黄疸
黄疸
黄疸
白目が黄色い、肌の色が黄色っぽい、尿が濃くなった、体中がかゆい——黄疸は、血液中のビリルビンという色素が増えて、体が黄色く見える状態です。ご自身より先に、ご家族に指摘されて気づく方が少なくありません。原因は、治療の要らない体質的なものから、緊急の処置が必要な胆管の閉塞まで幅がひろく、見た目の黄色さだけでは区別がつきません。とくに、発熱と腹痛をともなう黄疸は急性胆管炎の可能性があり、時間単位で悪化します。当院では、血液検査でビリルビンを直接型と間接型に分け、腹部エコーで胆管が広がっていないかを確かめて、急ぐ病態かどうかをその日のうちに振り分けます。当院で経過を診るものは当院で、処置や入院が必要なものは連携病院へ、迷わずおつなぎします。
黄疸は、それ自体が病名ではなく、体の中で起きていることの結果として現れる症状です。大切なのは、黄色いかどうかではなく、なぜ黄色くなっているのかです。まずはそこを見分けるところから始めます。
ビリルビンという色素が、体の中をどう流れているかを知っておくと、検査の意味がわかりやすくなります。
ビリルビンは、三つの段階のどこかで滞ります
ビリルビンは、寿命を終えた赤血球が壊れるときにできる色素です。できたばかりのものが「間接ビリルビン」、肝臓で処理されて水に溶けやすくなったものが「直接ビリルビン」です。直接ビリルビンは胆汁の成分として胆管を通って十二指腸に流れ、便の茶色いもとになります。
この流れは、大きく三か所で滞ります。一つめは、赤血球が壊れすぎて処理が追いつかない場合。二つめは、肝臓そのものが傷んで処理できない場合。三つめは、胆管がふさがって胆汁が流れ出ていけない場合です。
どこで滞っているかは、直接ビリルビンと間接ビリルビンのどちらが増えているかで、おおよそ見当がつきます。だからこそ、黄疸の診療は「総ビリルビンの数値」だけでなく、その内訳を見るところから始まります。
尿の色、便の色、かゆみが手がかりになります
直接ビリルビンは水に溶けるため、増えると尿に出て、尿が濃い麦茶のような色になります。一方、胆汁が腸へ流れなくなると便の色づけがなくなり、便が白っぽく、灰色がかった色になります。この二つがそろっている場合は、胆管がふさがっている可能性を強く疑います。
かゆみも重要な手がかりです。胆汁がうっ滞すると全身のかゆみが出ますが、かゆみは黄疸より数週間から数か月早く現れることがあります。皮膚に発疹がないのにかゆみだけが続く場合、皮膚の問題ではなく肝臓や胆管の問題であることがあります。
反対に、間接ビリルビンだけが増えるタイプでは尿に色素が出ないため、白目は黄色いのに尿の色は変わらないという組み合わせになります。この違いも診断の役に立ちます。
どのくらいの数値で、目に見えるのか
血液中の総ビリルビンの基準値は、おおむね1.2mg/dLまでです。およそ2〜3mg/dLを超えると白目(眼球結膜)が黄色く見え始め、さらに高くなると皮膚全体に広がります。白目のほうが先に、そしてはっきり出ます。
そのため、健診で3mg/dL程度と言われても見た目に変化がない方もいれば、ご家族に指摘されて受診し、はじめて数値の高さが分かる方もいます。見た目の印象と数値は必ずしも一致しません。自然光の下で白目を見比べると分かりやすく、蛍光灯の下では見落とされがちです。
次の場合は、様子を見ずに受診してください
とくに注意が必要なのは、発熱・腹痛・黄疸の三つがそろう場合です。胆管に詰まった場所で細菌感染が起きる急性胆管炎の可能性があり、胆汁がたまったまま圧が上がると、細菌が血液に入って短時間で全身状態が悪化します。ここに意識の変化や血圧低下が加われば、重症と判断されます。
急性胆管炎は、抗菌薬だけでは十分でなく、たまった胆汁を出す処置(内視鏡による胆道ドレナージ)が必要になります。診療時間内であれば当院で採血とエコーを行い、必要と判断した場合はその場で連携病院へご連絡します。夜間・休日で上記の症状がある場合は、当院の受付をお待ちにならず、救急外来を受診してください。意識の変化やぐったりした様子があれば、迷わず救急要請をお願いします。
一方、痛みも熱もないまま黄疸が進む場合は、緊急ではなくとも、腫瘍による胆管の閉塞を考える必要があります。「痛くないから大丈夫」とは言えない、数少ない症状のひとつです。
「黄色い」と感じて受診された方のなかには、黄疸ではない方、治療の要らない体質の方が相当数含まれます。まず、この二つを確かめます。
柑皮症——手のひらは黄色いが、白目は黄色くない
みかん、にんじん、かぼちゃ、青汁、トマトジュースなど、β-カロテンを多く含む食品をたくさんとると、色素が皮膚にたまって黄色く見えることがあります。これを柑皮症といいます。
見分け方は明快です。柑皮症では白目は黄色くなりません。ビリルビンは弾性線維の多い眼球結膜に結びつきやすいのに対し、β-カロテンは角質の厚い手のひら・足の裏・鼻の周りに濃く出ます。手のひらが黄色く、白目が白いままであれば、まず柑皮症です。
体に害はなく、治療も不要です。摂取量を減らせば数週間から数か月かけて自然に薄くなります。ただし、甲状腺機能低下症や糖尿病でも柑皮症が出やすくなることが知られており、当院では念のため血液検査で確認します。
体質性黄疸(ジルベール症候群)——健診でよく見つかります
健診で「ビリルビンが高い」と指摘される方の多くが、この体質です。肝臓でビリルビンを処理する酵素のはたらきが生まれつきやや弱く、間接ビリルビンだけが軽く高くなります。数%の方にみられ、決してまれではありません。
特徴は、総ビリルビンがおおむね3mg/dL未満にとどまり、AST・ALT・ALP・γ-GTPといった他の肝機能の数値が正常で、貧血もないことです。空腹、睡眠不足、過労、飲酒、風邪をひいたときなどに数値が上がり、体調が戻れば下がります。健診のたびに数値が違うのは、そのためです。
病気ではなく体質であり、治療は必要ありません。肝硬変になることも、寿命に影響することもありません。当院では、溶血や肝臓の病気が隠れていないことを一度きちんと確認したうえで、「調べ終わった」という結論をお伝えします。健診のたびに不安になる状態を終わらせることも、診療の目的のひとつです。
滞っている場所によって、三つのグループに分かれます。それぞれ、進め方がまったく違います。
黄疸の診療では、順番が結果を左右します。当院では、その日のうちに次の段階を決められる検査から行います。
| 問診 | いつから、どのくらいの速さで黄色くなったか、痛み・発熱・かゆみの有無、尿と便の色の変化、体重の推移、飲酒量、渡航歴、輸血歴をうかがいます。服薬内容の確認がとくに重要です。処方薬だけでなく、市販薬・サプリメント・健康食品・漢方薬まで、実際に飲んでいるものをすべてお持ちください。 |
|---|---|
| ビリルビンの 分画 |
総ビリルビンだけでなく、直接ビリルビンと間接ビリルビンに分けて測ります。間接優位であれば体質性か溶血、直接優位であれば肝臓か胆管の問題と、大きく振り分けられます。この一項目で進む方向が決まるため、最初に行います。 |
| 肝胆道系の 血液検査 |
AST・ALT・ALP・γ-GTP・LDH・アルブミン・血小板・凝固能を確認します。AST・ALTが優位なら肝細胞の障害、ALP・γ-GTPが優位なら胆汁のうっ滞と読み分けます。溶血が疑われる場合は網状赤血球やハプトグロビンも追加します。いずれも院内で採血できます。 |
| 原因を 特定する検査 |
B型・C型・A型・E型の肝炎ウイルス、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、IgG・IgG4、甲状腺機能などを、状況に応じて追加します。腫瘍が疑われる場合はCA19-9・CEAも測定します。結果が出るまでの数日を待てるかどうかの判断も、同時に行います。 |
| 腹部エコー | 黄疸の診療で最も重要な検査です。胆管が広がっているかどうかを見ることで、胆管がふさがっているかを判断します。あわせて、胆石の有無、胆嚢の腫れ、肝臓の状態、膵臓の見える範囲を確認します。痛みがなく、被曝もありません。当日に実施できる場合があります。 |
| 行えない検査 (ご紹介) |
造影CT、MRCP、超音波内視鏡(EUS)、および内視鏡による胆道ドレナージ・採石(ERCP)は当院では行えません。これらが必要と判断した場合は、当日中を含め、連携している病院へおつなぎします。肝生検についても同様です。 |
黄疸の原因によって、当院が担う役割は変わります。あらかじめ整理してお伝えします。
| 当院で 完結するもの |
柑皮症、ジルベール症候群などの体質性黄疸は、一度きちんと調べて「治療の必要がない」と確認することが診療の目的になります。薬剤性が疑われる場合の原因薬の整理と中止後の経過観察、アルコールに関わる肝障害の継続診療、脂肪肝を含む慢性の肝機能異常の管理も当院で行います。 |
|---|---|
| 当日中に おつなぎするもの |
発熱と腹痛をともなう黄疸(急性胆管炎の疑い)、エコーで明らかな胆管の拡張を認める場合、急速に進行する黄疸です。採血とエコーの結果を添えて、その場で連携病院へご連絡します。ご自身で救急外来を探していただく必要はありません。 |
| 数日以内に おつなぎするもの |
痛みをともなわない黄疸で腫瘍が疑われる場合、原因のはっきりしない直接ビリルビン優位の黄疸です。当院で行える採血とエコーを先に済ませてからご紹介することで、専門施設での評価を早められます。ご希望の地域や通院しやすさもうかがいます。 |
| 治療中の 併診 |
ステント留置後や手術後、化学療法中の方の、日常的な内科診療を当院で承ります。ステントを入れている方の発熱は、胆管炎を最初に疑います。この場合、様子を見ずにご連絡ください。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの管理や、栄養面のご相談も継続して行えます。 |
| かゆみへの 対応 |
胆汁うっ滞によるかゆみは、抗ヒスタミン薬があまり効きません。根本の対応は、詰まりを取り除くことです。そのうえで、内服薬による対症療法や、皮膚の保湿・爪を短く保つといった具体的な工夫をご案内します。夜間のかゆみで眠れない場合は、その点も含めてご相談ください。 |
TRIAGE
急ぐかどうかを、その日のうちに判断します
黄疸の診療で最初に決めるべきことは、病名ではなく緊急性です。当院では、ビリルビンの分画と肝胆道系の採血、腹部エコーによる胆管の評価をその日に行い、当院で経過を診るのか、数日以内に紹介するのか、当日中に連携病院へつなぐのかを判断します。順番を間違えないことが、遠回りと手遅れの両方を防ぎます。
REASSURANCE
「調べ終わった」とお伝えすることも診療です
健診でビリルビンの高値を指摘され、毎年不安になりながら過ごしている方が少なくありません。多くは体質性のもので、治療も経過観察も必要ありません。当院では、溶血や肝疾患が隠れていないことを一度で確認し、その根拠とともに結論をお伝えします。曖昧なまま「様子を見ましょう」と繰り返さないことを心がけています。
ENDOSCOPY
消化器内視鏡専門医が診ています
院長は消化器病・消化器内視鏡の専門医です。胆道の処置そのものは連携病院にお願いしますが、どの段階でどの検査が必要になるか、紹介先で何が行われるかを踏まえたうえで、事前の検査と説明を行えます。紹介状には当院で得た情報をまとめてお渡しし、重複する検査を減らします。
CO-MANAGEMENT
紹介したあとも、診療は続きます
専門施設での治療が始まったあとも、日常の内科診療、栄養面のご相談、体調についてのご相談は当院で承ります。管理栄養士4名が在籍しており、食事の相談にも対応できます。院長は漢方専門医でもあります。黄疸そのものを漢方で治すことはできませんが、原因への治療と並行して、かゆみや食欲低下、倦怠感といったつらさを和らげる目的でご提案できる場合があります。
お薬とサプリメントをお持ちのうえ、ご来院ください
いつから黄色くなったか、尿と便の色、かゆみ、痛み、発熱、体重の変化をうかがいます。お薬手帳に加えて、市販薬・サプリメント・健康食品・漢方薬も実物をお持ちください。薬剤性は、飲んでいるものが分かって初めて疑える病態です。健診結果があればあわせてご持参ください。
採血で、滞っている場所を絞り込みます
ビリルビンを直接型と間接型に分け、肝胆道系の数値とあわせて評価します。間接優位で他の数値が正常であれば、体質性の可能性が高くなります。直接優位であれば、肝臓の障害か胆汁のうっ滞かを、ALP・γ-GTPとAST・ALTの比から読み分けます。
腹部エコーで、胆管の詰まりを確かめます
胆管が広がっているかどうかが、最大の分かれ道です。拡張があれば、どこかで胆汁の流れがせき止められていることを意味します。あわせて胆石、胆嚢、肝臓、膵臓を確認します。検査は痛みをともなわず、被曝もありません。
当院で診るか、おつなぎするかを決めます
体質性・薬剤性・慢性の肝機能異常は当院で継続して診療します。胆管の閉塞や腫瘍が疑われる場合は、検査結果をまとめた紹介状をお渡しし、連携病院へおつなぎします。急性胆管炎が疑われる場合は、その場で受け入れ先へご連絡します。紹介後も、日常の診療は当院で承ります。
最も多いのは、ジルベール症候群という体質です。間接ビリルビンだけが軽く高く、AST・ALT・ALP・γ-GTPが正常で、貧血もない場合がこれにあたります。空腹や過労、飲酒、風邪をひいたときに上がるため、健診のたびに数値が変わります。病気ではないので治療は不要ですが、溶血や肝臓の病気でも同じように上がるため、一度は血液検査で確かめておく価値があります。当院では一度の採血で確認し、体質と判断できれば、その旨をはっきりお伝えします。
柑皮症の可能性が高いと考えられます。みかん、にんじん、かぼちゃ、青汁などに含まれるβ-カロテンが皮膚にたまった状態で、手のひら・足の裏・鼻の周りに出やすい一方、白目は黄色くなりません。体に害はなく、摂取量を減らせば自然に薄くなります。ただし、甲状腺機能低下症や糖尿病でも出やすくなることが知られているため、当院では念のため採血で確認しています。
胆汁の流れがせき止められているサインです。水に溶ける直接ビリルビンが増えると尿に出て、濃い麦茶のような色になります。同時に、胆汁が腸に届かなくなるため、便の茶色が失われて白っぽく、灰色がかった色になります。この二つがそろっている場合は、胆管がふさがっている可能性が高く、早めの検査が必要です。便の色は写真に撮っておいていただけると、診察のときに役立ちます。
関係することがあります。胆汁がうっ滞すると全身のかゆみが出ますが、これは黄疸より数週間から数か月早く現れることがあります。発疹がないのにかゆみだけが続く、夜間にひどくなる、背中や手足のかき壊しが増えているといった場合には、皮膚の問題ではなく肝臓や胆管の問題である可能性を考えます。皮膚科で治療してもよくならないかゆみは、一度採血で肝胆道系の数値を確認する価値があります。
なります。薬剤性肝障害の原因として、処方薬だけでなく、市販の解熱鎮痛薬、健康食品、サプリメント、漢方薬も報告されています。「自然のものだから安全」ということはありません。多くは開始から数週間以内に現れ、中止すれば改善します。ただし、原因が特定できなければ中止のしようがないため、実際に飲んでいるものをすべてお持ちいただくことが診療の出発点になります。院長は漢方専門医であり、漢方薬による肝障害についても把握したうえで判断します。
その理解は正しい面があります。石が詰まった場合は強い痛みをともなうことが多い一方、腫瘍が胆管を外から徐々に圧迫する場合は、痛みがないまま黄疸だけが進むことがあります。体重減少やかゆみ、白色便をともなうときはとくに注意が必要です。ただし、痛みのない黄疸のすべてが腫瘍というわけではなく、薬剤性や胆汁うっ滞性の病気でも起こります。だからこそ、自己判断で結論を出さず、採血とエコーで確かめることが大切です。
必ずしもそうとは限りません。飲酒に関連した黄疸には、アルコール性肝炎のように禁酒と治療で改善しうるものと、肝硬変が進行して現れるものがあります。両者は、血小板数、アルブミン、凝固能、エコーでの肝臓の形などから区別していきます。いずれの場合も、飲酒を続けるかどうかが最も大きく結果を左右します。当院では検査で現状を確認したうえで、禁酒に向けた具体的な進め方までご相談します。
いいえ。体質性のものや軽い薬剤性であれば、外来での対応で済みます。入院が必要になるのは、胆管がふさがって処置を要する場合、感染をともなう急性胆管炎の場合、肝臓の機能が大きく落ちている場合などです。当院では採血とエコーで、外来で診てよいのか、入院の可能性を含めて病院へ紹介すべきかを判断します。判断がついた時点で、その根拠とともにご説明します。
ビリルビンの分画を含む血液検査、肝炎ウイルスや自己抗体などの原因検索、腹部エコーまでを院内で行えます。この範囲で、緊急性の判断と原因のおおよその絞り込みは可能です。一方、造影CT、MRCP、超音波内視鏡、そして胆管の詰まりを取り除く内視鏡処置(ERCP)は当院では行えず、連携病院へご紹介します。できることとできないことを最初にお伝えし、必要な方をできるだけ早くおつなぎする方針です。
自分の顔色の変化は、毎日見ているぶん気づきにくいものです。ご家族や久しぶりに会った方の指摘のほうが正確なことがよくあります。ご自身で確かめる場合は、蛍光灯の下ではなく、窓際の自然光の下で白目を見てください。皮膚より白目のほうが先にはっきり黄色くなります。判断に迷う場合でも、採血をすれば数値ではっきりします。指摘されたことをきっかけに受診していただいて構いません。
黄疸の背景にある病気や、健診での数値異常については、それぞれのページもあわせてご覧ください。
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