睡眠薬が効かない・眠れない原因は?増薬前に見直すべき病気|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

〒565-0816大阪府吹田市長野東19-6

06-6878-3303

睡眠時無呼吸症候群(SAS)
外来サイト
WEB予約 LINE予約
睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来サイト
内観

睡眠薬が効かない・眠れない原因は?増薬前に見直すべき病気

睡眠薬が効かない・眠れない原因は?増薬前に見直すべき病気|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年10月26日

睡眠薬が効かない・眠れない原因は?増薬前に見直すべき病気

睡眠薬が効かない・眠れない原因とは?薬を増やす前に疑うべき隠れた病気

When sleeping pills are not enough

処方された睡眠薬を飲んでいるのに眠れない。1種類が2種類になり、3種類になっても、やはり夜中に目が覚めてしまう。

そんなとき、まず疑ってほしいのは薬の量ではありません。眠れない本当の理由が、別のところに隠れている可能性です。

この記事では、睡眠薬を重ねても不眠が続くときに確かめたいことを、国内外のガイドラインと研究をもとに整理しました。

「もう1種類足す」がうまくいかない理由

厚生労働省の研究班と日本睡眠学会がまとめた睡眠薬のガイドラインには、常用量の睡眠薬で効果が不十分なときに、種類を増やせばより効くという根拠はない、と書かれています。副作用を減らすためにも併用はできるだけ避け、特にベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を3種類以上重ねることは避けるべきだとしています。代わりの選択肢として挙げられているのは、作用の仕組みが異なる薬や、薬を使わない認知行動療法です[1]。

量を増やす場合も同じです。常用量を超える服用は絶対に避けるべきとされ、増やす前に「飲み続けるうちに効きが弱まっていないか(耐性)」「別の病気が眠りを妨げていないか」を検討するよう求めています[1]。

効果と副作用のバランスも気になるところです。60歳以上を対象にした24の臨床試験をまとめた解析では、睡眠薬で延びた睡眠時間は平均25分ほど。一方で、物忘れなど頭の働きに関わる副作用は約4.8倍、日中のだるさは約3.8倍に増えていました[2]。

薬を重ねても眠れないのは、診断を見直すタイミングかもしれません。ガイドラインでも、通常の薬物療法で改善しないときは、不眠症と間違われやすい睡眠の病気をあらためて検討し、専門医の意見を求めることが勧められています[1]。欧州のガイドラインは、治療に反応しない不眠には、脳波や呼吸を一晩記録する睡眠ポリグラフ検査(PSG)で調べるよう推奨しています[3]。

見落とされやすい「睡眠時無呼吸」

そのひとつが、眠っている間にのどがふさがって呼吸が止まる、閉塞性睡眠時無呼吸です。

米国の睡眠専門施設で、半年以上毎晩睡眠薬を飲んでも不眠が続く218人をPSGで調べた研究があります。4人に3人が、睡眠時無呼吸の基準(1時間あたり5回以上の無呼吸・低呼吸)に当てはまりました[4]。専門施設を受診した方々のデータで、無呼吸が不眠の原因だと証明されたわけではありません。それでも、見過ごせない数字です。

やっかいなのは、いびきだけでは見分けにくいこと。睡眠時無呼吸と診断されたことのない、米国の60歳以上の退役軍人で不眠症のある435人を調べた研究では、46.7%に中等症以上の無呼吸が見つかりました。ところが、いびきの大きさや頻度、呼吸が止まっていると言われたことの有無は、無呼吸と関係がありませんでした。関係していたのは、日中の眠気です[5]。

睡眠時無呼吸があると、呼吸が乱れるたびに眠りが途切れ、細切れになります[4]。睡眠薬は呼吸を整える薬ではありません。むしろ、のどの筋肉をゆるめて空気の通り道をふさがりやすくしたり、呼吸が止まったときの回復を遅らせたりするおそれが指摘されています。軽症から中等症では呼吸への悪影響はないとする報告もありますが、重症の場合はベンゾジアゼピン系の睡眠薬で呼吸の状態が悪くなる可能性があり、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などで無呼吸をきちんと治療したうえで使うことが勧められています[1]。

無呼吸を治療すると、眠りそのものが変わることもあります。CPAPなどの治療を始める前と2年後を比べた705人の研究では、治療を続けた人で「夜中に目が覚める」症状が59.4%から30.7%に減りました[6]。ただし、寝つきの悪さは残りやすいことも分かっています。不眠と無呼吸を併せ持つ145人の臨床試験では、CPAPの前に不眠の認知行動療法を4回受けた人たちのほうが、CPAPの使用時間が1晩あたり平均61分長く、不眠も改善していました[7]。

睡眠薬が効かないと感じている方へ

当院では、ご自宅で受けられる睡眠ポリグラフ検査(PSG)で無呼吸の有無を確かめられます。詳しくはこの記事の最後でご案内しています。

ほかにも確かめたい、眠りを妨げるもの

無呼吸のほかにも、睡眠薬だけでは解決しにくい原因があります。

  • むずむず脚症候群:夕方から夜にかけて、じっとしていると脚に不快な感覚が出て、動かさずにいられなくなる病気です。約9割の方が寝つきにくさや途中で目が覚めることを経験します。米国睡眠医学会は、まずお酒やカフェイン、抗ヒスタミン薬や一部の抗うつ薬といった悪化要因、未治療の睡眠時無呼吸を見直し、血液検査で鉄の状態を確認するよう勧めています。ベンゾジアゼピン系のクロナゼパムは、治療薬として勧められていません[8]。市販の睡眠改善薬に使われるジフェンヒドラミンも、抗ヒスタミン薬の一つです[1]。
  • 体内時計のずれ:自然に眠くなる時間帯が望ましい時刻より遅れていると(強い夜型など)、早く床に入っても寝つけません。こうしたリズムの乱れによる不眠には、メラトニン受容体作動薬が第一選択とされています[1]。
  • こころの不調:うつ病では不眠がよくみられ、抗うつ薬と睡眠薬の併用が効果的である可能性が高いとされています[1]。
  • 痛み・かゆみ・夜間のトイレ:まずは原因となっている病気の治療を十分に行うことが大切です[1]。
  • カフェインとお酒:就寝前の4時間はカフェインを控えること、眠るための飲酒はかえって夜中に目覚めやすくするとされています。お酒と睡眠薬を一緒に飲むのは原則禁忌です[1]。

「眠れていない」という感覚と、実際の眠りのずれ

脳波では眠っているのに、本人は眠れていないと感じる。これを睡眠状態誤認と呼びます。このタイプでは、訴えに合わせて睡眠薬を増やしても不眠感が消えず、量や種類が増えていきやすいとされています。程度の差はあっても、慢性の不眠に悩む方の多くにみられる現象です。確かめるには、睡眠日誌とPSGなどによる客観的な記録を突き合わせる必要があります[1]。

「眠らなきゃ」と焦るほど目がさえる。寝床で過ごす時間ばかりが長くなる。こうした悪循環をほどくのが、不眠の認知行動療法(CBT-I)です。欧州のガイドラインは、年齢や合併症にかかわらず、慢性不眠の治療の第一選択として推奨しています[3]。日本の複数の医療機関で行われた臨床試験でも、睡眠薬を3か月以上飲んでも改善しなかった方々にCBT-Iを加えたところ、不眠の重症度が改善しました[9]。

睡眠薬は、自己判断でやめないで

効かないならやめてしまおう、と思うかもしれません。けれども、長く飲んできた睡眠薬を急にやめると、一時的に不眠が悪化したり、不安やイライラが出たりすることがあります。ガイドラインでは、4分の1錠ずつ減らして1〜2週間様子をみるなど、時間をかけて減らす方法が示されています。2種類以上飲んでいる方、長く飲んでいる方は、特にゆっくり進める必要があります[1]。

減薬を後押ししてくれるのもCBT-Iです。8つの臨床試験をまとめた解析では、少しずつ減らす方法にCBT-Iを組み合わせると、3か月以内に睡眠薬をやめられた人の割合が約1.7倍になりました。ただし、12か月後の比較でははっきりした差は出ていません[10]。

睡眠薬が効かない不眠は、当院の睡眠時無呼吸症候群外来へ

こんな方は、一度検査を

睡眠薬を飲んでも眠れない。夜中に何度も目が覚める。日中に強い眠気がある。いびきを指摘されたことがある。ひとつでも当てはまれば、睡眠時無呼吸が隠れていないか確かめてみませんか。いびきの自覚がない方も対象です。

当院の睡眠時無呼吸症候群外来では、ご自宅で一晩眠りながら受けられる終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行っています。入院の必要はありません。無呼吸が見つかった場合は重症度に応じてCPAPによる治療を行い、CPAP治療の2回目以降の受診はオンライン診療も利用できます。体重の管理が必要な方には、管理栄養士による栄養指導も行っています。月・火・木・金曜は19時まで診療しています。

受診の際は、お薬手帳と、できれば1〜2週間分の睡眠日誌(床に入った時刻、起きた時刻、夜中に目覚めた回数)をお持ちください。いま飲んでいる睡眠薬は、受診まで自己判断で中止しないでください。不眠症そのものについては、不眠症のページで詳しく解説しています。

まとめ

睡眠薬を重ねても眠れないとき、必要なのは次の1錠ではなく、眠れない理由の見直しです。

睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、体内時計のずれ、こころや体の不調、そして眠りの感じ方のずれ。原因によって、効く治療はまったく違います。検査で原因を確かめることが、薬に頼りきらない眠りへの第一歩になります。

参考文献

  1. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン―出口を見据えた不眠医療マニュアル―, 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ(委員長 三島和夫) 日本睡眠学会. 2013 Jun(2014 Jul 更新版). URL: https://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf(ガイドラインのためDOIなし)要約: 日本の睡眠薬の使い方と休薬の指針。常用量で効かない場合に多剤併用が有効という根拠はなく、3種類以上の併用は避けるべきとした。改善しなければ睡眠時無呼吸などの見落としや睡眠状態誤認を再検討し、減薬は時間をかけて行うよう勧めている。
  2. Sedative hypnotics in older people with insomnia: meta-analysis of risks and benefits, Glass J, et al. BMJ. 2005 Nov;331(7526):1169. DOI: 10.1136/bmj.38623.768588.47要約: 60歳以上の不眠症を対象にした24試験(2,417人)のメタ解析。睡眠薬で睡眠時間は平均25分延びたが、認知面の副作用は4.78倍、日中の疲労は3.82倍に増えた。改善1人に13人の治療が必要な一方、6人の治療で副作用が1人増える計算だった。
  3. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023, Riemann D, et al. J Sleep Res. 2023 Dec;32(6):e14035. DOI: 10.1111/jsr.14035要約: 欧州睡眠学会の不眠症ガイドライン2023年版。診断は問診、睡眠日誌、質問票で行い、他の睡眠障害が疑われる場合や治療抵抗性の不眠では睡眠ポリグラフ検査を推奨。治療の第一選択は認知行動療法で、睡眠薬は原則4週間以内の短期使用とした。
  4. Patients with treatment-resistant insomnia taking nightly prescription medications for sleep: a retrospective assessment of diagnostic and treatment variables, Krakow B, et al. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 2010 Aug;12(4):PCC.09m00873. DOI: 10.4088/PCC.09m00873bro要約: 睡眠薬を半年以上毎晩使っても不眠が続き、米国の睡眠専門施設を受診した218人の診療記録を調べた後ろ向き研究。睡眠ポリグラフ検査で平均AHIは19.5で、75%が閉塞性睡眠時無呼吸(AHI 5以上)の基準を満たした。
  5. Prevalence and symptoms of occult sleep disordered breathing among older veterans with insomnia, Fung CH, et al. J Clin Sleep Med. 2013 Nov;9(11):1173-1178. DOI: 10.5664/jcsm.3162要約: 睡眠時無呼吸の診断歴がない60歳以上の不眠症の退役軍人435人に、自宅で睡眠検査を行った米国の研究。46.7%にAHI 15以上の無呼吸があり、日中の眠気とは関連したが、いびきの大きさや頻度、呼吸停止の指摘とは関連しなかった。
  6. Symptoms of insomnia among patients with obstructive sleep apnea before and after two years of positive airway pressure treatment, Björnsdóttir E, et al. Sleep. 2013 Dec;36(12):1901-1909. DOI: 10.5665/sleep.3226要約: アイスランドの閉塞性睡眠時無呼吸患者705人を、CPAPなど陽圧治療の開始前と2年後で比較した研究。治療を続けた人では中途覚醒の症状が59.4%から30.7%に減ったが、入眠困難は治療の有無にかかわらず残りやすかった。
  7. Cognitive and behavioral therapy for insomnia increases the use of continuous positive airway pressure therapy in obstructive sleep apnea participants with comorbid insomnia: a randomized clinical trial, Sweetman A, et al. Sleep. 2019 Dec;42(12):zsz178. DOI: 10.1093/sleep/zsz178要約: 中等症以上の睡眠時無呼吸と不眠症を併せ持つ145人のランダム化比較試験。CPAP開始前に不眠の認知行動療法を4回受けた群は、通常治療群に比べCPAP使用時間が1晩平均61分長く、導入の受け入れ率も高く、不眠の重症度も改善した。
  8. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline, Winkelman JW, et al. J Clin Sleep Med. 2025 Jan;21(1):137-152. DOI: 10.5664/jcsm.11390要約: 米国睡眠医学会によるむずむず脚症候群と周期性四肢運動障害の治療ガイドライン。まずアルコール、カフェイン、抗ヒスタミン薬やセロトニン系の薬、未治療の睡眠時無呼吸などの悪化要因への対処と鉄の検査を求め、クロナゼパムは推奨しないとした。
  9. Effectiveness of cognitive behavioral therapy for pharmacotherapy-resistant chronic insomnia: a multi-center randomized controlled trial in Japan, Ayabe N, et al. Sleep Med. 2018 Oct;50:105-112. DOI: 10.1016/j.sleep.2018.05.038要約: GABAA受容体作動薬(睡眠薬)を3か月以上使っても改善しない不眠症患者を対象にした日本の多施設ランダム化比較試験(解析49人)。睡眠衛生指導に認知行動療法を加えた群で不眠の重症度が有意に改善したが、減薬率に差はなかった。
  10. Psychosocial intervention for discontinuing benzodiazepine hypnotics in patients with chronic insomnia: A systematic review and meta-analysis, Takaesu Y, et al. Sleep Med Rev. 2019 Dec;48:101214. DOI: 10.1016/j.smrv.2019.101214要約: ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使う慢性不眠症患者の減薬に関する8件のランダム化比較試験のメタ解析。漸減に認知行動療法を加えると3か月以内の中止率が約1.7倍になり不眠も改善したが、12か月後の差は有意ではなかった。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

TOP