2026年10月04日

Alcohol and Health
「お酒は少しなら体にいい」は本当か ― 飲酒と健康、いまわかっていること
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月28日
「酒は百薬の長」。少しなら体にいい、という話は長いあいだ信じられてきました。
ところが、この10年ほどで研究の結論は大きく変わりました。先に書いてしまうと、少量飲酒の健康効果は、偏りを補正した解析では確認できなくなっています。とはいえ、明日から全員が断酒すべき、という話でもありません。まずは自分が飲んでいる量を数字にすること。そこが現実的な出発点です。
Point
この記事のポイント
- 「少量なら健康にいい」という結果は、研究の偏りを補正すると消えてしまいます
- 日本のガイドラインは、お酒の種類ではなく「純アルコール量(g)」で考えることを勧めています
- 高血圧や食道がんのように、ごく少量からリスクが上がる病気もあります
「少量なら体にいい」説は、なぜ揺らいだのか
まず、いちばん新しい大きな解析から。
107のコホート研究、およそ480万人分のデータをまとめた2023年の解析では、少量飲む人に死亡リスクの低下は認められませんでした。むしろ女性では1日25g以上、男性では45g以上で死亡リスクが上がっています[1]。
研究の種類系統的レビューとメタ解析/対象 107のコホート研究、4,838,825人
なぜ以前は「少量は体にいい」と見えていたのか。理由のひとつは、比較の相手です。体調を崩して酒をやめた人が「飲まない人」のグループに入っていると、飲まない人の成績が悪く見えてしまう。この偏りを取り除くと、保護効果は消えました[1]。
195の国と地域のデータを解析した研究も、健康への悪影響がもっとも小さくなる飲酒量はゼロだと結論づけています[2]。
もうひとつ、興味深いのが遺伝子を使った検証です。中国の50万人規模の研究では、自己申告の飲酒量で見ると少量飲酒者の脳卒中が少なく見えました。ところが、お酒の強さを決める遺伝子から予測した飲酒量で見ると、量が増えるほど脳卒中が増える一直線の関係になり、週280gあたり脳出血1.58倍、脳梗塞1.27倍でした。血圧も飲酒量に応じて上がっていました[3]。
まず、自分の量を数字にする
2024年、厚生労働省が初めての飲酒ガイドラインを公表しました[4]。柱になっているのが「純アルコール量」という考え方です。計算式はこうです。
純アルコール量(g)=お酒の量(ml)×度数(%)÷100×0.8
| お酒 | 量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 500ml(ロング缶1本) | 20g |
| 日本酒(15%) | 180ml(1合) | 約22g |
| ワイン(12%) | 200ml(グラス2杯) | 約19g |
| 焼酎(25%) | 100ml | 20g |
| ウイスキー(43%) | 60ml(ダブル1杯) | 約21g |
| 缶チューハイ(9%) | 350ml(1本) | 約25g |
厚生労働省の計算式をもとに算出。度数が高いお酒は、量が少なくてもアルコール量は多くなります。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
国の目標では、生活習慣病のリスクを高める量を1日あたり男性40g以上、女性20g以上としています。ただしガイドラインは、これらの量は個々人の許容量を示したものではない、とわざわざ注釈をつけています[4]。「40gまでは安全」という意味ではありません。
病気ごとに、上がり始める量が違う
ここがガイドラインのいちばん実用的な部分です。日本人を対象とした研究をもとに、病気ごとにリスクが上がり始める量が示されました[4]。
| 病気 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 高血圧 | 少量でも | 少量でも |
| 食道がん | 少量でも | データなし |
| 胃がん | 少量でも | 20g/日 |
| 大腸がん | 20g/日 | 20g/日 |
| 脳梗塞 | 40g/日 | 11g/日 |
| 乳がん | ー | 14g/日 |
厚生労働省ガイドラインの表をもとに作成。1日あたりの純アルコール量で、これを超えると発症リスクが上がると考えられる量です。「少量でも」は、少しでも飲むとリスクが上がると考えられるもの。
女性の数字が男性より小さいのは、体内の水分量や分解できる量の違いによるものです[4]。
世界全体で見ると、2020年に新しく診断されたがんの4.1%、およそ74万件が飲酒によるものと推計されています。このうち10万件あまりは、1日20g未満の「ほどほど」の飲酒によるものでした[5]。
顔が赤くなる人は、特に注意
飲むと顔が赤くなる、動悸がする。これはアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱いために起こる反応で、日本人では41%程度がこの体質だとされています[4]。
この体質の人が飲酒を続けると、食道がんのリスクが大きく上がることがわかっています。研究者らは、飲み始めたころに顔が赤くなったかどうかを尋ねるだけで、リスクの高い人を見つけられると指摘しています[6]。
長年飲むうちに赤くならなくなった、という方もいます。その場合もリスクは残ります[4]。若いころに赤くなっていたなら、注意しておいてください。
血圧と心臓
お酒を減らすと血圧はどうなるか。36の試験、2,865人を解析した研究があります。1日2ドリンク(純アルコール約24g)以下の人では血圧の変化ははっきりしませんでしたが、それ以上飲んでいた人では、減らすほど血圧が下がっていました。1日6ドリンク以上飲んでいた人が半分に減らすと、上の血圧が約5.5mmHg、下の血圧が約4.0mmHg下がっています[7]。
研究の種類系統的レビューとメタ解析/対象 36の介入試験、2,865人
心臓についても、きれいな試験があります。心房細動があり、週に10ドリンク(純アルコール約120g)以上飲んでいた140人を、禁酒する群と、今までどおり飲む群に分けた研究です。6か月間で不整脈が再発したのは、禁酒群53%に対し、飲み続けた群は73%でした[8]。
眠りと脳
寝酒の習慣がある方は少なくありません。ただ、睡眠検査で見ると、お酒は眠りの質を下げています。寝つきまでの時間は短くなるものの、睡眠の後半が乱れ、レム睡眠が減ります[9]。夜中に目が覚める、寝た気がしないという感覚には、理由があるわけです。
いびきのある方は、もうひとつ注意が要ります。21の研究をまとめた解析では、飲酒量が多い人は睡眠時無呼吸のリスクが約1.25倍でした[10]。アルコールはのどの筋肉をゆるめるため、気道がふさがりやすくなります。
脳についても報告があります。英国の36,678人の脳画像を解析した研究では、1日あたり純アルコール8〜16g程度の飲酒でも、灰白質と白質の体積が小さい傾向がみられました。量が増えるほど、その差は大きくなっていました[11]。
減らすと、どう変わるか
ここまで読むと気が重くなるかもしれませんが、裏を返せば、減らした分だけ得るものがあるということです。血圧は下がり[7]、心房細動の再発は減ります[8]。ゼロにしなくても、量を減らすこと自体に意味があります。
ガイドラインは、飲む場合の工夫として次のような点を挙げています[4]。
- あらかじめ飲む量を決めてから飲み始める
- 飲む前、または飲みながら食事をとる
- 合間に水や炭酸水をはさむ
- 1週間のうちに、飲まない日をつくる
- 自分の飲酒状況を把握する(AUDITなどの質問票)
休肝日は大切ですが、休んだ翌日にまとめて飲めば1週間の総量は変わりません。日ごとではなく、週の合計で考えてみてください。
こんなときは、ご相談ください
- 健診で肝機能(AST・ALT・γ-GTP)の数値を指摘された
- 血圧が高め、あるいは薬を飲んでも下がりにくい
- 顔が赤くなる体質なのに、毎日のように飲んでいる
- いびきや日中の眠気がある
- 寝つきのためにお酒を飲んでいる
- 減らそうとしても続かない、量を自分で決められない
不安や不眠を紛らわすための飲酒は、ガイドラインでも避けるべき飲み方として挙げられています[4]。また、毎日多量に飲んでいる方が自己判断で急にやめると、体調を崩すことがあります。減らし方についても、まずご相談ください。
よくあるご質問
赤ワインは体にいいと聞きましたが、どうなのでしょうか?
お酒の種類による違いよりも、含まれる純アルコールの総量で考えるというのが、現在のガイドラインの立場です。少量飲酒の保護効果そのものが、偏りを補正した解析では確認できていません。
休肝日をつくれば、量は気にしなくてよいですか?
飲まない日をつくることは勧められていますが、目的は1週間の総量を減らすことです。休んだ分を別の日に飲んでしまうと、効果は打ち消されます。
寝つきが悪いので寝酒をしています。やめるべきでしょうか?
寝つきは早くなりますが、睡眠の後半が乱れ、いびきや無呼吸も悪化しやすくなります。不眠が続いているなら、お酒ではなく原因の評価をお勧めします。
当院でのサポート
当院は内科のクリニックです。健診で肝機能を指摘された方の評価や、脂肪肝に対する管理栄養士(4名)による栄養指導を行っています。血圧や動脈硬化については院内のPWV・ABI検査で、いびきや日中の眠気がある方には睡眠時無呼吸の在宅検査とCPAP治療で対応しています。
飲酒と関係の深い食道や胃の状態は、胃カメラで確認できます。当院では夕方の時間帯にも胃内視鏡検査を行っています。やめたくてもやめられない状態が続いているときは、専門的な治療が必要なこともあります。まずはご相談ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
参考文献
- Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-analyses著者:Zhao J, Stockwell T, Naimi T, ほか雑誌:JAMA Netw Open. 2023;6(3):e236185発行日:2023年3月31日DOI:10.1001/jamanetworkopen.2023.6185要約:107のコホート研究、約484万人を統合したメタ解析。偏りを補正すると少量飲酒による死亡リスクの低下は認められず、女性は1日25g以上、男性は45g以上で全死亡リスクが有意に上昇した。
- Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016著者:GBD 2016 Alcohol Collaborators雑誌:Lancet. 2018;392(10152):1015-1035発行日:2018年9月22日DOI:10.1016/S0140-6736(18)31310-2要約:195の国と地域を対象に飲酒による疾病負荷を推計した解析。全死亡およびがんのリスクは飲酒量とともに上昇し、健康への損失が最小になる飲酒量はゼロであると結論づけた。
- Conventional and genetic evidence on alcohol and vascular disease aetiology: a prospective study of 500 000 men and women in China著者:Millwood IY, Walters RG, Mei XW, ほか雑誌:Lancet. 2019;393(10183):1831-1842発行日:2019年5月4日DOI:10.1016/S0140-6736(18)31772-0要約:中国の51万人を追跡し、飲酒に関わる遺伝子多型を用いて因果関係を検証した研究。遺伝的に予測した飲酒量は週280gあたり脳出血1.58倍、脳梗塞1.27倍と関連し、少量飲酒の保護効果は認められなかった。
- 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン著者:厚生労働省資料:アルコール健康障害対策基本法に基づく国のガイドライン発行日:2024年2月19日URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001211944.pdf要約:日本で初めての飲酒ガイドライン。純アルコール量による飲酒量の把握を基本とし、日本人研究に基づく疾病別のリスク上昇量、フラッシング体質(日本人の41%程度)の注意、健康に配慮した飲み方を示した。
- Global burden of cancer in 2020 attributable to alcohol consumption: a population-based study著者:Rumgay H, Shield K, Charvat H, ほか雑誌:Lancet Oncol. 2021;22(8):1071-1080発行日:2021年8月DOI:10.1016/S1470-2045(21)00279-5要約:2020年の新規がんのうち約741,300件(4.1%)が飲酒に起因すると推計した研究。1日20g未満の飲酒でも103,100件が該当し、食道がん、肝がん、乳がんが多かった。東アジアでは割合が高い。
- The Alcohol Flushing Response: An Unrecognized Risk Factor for Esophageal Cancer from Alcohol Consumption著者:Brooks PJ, Enoch MA, Goldman D, ほか雑誌:PLoS Med. 2009;6(3):e50発行日:2009年3月24日DOI:10.1371/journal.pmed.1000050要約:ALDH2の働きが弱い東アジア人では、飲酒による食道扁平上皮がんのリスクが大きく上がることを整理した総説。飲酒時の顔面紅潮の有無を尋ねることが、高リスク者を見つける実用的な指標になると提言した。
- The effect of a reduction in alcohol consumption on blood pressure: a systematic review and meta-analysis著者:Roerecke M, Kaczorowski J, Tobe SW, ほか雑誌:Lancet Public Health. 2017;2(2):e108-e120発行日:2017年2月DOI:10.1016/S2468-2667(17)30003-8要約:36の介入試験、2,865人のメタ解析。1日2ドリンク以下では有意な血圧低下はなかったが、6ドリンク以上の人が約半分に減らすと収縮期血圧が5.50mmHg、拡張期血圧が3.97mmHg低下した。
- Alcohol Abstinence in Drinkers with Atrial Fibrillation著者:Voskoboinik A, Kalman JM, De Silva A, ほか雑誌:N Engl J Med. 2020;382(1):20-28発行日:2020年1月2日DOI:10.1056/NEJMoa1817591要約:週10ドリンク以上飲む心房細動患者140人を禁酒群と対照群に分けたランダム化比較試験。6か月間の不整脈再発は禁酒群53%、対照群73%で、禁酒により再発と心房細動の持続時間が減少した。
- Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep著者:Ebrahim IO, Shapiro CM, Williams AJ, ほか雑誌:Alcohol Clin Exp Res. 2013;37(4):539-549発行日:2013年4月DOI:10.1111/acer.12006要約:健康な人における飲酒の睡眠への影響をまとめた総説。どの量でも寝つきまでの時間は短くなるが、睡眠の後半が乱れ、量が多いとレム睡眠が減少する。寝酒は睡眠の改善にはならないと結論づけた。
- Alcohol and the risk of sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis著者:Simou E, Britton J, Leonardi-Bee J雑誌:Sleep Med. 2018;42:38-46発行日:2018年2月DOI:10.1016/j.sleep.2017.12.005要約:21の疫学研究を統合したメタ解析。飲酒量が多い人では睡眠時無呼吸のリスクが1.25倍であった。飲酒量を減らすことが睡眠時無呼吸の予防・治療に有用である可能性を示した。
- Associations between alcohol consumption and gray and white matter volumes in the UK Biobank著者:Daviet R, Aydogan G, Jagannathan K, ほか雑誌:Nat Commun. 2022;13(1):1175発行日:2022年3月4日DOI:10.1038/s41467-022-28735-5要約:英国UKバイオバンクの36,678人の脳画像を解析した研究。飲酒量は灰白質・白質の体積と負の相関を示し、1日1〜2単位(純アルコール8〜16g)程度でもすでに差が認められ、量が増えるほど差は大きくなった。