2026年9月30日

千里丘かがやきクリニックのフレイル対策!InBodyでの筋肉量測定と4名の管理栄養士によるサポート
Frailty
「年のせい」とあきらめる前に知っておきたいこと
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月23日
「最近、なんだか疲れやすい」「歩くのが遅くなった気がする」「ペットボトルのふたが開けにくい」。
年齢のせいだから仕方ない。そう思って、見過ごしていませんか。こうした変化は、フレイルのサインかもしれません。フレイルは、英語の「Frailty(虚弱)」をもとに、日本老年医学会が2014年に提唱した言葉です[1]。
日本の地域で暮らす65歳以上の方を対象とした研究をまとめた解析では、フレイルは約7.4%、その手前の「プレフレイル」は約48.1%でした[2]。決して他人事ではありません。
Point
この記事のポイント
- フレイルは健康と要介護の中間の状態で、適切な対応をすれば戻れる可能性があります
- プレフレイルの段階で気づくほど、健常に戻りやすいことがわかっています
- 対策の柱は、筋力トレーニングを含む運動と、たんぱく質を中心とした食事です
フレイルとは、どんな状態か
年を重ねて体の予備力が落ち、ちょっとした病気やけがをきっかけに体調を崩しやすくなった状態をいいます。そのままにしておくと、介護が必要になったり、命にかかわったりしやすくなります[1]。
大切なポイントは2つあります。ひとつは、健康な状態と要介護状態の「中間」にあること。もうひとつは、適切な対応をすれば、再び健康な状態に戻れる可能性があることです[1]。
また、フレイルは体だけの問題ではありません[1]。
| 種類 | あらわれ方 |
|---|---|
| 身体的 | 筋力が落ちて動作がにぶくなり、転びやすくなる |
| 精神・心理的 | 認知機能の低下や、気分の落ち込み(うつ)など |
| 社会的 | ひとり暮らしや経済的な困りごとなどで、社会とのつながりが弱くなる |
日本老年医学会のステートメントをもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
どのくらいの人が当てはまるのか
先ほどの解析では、健常と判定されたのは44.4%でした。つまり半数以上の方が、プレフレイルかフレイルに当てはまっていたことになります[2]。
研究の種類系統的レビューとメタ解析/対象 日本の地域在住高齢者を調べた5研究
年齢とともに割合は増え、65〜69歳では1.9%だったフレイルが、85歳以上では35.1%にのぼっています。男女別では、女性8.1%、男性7.6%でした[2]。
放っておくと、どうなるのか
アメリカで65歳以上の約5,300人を追跡した研究では、フレイルの人は、転倒、歩く力や日常生活動作の悪化、入院、死亡のリスクが高いことがわかりました。この研究では、4年間で7.2%の人が新たにフレイルになっています。当てはまる項目が1〜2つの「中間」の人も、その後フレイルに進みやすかったと報告されました[3]。
研究の種類前向きコホート研究/対象 米国の65歳以上5,317人
やっかいなのは、悪循環に陥りやすいことです[3]。筋肉が減ると、筋力が落ちて歩くのが遅くなり、活動量も減ります。体を動かさなければ消費するエネルギーも減ります。そこに年齢による食欲の低下も重なって、食べる量が少なくなる。栄養が足りなくなれば、筋肉はさらに減っていきます。
この「フレイル・サイクル」を、どこかで断ち切ることが大切です。
まずはセルフチェックから
日本では、フレイルの判定に「改訂日本版フレイル基準(改訂J-CHS基準)」が使われています[4]。
| 項目 | 当てはまる目安 |
|---|---|
| 体重減少 | 6か月で2kg以上、意図せず体重が減った |
| 筋力低下 | 握力が男性28kg未満、女性18kg未満 |
| 疲労感 | ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする |
| 歩行速度 | ふだんの歩く速さが秒速1.0m未満 |
| 身体活動 | 軽い運動・体操も、定期的な運動・スポーツも、週に1回もしていない |
改訂J-CHS基準をもとに作成。3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイル、0項目で健常と判定します。
握力や歩く速さはご自身では測りにくいので、気になる方は医療機関で確認しましょう。
早く気づくほど、戻りやすい
16の研究、約4万3千人のデータをまとめた解析があります。平均3.9年のあいだに、状態がよくなった人は13.7%、悪くなった人は29.1%でした[5]。
研究の種類系統的レビューとメタ解析/対象 16研究42,775人、平均追跡3.9年
注目したいのは、改善のしやすさの違いです。プレフレイルの人は約4人に1人が健常に戻れました。一方、フレイルから健常まで戻れた人は約3%にとどまりました[5]。「まだ大丈夫」と思える今こそ、対策を始めるタイミングです。
筋肉の量を「数字」で確かめる
フレイルと深く関わるのが、サルコペニアです。加齢によって筋肉量が減り、筋力や体の機能が低下した状態をいいます[6]。
アジアの診断基準(AWGS 2019)では、「SMI(骨格筋量指数)」で筋肉量を評価します。SMIは、手足の筋肉量を身長の2乗で割った値です[6]。
| 調べるもの | 低下の目安(AWGS 2019) |
|---|---|
| 筋肉量 | SMIが男性7.0kg/m²未満、女性5.7kg/m²未満(BIA法で測定した場合) |
| 筋力 | 握力が男性28kg未満、女性18kg未満 |
| 身体機能 | 歩く速さが秒速1.0m未満など |
AWGS 2019の診断基準をもとに作成。これらを組み合わせて総合的に判断します。
体重計の数字だけでは、筋肉がどれくらいあるのかまではわかりません。当院では、体成分分析装置「InBody」を使ってSMIを測定できます。InBodyは、体に微弱な電流を流して体の成分を調べるBIA法の機器です[7]。SMIは手足の筋肉量をもとに計算するため、腕や脚にどれくらい筋肉がついているかを確認できます。
筋肉量を数値で確認し、問診などとあわせて判断することで、フレイルの状態をより正確に評価できます。定期的に測れば、取り組みの成果を数字で確かめられるのも利点です。
心臓ペースメーカーなどの植え込み型医療機器をお使いの方は、InBodyでの測定ができません。お手数ですが、事前にお知らせください[7]。
今日からできる予防・改善のポイント
ここからは、具体的な対策を4つに分けて紹介します。どれもひとつだけで完結するものではなく、組み合わせて取り組むことが大切です。
筋トレを含む運動
国際的な診療ガイドライン(ICFSR)では、筋力トレーニングを含む複合的な運動プログラムが、フレイル対策の第一選択として強く推奨されています[8]。
椅子からの立ち上がりなど、自分の体重を使った運動から始めてみましょう。持病のある方は、事前に主治医へご相談ください。
たんぱく質をしっかりとる
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、65歳以上のたんぱく質の推奨量は1日あたり男性60g、女性50gです。エネルギー全体の15〜20%をたんぱく質からとることが目標とされています[9]。
国際的な専門家グループ(PROT-AGE)は、65歳を超える方に体重1kgあたり1日1.0〜1.2g以上を勧めています。急性や慢性の病気がある方の多くは、1.2〜1.5gが必要だとしています[10]。たとえば体重50kgの方なら、1日50〜60g以上が目安になります。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品など、たんぱく質を多く含む食品を意識してとりましょう。
体重が減っている方や低栄養の方には、たんぱく質とエネルギーの補給が勧められています[8]。体重が減っているときこそ、しっかり食べることが大切です。
重い腎臓病がある方は、たんぱく質を控える必要がある場合もあります[10]。自己判断はせず、主治医または当院にご相談ください。
お口の健康を守る
千葉県柏市で、65歳以上の約2,000人を調べた研究があります。歯の数、かむ力、滑舌、舌の力、食べにくさの自覚、飲み込みにくさの自覚という6項目のうち、3つ以上が低下した状態を「オーラルフレイル」と呼びます[11]。
研究の種類前向きコホート研究/対象 千葉県柏市の65歳以上2,011人
オーラルフレイルの人は、その後、身体的フレイルになるリスクが2.4倍、要介護になるリスクが2.3倍、死亡のリスクが2.2倍高くなっていました[11]。かみにくさやむせを感じたら、早めに歯科で相談しましょう。
薬・体調・暮らしの見直し
ガイドラインでは、薬が多すぎないかを見直すことも重要とされています。疲れやすさの原因になる病気(うつ、貧血、低血圧、甲状腺機能の低下、ビタミンB12不足など)の確認も同様です[8]。
また、必要に応じて社会的な支援を受けることも強く勧められています[8]。
組み合わせて取り組むと、改善しやすい
シンガポールで、プレフレイルまたはフレイルの高齢者246人を対象に行われた試験があります。栄養補給、運動、認知トレーニング、それらの組み合わせを6か月間行いました[12]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 246人、6か月間の介入
12か月後にフレイルが改善した人の割合は、通常ケアの群で15%、介入を受けた群で35.6〜47.8%でした。改善の見込みがもっとも高かったのは、組み合わせた群です[12]。
こんな変化があれば、ご相談ください
- 半年で2kg以上、意図せず体重が減った
- わけもなく疲れやすい状態が続いている
- 歩くのが遅くなったと感じる
- 運動をする習慣がほとんどない
- かみにくさや、飲み込みにくさを感じる
フレイルは、早く気づいて手を打てば、元に戻れる可能性がある状態です[1][5]。「年だから」とあきらめる前に、まずはご自身の体の状態を知ることから始めてみませんか。
よくあるご質問
体重は変わっていません。それでもフレイルの心配はありますか?
体重計の数字だけでは、筋肉がどれくらいあるのかまではわかりません。InBodyでSMI(骨格筋量指数)を測ると、筋肉量を数値で確認できます。
プレフレイルと言われました。今から何かして間に合いますか?
むしろ今が始めどきです。プレフレイルの方は約4人に1人が健常に戻れたのに対し、フレイルから戻れた方は約3%という報告があります。
やせたほうが健康によいのでは、と思っていました。
体重が減っているときは、たんぱく質とエネルギーの補給が勧められています。自己流で食事を減らす前に、一度ご相談ください。
当院でのサポート
当院では、体成分分析装置InBodyでSMI(骨格筋量指数)を測定し、フレイルやサルコペニアの評価に役立てています。定期的に測ることで、運動や食事の成果を数字で確かめられます。
さらに当院は、管理栄養士4名体制で栄養面をサポートしています。測定結果やふだんの食事内容をもとに、何を、どのくらい、どう食べればよいかを、一人ひとりの生活に合わせて一緒に考えていきます。ご本人はもちろん、ご家族の様子が気になる方も、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
参考文献
- フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント著者:一般社団法人日本老年医学会媒体:日本老年医学会(ウェブサイト掲載資料)発行年:2014年5月URL:https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf要約:「Frailty」の訳語として「フレイル」を提唱した声明。高齢期に予備能が低下し、要介護や死亡に陥りやすい状態と定義した。身体・精神心理・社会的側面を含み、適切な介入で健常に戻り得る可逆性があるとした。
- Prevalence of frailty in Japan: A systematic review and meta-analysis著者:Kojima G, Iliffe S, Taniguchi Y, ほか雑誌:J Epidemiol. 2017;27(8):347-353発行日:2017年8月DOI:10.1016/j.je.2016.09.008要約:日本の地域在住高齢者(65歳以上)を対象とした5研究のメタ解析。フレイル7.4%、プレフレイル48.1%、健常44.4%だった。フレイルは65〜69歳の1.9%から85歳以上の35.1%へと、年齢とともに増加した。
- Frailty in older adults: evidence for a phenotype著者:Fried LP, Tangen CM, Walston J, ほか雑誌:J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(3):M146-156発行日:2001年3月DOI:10.1093/gerona/56.3.M146要約:米国の65歳以上5,317人を解析した原典。体重減少・疲労感・握力低下・歩行速度低下・活動量低下の5項目でフレイルを定義した。フレイルは転倒、ADL障害、入院、死亡を独立して予測した。
- The revised Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria (revised J-CHS criteria)著者:Satake S, Arai H雑誌:Geriatr Gerontol Int. 2020;20(10):992-993発行日:2020年10月DOI:10.1111/ggi.14005要約:Friedの基準をもとにした日本版フレイル基準(J-CHS基準)の2020年改訂版。体重減少、握力、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目で評価し、3項目以上をフレイル、1〜2項目をプレフレイルと判定する。
- Transitions between frailty states among community-dwelling older people: A systematic review and meta-analysis著者:Kojima G, Taniguchi Y, Iliffe S, ほか雑誌:Ageing Res Rev. 2019;50:81-88発行日:2019年3月DOI:10.1016/j.arr.2019.01.010要約:16研究42,775人のメタ解析(平均追跡3.9年)。13.7%が改善し、29.1%が悪化した。プレフレイルの約4分の1は健常に戻ったが、フレイルからは約3%にとどまり、早期介入の重要性を示した。
- Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment著者:Chen LK, Woo J, Assantachai P, ほか雑誌:J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2発行日:2020年3月DOI:10.1016/j.jamda.2019.12.012要約:アジアのサルコペニア診断基準(AWGS)の2019年改訂版。握力は男性28kg未満・女性18kg未満、骨格筋量指数はBIA法で男性7.0kg/m²未満・女性5.7kg/m²未満を基準とした。
- 結果用紙の見方(InBody BWA)著者:株式会社インボディ・ジャパン媒体:製品資料(資料番号 IM-JPN-BWAM-220401)閲覧日:2026年9月17日URL:https://www.inbody.co.jp/wp-content/uploads/2022/04/InBody-BWA_result.pdf要約:販売元による体成分分析装置InBodyの資料。BIA法は微弱な電流を用い、人体に害はないとしている。一方、心臓ペースメーカーなど植え込み型医療機器を装着している人は測定しないよう警告している。
- Physical Frailty: ICFSR International Clinical Practice Guidelines for Identification and Management著者:Dent E, Morley JE, Cruz-Jentoft AJ, ほか雑誌:J Nutr Health Aging. 2019;23(9):771-787発行日:2019年11月DOI:10.1007/s12603-019-1273-z要約:ICFSRタスクフォースによる国際診療ガイドライン。筋力トレーニングを含む運動を第一選択として強く推奨した。多剤併用の見直し、疲労の原因検索、社会的支援、低栄養時の栄養補給も勧めた。
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書著者:厚生労働省媒体:厚生労働省ウェブサイト発行日:2024年10月11日公表(2025年3月25日最終更新)URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html要約:2025年度から5年間使用される日本人の栄養摂取基準。65歳以上のたんぱく質推奨量は男性60g/日・女性50g/日とされた。目標量はエネルギー比15〜20%で、フレイル予防の観点も考慮されている。
- Evidence-based recommendations for optimal dietary protein intake in older people: a position paper from the PROT-AGE Study Group著者:Bauer J, Biolo G, Cederholm T, ほか雑誌:J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542-559発行日:2013年8月DOI:10.1016/j.jamda.2013.05.021要約:EUGMSが組織した国際研究グループの提言。65歳超に体重1kgあたり1.0〜1.2g/日以上、疾患のある人の多くに1.2〜1.5g/日を推奨した。透析を受けていない重度腎機能低下例は例外とした。
- Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly著者:Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, ほか雑誌:J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667発行日:2018年11月DOI:10.1093/gerona/glx225要約:千葉県柏市の高齢者2,011人の縦断研究。歯数や咀嚼力、滑舌、舌圧など口腔の状態6項目中3項目以上の低下をオーラルフレイルとした。身体的フレイル、サルコペニア、要介護、死亡のリスクは約2.2〜2.4倍だった。
- Nutritional, Physical, Cognitive, and Combination Interventions and Frailty Reversal Among Older Adults: A Randomized Controlled Trial著者:Ng TP, Feng L, Nyunt MSZ, ほか雑誌:Am J Med. 2015;128(11):1225-1236.e1発行日:2015年11月DOI:10.1016/j.amjmed.2015.06.017要約:シンガポールのプレフレイル・フレイル高齢者246人を対象としたランダム化比較試験。栄養、運動、認知トレーニングとその組み合わせを6か月行い、12か月時点の改善率は対照群15%、介入群35.6〜47.8%だった。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介