の必要性を判断するうえで最も重要な項目です。腎機能、電解質、血糖、アンモニアもあわせて評価します。 |
| 肝炎ウイルス検査 | A型(IgM-HA抗体)、B型(HBs抗原・IgM-HBc抗体)、C型(HCV抗体・HCV-RNA)、E型(IgA-HEV抗体)を、経過と曝露歴に応じて選択します。急性か既感染かを区別できる項目を組み合わせて提出します。 |
| その他のウイルス・自己抗体 | 肝炎ウイルスが否定的な場合には、EBウイルス・サイトメガロウイルスの抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体M2、免疫グロブリン(IgG・IgM・IgA)を追加し、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎の可能性を確認します。 |
| 腹部超音波検査 | 胆管の拡張や総胆管結石、腫瘍による閉塞がないかを確認し、肝臓のうっ血や、もともと慢性肝疾患があったかどうかも評価します。被ばくがなく、その場で実施できます。胆道の閉塞は治療方針が根本的に異なるため、初診時に必ず確認する検査です。 |
| 血算・炎症反応 | 白血球分画(異型リンパ球や好酸球の増加は、ウイルス感染や薬剤性肝障害の手がかりになります)、貧血、血小板数、CRPを確認します。血小板が低い場合には、以前から肝硬変があった可能性も検討します。 |
| 連携医療機関での検査 (必要時) |
造影CT・MRI、肝生検、入院での集中的な管理が必要と判断した場合には、速やかに連携病院へご紹介します。当院で得られた採血・超音波の結果をそのままお渡しし、重複した検査を避けて治療に入っていただけるようにします。 |
急性肝炎の多くは、原因を取り除いて肝臓を休ませることで回復します。特効薬を使う場面は限られており、むしろ「何をしないか」「どこで悪化を見つけるか」が治療の質を決めます。
| 原因の除去 | 薬剤やサプリメントが疑われる場合は、まず中止します。アルコールが関与している場合は禁酒が絶対条件です。この一手だけで改善に転じることが多く、治療の中心となります。中止した薬が必要なものであれば、代替をご提案します。 |
|---|---|
| 安静と水分・栄養の管理 | 過度な安静は不要ですが、症状が強い時期は無理をしないことが回復を早めます。食欲が落ちているときは、量よりも水分と糖質の確保を優先します。吐き気で水分がとれない場合は、点滴や入院での補液が必要になります。 |
| 経過の追跡 | 回復に向かっているか、悪化しているかは、数日単位の採血の推移でしか判断できません。当院では初期に間隔を詰めて採血を行い、AST・ALTの低下だけでなく、プロトロンビン時間とビリルビンが改善しているかを確認しながら、外来で診てよい範囲かを判断します。 |
| 抗ウイルス薬 | 急性B型肝炎で重症化のおそれがある場合には、核酸アナログ製剤の使用を検討します。A型・E型肝炎には特別な抗ウイルス薬はなく、対症療法が基本です。適応の判断は専門施設と相談のうえ進めます。 |
| ステロイド治療 | 自己免疫性肝炎による急性肝炎や、重症の薬剤性肝障害では、ステロイドが有効な場合があります。ただし、ウイルス性肝炎に安易に使うと悪化させるため、原因の確認が済むまでは開始しません。 |
| 入院・専門施設への紹介 | プロトロンビン時間の延長、ビリルビンの上昇が続く、意識の変化がある、水分がとれない、といった場合には、その場で連携病院へご紹介します。急性肝不全は時間との勝負であり、紹介のタイミングを遅らせないことを重視しています。 |
| 回復期の漢方治療 | 炎症が落ち着いた後も、倦怠感や食欲不振が長く残ることがあります。この時期には、体力の回復を助ける補中益気湯、食欲不振や胃もたれに六君子湯などを用いることがあります。当院は漢方専門医として、体質と症状に応じて処方を選びます。なお、肝疾患のある方には使用を避けるべき漢方薬もあるため、自己判断での服用はお控えください。 |
| 再発・感染の予防 | A型・B型肝炎にはワクチンがあります。ご家族やパートナーへの接種、渡航前の接種についてもご相談ください。E型肝炎については、豚肉・ジビエの十分な加熱が唯一かつ確実な予防法です。 |
急性肝炎は、症状が軽くなってから採血が正常化するまでに、さらに数週間を要することがよくあります。「楽になったからもう大丈夫」と自己判断で通院をやめてしまうと、慢性化や再燃を見逃す原因になります。数値が落ち着いたことを確認するまでが、ひと続きの治療です。
SAME DAY
採血と腹部超音波検査で、その日のうちに重症度を評価します
急性肝炎の診療で最も大切なのは、「外来で診てよいのか、入院が必要なのか」を早く判断することです。当院では院内で採血と腹部超音波検査を実施でき、肝機能・凝固能の評価と、胆道閉塞など緊急性のある病態の除外を初診時に行います。重症と判断した場合は、その場で連携病院へおつなぎします。
SPECIALIST
消化器病専門医が、原因の絞り込みまで担当します
「肝臓の数値が高い」で終わらせず、ウイルス、薬剤、アルコール、自己免疫、胆道疾患のどれに当てはまるかを、経過と検査結果から系統立てて絞り込みます。原因が分かれば、治療も、ご家族への予防も、今後の見通しも具体的にお伝えできます。
FOLLOW UP
回復を確認しきるまで、間隔を詰めて経過を追います
急性肝炎の経過は、一度の採血では判断できません。当院では回復期に入るまで短い間隔で再検査を行い、数値の推移をグラフとしてお見せしながら説明します。慢性肝炎への移行がないかを最後まで確認することも、外来の重要な役割です。
KAMPO
回復期に残る倦怠感・食欲不振にも手立てを持っています
肝機能が正常化しても、だるさや食欲の戻りにくさが数週間続くことがあります。当院は漢方専門医としての診療も行っており、この時期の体調の立て直しに漢方薬を用いることがあります。西洋医学的な評価を土台にしたうえで、安全に使える処方を選びます。
症状の経過と、心当たりをうかがう
いつから、どのような症状が、どんな順序で出てきたかを確認します。市販薬・漢方薬・サプリメントを含めて、現在お使いのものが分かるものを必ずお持ちください。他院での採血結果があれば、あわせてご持参いただくと経過が読み取れます。
採血と腹部超音波検査で、重症度と原因を評価する
肝機能・凝固能・ビリルビンを確認し、同時に超音波で胆道の閉塞や慢性肝疾患の有無を調べます。ウイルスマーカーや自己抗体は、経過に応じて必要なものを選んで提出します。
外来で診るか、入院が必要かを判断する
凝固能・ビリルビン・意識の状態から、外来通院が可能かどうかを判断します。入院が必要と考えた場合は、その場で連携病院にご連絡し、検査結果をお渡ししたうえで受診していただきます。
回復を確認し、必要な予防まで行う
数値が正常化するまで間隔を詰めて再検査を行い、慢性化がないことを確認します。原因が分かった段階で、ご家族への感染予防やワクチン、今後避けるべき薬についてもご説明し、かかりつけ医として継続して診ていきます。
数値の高さそのものは、必ずしも重症度を意味しません。AST・ALTは壊れた肝細胞から漏れ出す酵素で、急性肝炎では一時的に数千まで上がることがありますが、肝臓が働けているかどうかはプロトロンビン時間(凝固能)とビリルビン、そして意識の状態で判断します。これらが保たれていれば、外来で経過を追える場合が多くあります。当院ではこの点を必ず確認したうえでご説明します。
全員に必要なわけではありません。水分と食事がとれ、凝固能が保たれ、意識がはっきりしていれば、外来で数日おきに採血しながら経過を追うことが可能です。一方、吐き気で水分がとれない、凝固能が延びている、ビリルビンが上がり続ける、意識に変化があるといった場合には、入院での管理が必要になります。この判断を初診時に行うことが、当院の役割だと考えています。
製品そのもの、または成分表示が読める写真をお持ちください。健康食品やダイエット関連製品は複数の成分が配合されていることが多く、パッケージがないと特定できません。処方薬、市販の風邪薬・鎮痛薬、漢方薬、プロテインなども含め、この2〜3か月に口にしたものすべてが診断の材料になります。判明した後は、今後避けるべきものとして記録に残します。
少なくとも肝機能が正常化するまでは完全に控えてください。原因がアルコールであった場合や、慢性肝疾患が背景にある場合には、その後も禁酒を継続していただくことになります。回復期の肝臓は再生の途中にあり、この時期の飲酒は炎症をぶり返させます。再開の可否は、採血の推移と原因が分かった段階で個別にご説明します。
原因によって異なります。A型・E型肝炎は口を介して感染するため、トイレ後の手洗いの徹底と、症状のある間は調理を代わっていただくことが有効です。B型肝炎は血液や体液を介するため、カミソリや歯ブラシの共用を避け、パートナーの方にはワクチンや検査をご検討いただきます。薬剤性やアルコール性、自己免疫性の肝炎は人にうつりません。原因が判明した時点で、必要な対策を具体的にお伝えします。
原因によります。A型・E型肝炎は原則として慢性化しません。B型肝炎は成人での感染の多くが治癒しますが、一部の遺伝子型では慢性化することがあります。C型肝炎は慢性化しやすい一方で、現在は飲み薬による治療が確立しています。いずれの場合も、数値が正常化したことを確認するまで通院を続けることが、慢性化の見逃しを防ぐ最も確実な方法です。
十分にあります。急性肝炎のうち黄疸がはっきり現れるのは一部で、倦怠感と食欲不振だけで経過する例も多くみられます。「風邪にしてはだるさが強い」「胃腸炎にしては長引く」と感じる場合は、採血で肝機能を確認する価値があります。当院では、その日のうちに結果をご説明できる体制をとっています。
可能です。これまでの採血結果や検査データをお持ちいただければ、経過を引き継いだうえで診療を続けます。入院治療を受けられた後の外来フォロー、慢性化の有無の確認、ご家族へのワクチン相談まで、かかりつけ医として担当いたします。ご紹介元との連携が必要な場合も、遠慮なくご相談ください。
自己判断での使用はお勧めできません。漢方薬を含む生薬製剤や健康食品は、それ自体が薬剤性肝障害の原因になりうるためです。また、肝疾患のある方には使用を避けるべき漢方薬もあります。当院は漢方専門医として診療しており、回復期の倦怠感や食欲不振に対して安全に使える処方を、病状に応じて選んでご提案します。まずはご相談ください。
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