「ただの寝不足」で片づけないために|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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「ただの寝不足」で片づけないために

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2026年11月02日

「ただの寝不足」で片づけないために

Insufficient Sleep Syndrome

「ただの寝不足」で片づけないために

執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年11月2日

昼食のあとの会議で、ふっと記憶が途切れる。電車で座れば、ほぼ確実に眠ってしまう。休日は昼近くまで起きられない。

そんな毎日が当たり前になっていないでしょうか。原因が「睡眠時間そのものの不足」にあるなら、それは睡眠不足症候群と呼ばれる状態かもしれません。生活習慣の問題と思われがちですが、国際的な睡眠障害の診断分類にもきちんと載っている、れっきとした睡眠障害のひとつです[1]。

日本はとくに、この問題を抱えやすい国です。令和元年の国民健康・栄養調査では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人が男性で37.5%、女性で40.6%。OECDの調査でも、日本人の睡眠時間は33か国のなかで最も短いと報告されています[2]。

Point

この記事のポイント

  1. 日中の強い眠気の原因が、単純な睡眠時間の不足であることは珍しくありません
  2. 評価では、睡眠日誌や眠気の点数で実態をつかみ、ほかの睡眠障害を見落とさないようにします
  3. 治療の中心は睡眠時間を延ばすこと。休日の寝だめでは取り戻せません

参考文献

  1. International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. (ICSD-3)著者:American Academy of Sleep Medicine(日本語版:日本睡眠学会診断分類委員会 訳『睡眠障害国際分類 第3版』)媒体:American Academy of Sleep Medicine(日本語版はライフサイエンス刊)発行年:2014年(日本語版2018年)DOI:なし(書籍)要約:米国睡眠医学会が編集した睡眠障害の国際的な診断分類。睡眠不足症候群を過眠症の一群に位置づけ、ほぼ毎日の日中の眠気、3か月以上続く年齢相応より短い睡眠、休日の長い睡眠、睡眠延長による眠気の消失などを診断の要件としている。
  2. 健康づくりのための睡眠ガイド2023著者:健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会媒体:厚生労働省ウェブサイト掲載PDF発行日:2024年2月URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf要約:厚生労働省の検討会が最新の科学的知見をもとにまとめた指針。成人は6時間以上を目安に必要な睡眠を確保し、休日の寝だめに頼らないこと、カフェインは1日400mgまでとすることなどを勧め、睡眠不足症候群についても解説している。
  3. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation著者:Van Dongen HP, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF雑誌:Sleep. 2003;26(2):117-126発行日:2003年3月15日DOI:10.1093/sleep/26.2.117要約:健康な成人48人の睡眠を4・6・8時間に14日間制限、または3晩断眠させた実験。6時間以下の制限で認知機能は日ごとに低下し、最大で2晩の徹夜に相当する障害に至ったが、本人の眠気の自覚はわずかしか増えなかった。
  4. Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt著者:Kitamura S, Katayose Y, Nakazaki K, ほか(最終著者 Mishima K)雑誌:Sci Rep. 2016;6:35812発行日:2016年10月24日DOI:10.1038/srep35812要約:健康な日本人若年男性15人に9夜連続で12時間の就床機会を与えた実験。普段の睡眠約7.4時間に対し最適な睡眠は約8.4時間と推定され、自覚のない約1時間の睡眠負債があった。1時間分の回復に4日を要した。
  5. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society著者:Watson NF, Badr MS, Belenky G, ほか雑誌:J Clin Sleep Med. 2015;11(6):591-592発行日:2015年6月15日DOI:10.5664/jcsm.4758要約:米国睡眠医学会と睡眠研究学会の専門家15人による合意声明。成人は毎晩7時間以上の睡眠を習慣とすべきとし、7時間未満の睡眠が続くと肥満、糖尿病、高血圧、心疾患、うつ病、事故、死亡などのリスク上昇と関連すると示した。
  6. A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale著者:Johns MW雑誌:Sleep. 1991;14(6):540-545発行日:1991年12月DOI:10.1093/sleep/14.6.540要約:日中の眠気を測る質問票ESSを発表した原著論文。日常の8場面での居眠りのしやすさを0〜3点で答える。健常者30人と患者150人に実施し、合計点で健常者と睡眠時無呼吸、ナルコレプシーなどの患者を区別できた。
  7. Development of a Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) based on item response theory著者:Takegami M, Suzukamo Y, Wakita T, ほか(最終著者 Fukuhara S)雑誌:Sleep Med. 2009;10(5):556-565発行日:2009年5月DOI:10.1016/j.sleep.2008.04.015要約:開発者公認の日本語版ESS(JESS)を作成し検証した研究。翻訳・逆翻訳と項目反応理論による解析を経て、日本の生活に合わない2項目を差し替えた。信頼性は高く、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸などの患者は健常者より高得点だった。
  8. Use of Actigraphy for the Evaluation of Sleep Disorders and Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline著者:Smith MT, McCrae CS, Cheung J, ほか雑誌:J Clin Sleep Med. 2018;14(7):1231-1237発行日:2018年7月15日DOI:10.5664/jcsm.7230要約:米国睡眠医学会によるアクチグラフィの診療ガイドライン。系統的レビューとGRADE評価に基づき、睡眠不足症候群が疑われる成人の総睡眠時間の推定や、反復睡眠潜時検査前の睡眠時間の確認などへの使用を条件付きで推奨した。
  9. The diagnostic and therapeutic value of time in bed extension in Insufficient Sleep Syndrome著者:De Pieri M, Castelnovo A, Miano S, Manconi M雑誌:Sleep Med. 2025;128:219-228発行日:2025年4月DOI:10.1016/j.sleep.2025.02.013要約:スイスの専門施設で睡眠不足症候群と診断された55人の後ろ向き研究。3〜4割で反復睡眠潜時検査に入眠直後のレム睡眠がみられた。睡眠指導の3〜6か月後も69%が診断基準を満たし、改善例では平日と休日の睡眠のずれが小さかった。
  10. Recommended protocols for the Multiple Sleep Latency Test and Maintenance of Wakefulness Test in adults: guidance from the American Academy of Sleep Medicine著者:Krahn LE, Arand DL, Avidan AY, ほか雑誌:J Clin Sleep Med. 2021;17(12):2489-2498発行日:2021年12月1日DOI:10.5664/jcsm.9620要約:米国睡眠医学会が反復睡眠潜時検査と覚醒維持検査の実施手順を改訂した指針。検査前2週間の睡眠日誌(活動量計の併用も可)で睡眠状況を確かめることや、前夜に十分な睡眠を確保することなど、正確な結果を得るための準備を示した。
  11. Extending sleep to confirm insufficient sleep syndrome is challenging著者:Baumann-Vogel H, Hoff S, Valko PO, Poryazova R, Werth E, Baumann CR雑誌:J Sleep Res. 2021;30(3):e13109発行年:2021年DOI:10.1111/jsr.13109要約:スイスの睡眠検査施設の患者3,461人の記録を解析した研究。睡眠不足症候群が疑われた300人のうち睡眠延長を試みた94人で、成功は37人にとどまった。確定例では延長後の就床時間が平均8時間を超え、延長前より84分長かった。
  12. Behavioral interventions to extend sleep duration: A systematic review and meta-analysis著者:Baron KG, Duffecy J, Reutrakul S, ほか雑誌:Sleep Med Rev. 2021;60:101532発行日:2021年12月DOI:10.1016/j.smrv.2021.101532要約:12歳以上を対象に睡眠を延ばす行動介入を検討した42研究の系統的レビューとメタ解析。介入により睡眠時間は有意に延びた。就寝・起床時刻を具体的に指定する直接的な方法は、コーチングや教育による間接的な方法より効果が大きかった。
  13. Effect of Sleep Extension on Objectively Assessed Energy Intake Among Adults With Overweight in Real-life Settings: A Randomized Clinical Trial著者:Tasali E, Wroblewski K, Kahn E, Kilkus J, Schoeller DA雑誌:JAMA Intern Med. 2022;182(4):365-374発行日:2022年4月1日DOI:10.1001/jamainternmed.2021.8098要約:睡眠が6.5時間未満の過体重成人80人を対象としたランダム化比較試験。就床8.5時間を目標とした個別の睡眠衛生カウンセリングで睡眠が1晩約1.2時間延び、対照群と比べて1日の摂取エネルギーが約270kcal減少した。
  14. Ad libitum Weekend Recovery Sleep Fails to Prevent Metabolic Dysregulation during a Repeating Pattern of Insufficient Sleep and Weekend Recovery Sleep著者:Depner CM, Melanson EL, Eckel RH, ほか(最終著者 Wright KP Jr)雑誌:Curr Biol. 2019;29(6):957-967.e4発行日:2019年3月18日DOI:10.1016/j.cub.2019.01.069要約:健康な成人36人を対象とした実験。平日5時間睡眠と週末の自由な寝だめを繰り返した群でも、体内時計の遅れや夕食後の摂取量・体重の増加がみられ、インスリン感受性は9〜27%低下した。週末の寝だめは代謝の乱れを防げなかった。
  15. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed著者:Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T雑誌:J Clin Sleep Med. 2013;9(11):1195-1200発行日:2013年11月15日DOI:10.5664/jcsm.3170要約:健康な12人に400mgのカフェインを就寝0・3・6時間前に服用させた偽薬対照のクロスオーバー試験。いずれの条件でも睡眠が有意に妨げられ、6時間前の摂取でも総睡眠時間が大きく減った。就寝6時間前以降の多量摂取を避ける根拠を示した。

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