2026年10月20日

納豆菌の健康効果とは?骨折・心疾患へのデータと知っておくべき遅発型アレルギー
Bacillus subtilis var. natto
「体にいい」はどこまで本当か、研究でわかっていること
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年10月20日
納豆は体にいい。そう聞いて育った方も多いでしょう。
では、何がどう体にいいのか。あらためて聞かれると、少し答えに困るかもしれません。あのネバネバも、たっぷり含まれるビタミンK2も、じつは納豆菌という小さな菌がつくり出したものです。
この記事では、納豆菌について研究でわかっていることと、まだわかっていないことを分けて整理しました。お薬との飲み合わせやアレルギーなど、気をつけたい点もあわせてお伝えします。
Point
この記事のポイント
- 納豆菌は枯草菌の仲間で、ネバネバの成分、ナットウキナーゼ、ビタミンK2をつくります
- 納豆をよく食べる人は、骨折や、心臓・血管の病気で亡くなるリスクが低い傾向にあります。ただし、いずれも観察研究の結果です
- ワルファリンを飲んでいる方は納豆を控える必要があり、食べて半日ほどたってから出るアレルギーにも注意が必要です
納豆菌は、どんな菌?
納豆菌は、枯草菌(こそうきん)と呼ばれる細菌の仲間です。
稲わらから424株の菌を集めて、納豆をつくれるかどうかを調べた研究があります。実際に納豆になったのは、そのうち59株だけでした。納豆をつくれた株を遺伝子で比べると、枯草菌の中でもよく似た一つのグループにまとまっていたそうです[1]。
もうひとつの特徴は、芽胞(がほう)をつくることです[1]。芽胞とは、菌が殻にこもったような休眠状態のこと。これが、あとで触れる「生きて腸に届くのか」という話にかかわります。
納豆菌がつくる3つの成分
大豆を発酵させるあいだに、納豆菌はさまざまな成分をつくります。健康との関係でよく話題になるのは、次の3つです。
| 成分 | どんなものか |
|---|---|
| ポリグルタミン酸 | 糸を引くネバネバの主な成分。納豆アレルギーの原因にもなる[2] |
| ナットウキナーゼ | 血のかたまり(血栓)のもとになるフィブリンを分解する酵素[3] |
| ビタミンK2 | 血液を固める因子や、骨のたんぱく質(オステオカルシン)を働かせるのに欠かせないビタミン[4] |
各研究をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
とくに目を引くのが、ビタミンKの多さです。可食部100gあたり、糸引き納豆で870μg。1パックを30〜50gとすると、約260〜440μgになります。成人の1日の目安量は150μgですから、1パックでそれを大きく超える計算です[5]。
納豆に多いのは、ビタミンK2の一種であるメナキノン-7(MK-7)です[6]。MK-7は血液中にとどまる時間がとても長く、とり続けるとその濃度が高まりやすい性質があります[4]。
ナットウキナーゼで「血液サラサラ」になる?
1987年、納豆の中から、フィブリンを分解する強い酵素が見つかり、ナットウキナーゼと名づけられました[3]。では、口からとって、血栓や動脈硬化まで防げるのでしょうか。
血圧がやや高めの86人がナットウキナーゼのサプリメントを8週間とった試験では、偽薬(プラセボ)と比べて、上の血圧が約5.6mmHg、下の血圧が約2.8mmHg多く下がりました[7]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 未治療で上の血圧が130〜159mmHgの86人、8週間
ところが、もっと長く続けた試験では結果が違いました。心臓病のリスクが低い健康な265人が3年間(中央値)飲み続けても、首の動脈の壁の厚さや硬さの進み方は偽薬と変わらず、血圧や血液検査の値にも差は出なかったのです[8]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 米国の健康な265人、中央値3年
試験管の中でフィブリンを溶かすことと、人の体で病気を防ぐことは、別の話です。今のところ、ナットウキナーゼで血栓や動脈硬化を防げるとはいえず、処方されたお薬の代わりにはなりません。
納豆菌は、生きたまま腸に届く?
口から入った菌にとって、胃は大きな関門です。けれども芽胞の状態なら、胃の厳しい環境を生きたまま通り抜けられるとされています[9]。
それを人で確かめた試験があります。小腸の出口に人工肛門(回腸ストーマ)がある11人に、サプリメント用の枯草菌を飲んでもらい、出てくる内容物を調べました。3時間後から菌が見つかりはじめ、芽胞から目覚めて活動を始めた菌も含まれていました。最終的に、全員で両方が確認されました[9]。
研究の種類ランダム化クロスオーバー試験/対象 回腸ストーマのある成人11人
ただし、これは納豆菌そのものではなく、同じ枯草菌の別の株での結果です。納豆菌が腸内環境を変えて、病気の予防にまでつながるのか。そこはまだ、はっきりしていません。
骨との関係
日本人を対象にした6研究、2,327人分のデータをまとめた2025年の解析では、納豆をよく食べる人は血液中のMK-7が高く、骨のたんぱく質がしっかり働いている状態に近いことがわかりました。骨密度もやや高い傾向です。ただし、骨のたんぱく質や骨密度についての証拠の確かさは「低い〜非常に低い」と評価されています[6]。
研究の種類系統的レビューとメタ解析/対象 日本人を調べた観察研究など6研究、2,327人
骨折そのものを追いかけた研究もあります。閉経後の女性1,417人を中央値15.2年追跡したところ、納豆を週7パック以上食べる人は、週1パック未満の人に比べて、骨粗しょう症による骨折のリスクが約4割低くなっていました。骨密度や喫煙、飲酒、カルシウムの摂取量などを考慮したうえでの結果です。豆腐やほかの大豆製品では、こうした関係はみられませんでした[10]。
研究の種類前向きコホート研究/対象 閉経後の日本人女性1,417人
心臓や血管との関係
岐阜県高山市の35歳以上、約2万9千人を16年間追跡した研究では、納豆をいちばん多く食べていたグループは、いちばん少ないグループに比べて、心臓や血管の病気で亡くなるリスクが25%低くなっていました。脳卒中に限ると32%です。一方、大豆のたんぱく質全体の量と、心臓や血管の病気全体による死亡には、はっきりした関係はみられませんでした[11]。
45〜74歳の約9万3千人を約15年追跡した研究でも、似た傾向が出ています。納豆やみそといった発酵した大豆食品を多くとる人は、亡くなるリスクが約1割低く、納豆は男女とも、心臓や血管の病気による死亡の少なさと関係していました[12]。
研究の種類前向きコホート研究/対象 高山市の約2.9万人、国内各地の約9.3万人
とはいえ、どちらも観察研究です。納豆をよく食べる人は、ほかの生活習慣も違うかもしれません。研究者自身も、結果は慎重に解釈すべきだと述べています[12]。
納豆に注意が必要な方
良い面の多い納豆ですが、次のような方は気をつけてください。
ワルファリンを飲んでいる方
ワルファリンは、ビタミンKの働きを妨げることで、血液を固まりにくくする薬です。納豆にはビタミンKが多いうえ、大腸でビタミンKをつくる納豆菌も含まれています。そのため、薬の効果が弱まってしまいます。影響は数日続くとされ、時間をあけても食べることはできません[13]。
MK-7は、1日50μg以上とると、この種の薬の効き方に影響しうると報告されています[4]。納豆1パックには、その何倍ものビタミンKが含まれています[5]。
クロレラや青汁も、同じ理由で控えるよう指導されています[13]。うっかり食べたときも、自己判断で薬の量を変えず、主治医か薬剤師に相談してください。
食べて半日ほどたってから、体調が変わる方
納豆アレルギーの原因は、主にネバネバのポリグルタミン酸です。食べてすぐではなく、半日ほどたってから、じんましんや息苦しさが出た例が報告されています[2]。時間があくぶん、原因に気づきにくいのです。
患者さんの顔ぶれにも特徴があります。納豆アレルギーの13人を調べた研究では、92.3%にマリンスポーツの趣味があり、84.6%はサーフィンをしていました。一方で、納豆を食べる量とは関係がありませんでした。ポリグルタミン酸はクラゲの毒針にも含まれるため、海で刺されることがきっかけになると考えられています[14]。
抗がん剤治療中など、免疫が大きく落ちている方
抗がん剤治療中に消化管に穴があいた方で、食べた納豆と同じ納豆菌が血液から見つかった例が報告されています。報告した医師らは、高齢の方や免疫が落ちている方では注意が必要だとしています[15]。治療中の食事は、主治医の指示に従ってください。
よくあるご質問
ワルファリンを飲んでいます。時間をあければ、少しなら食べてもいいですか?
影響は数日続くとされ、時間をあけても食べることはできません。迷ったときは主治医か薬剤師にご相談ください。
ナットウキナーゼのサプリメントで、血栓は防げますか?
3年間続けた試験でも、動脈硬化の進み方は偽薬と変わりませんでした。処方されたお薬の代わりにはなりません。
サーフィンをしています。納豆は避けたほうがいいですか?
研究でわかったのは「納豆アレルギーの方にサーファーが多い」ことで、サーファーの多くが発症するという意味ではありません。食べて半日ほどたってから、じんましんなどが出たことがある方はご相談ください。
当院でのサポート
当院にはアレルギー専門医が在籍しています。納豆を食べて時間がたってから、じんましんや息苦しさが出たことがある方は、経過をうかがいながら原因を一緒に探ります。
管理栄養士4名による食事相談も行っています。ワルファリン服用中の食事に迷っている方や、骨や血管のために食生活を見直したい方も、お気軽にご相談ください。腸内細菌のバランスが気になる方には、自費診療で腸内フローラ検査(マイキンソー プロ)もご用意しています。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
参考文献
- Phylogenetic analysis of Bacillus subtilis strains applicable to natto (fermented soybean) production著者:Kubo Y, Rooney AP, Tsukakoshi Y, ほか雑誌:Appl Environ Microbiol. 2011;77(18):6463-6469発行日:2011年9月DOI:10.1128/AEM.00448-11要約:稲わらから分離した芽胞形成菌424株を調べ、納豆をつくれたのは59株だった。納豆をつくれる株は枯草菌の中で遺伝的にまとまった一群をなし、ビオチンを自分で合成できない性質と強く結びついていた。
- Late-onset anaphylaxis due to poly(γ-glutamic acid) in the soup of commercial cold Chinese noodles in a patient with allergy to fermented soybeans (natto)著者:Inomata N, Chin K, Nagashima M, Ikezawa Z雑誌:Allergol Int. 2011;60(3):393-396発行日:2011年DOI:10.2332/allergolint.10-CR-0267要約:納豆を食べた半日後にアナフィラキシーを繰り返していた38歳男性が、冷やし中華のスープで同様の症状を起こした症例報告。皮膚テストで、納豆のネバネバの主成分ポリグルタミン酸が原因と判明した。
- A novel fibrinolytic enzyme (nattokinase) in the vegetable cheese Natto; a typical and popular soybean food in the Japanese diet著者:Sumi H, Hamada H, Tsushima H, ほか雑誌:Experientia. 1987;43(10):1110-1111発行日:1987年10月DOI:10.1007/BF01956052要約:納豆に強い線溶活性(フィブリンを溶かす働き)があることを示し、その酵素をナットウキナーゼと名づけた最初の報告。活性は納豆1gあたり約40CU、分子量は約2万で、フィブリンを直接分解した。
- Vitamin K-containing dietary supplements: comparison of synthetic vitamin K1 and natto-derived menaquinone-7著者:Schurgers LJ, Teunissen KJ, Hamulyák K, ほか雑誌:Blood. 2007;109(8):3279-3283発行日:2007年4月DOI:10.1182/blood-2006-08-040709要約:健康な成人でビタミンK1と納豆由来のMK-7を比較した。MK-7は半減期が非常に長く、とり続けると血中濃度が高まり、オステオカルシンをより十分に活性化した。1日50μg以上で抗凝固薬に影響しうるとした。
- ビタミンKの働きと1日の摂取量著者:公益財団法人長寿科学振興財団媒体:健康長寿ネット(ウェブサイト)更新日:2025年2月26日URL:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-k.html要約:日本人の食事摂取基準(2025年版)にもとづき、成人のビタミンKの目安量を男女とも1日150μgと解説。可食部100gあたりの含有量は糸引き納豆870μg、挽きわり納豆930μgで、1パックは30〜50gとしている。
- Habitual natto intake elevates serum MK-7 levels, enhances osteocalcin carboxylation, and supports bone density: a meta-analysis of Japanese evidence著者:Wen Z, Zhen M, Wang J, ほか雑誌:Front Nutr. 2025;12:1713726発行日:2025年11月DOI:10.3389/fnut.2025.1713726要約:日本人を対象とした観察研究など6研究、2,327人のメタ解析。納豆をよく食べる人は血中MK-7が高く、オステオカルシンの活性化と骨密度にも良好な傾向があった。証拠の確かさは中等度から非常に低いと評価された。
- Effects of nattokinase on blood pressure: a randomized, controlled trial著者:Kim JY, Gum SN, Paik JK, ほか雑誌:Hypertens Res. 2008;31(8):1583-1588発行日:2008年8月DOI:10.1291/hypres.31.1583要約:未治療で収縮期血圧130〜159mmHgの86人を対象としたランダム化比較試験。ナットウキナーゼを8週間とった群では、偽薬群に比べ収縮期血圧が5.55mmHg、拡張期血圧が2.84mmHg多く下がった。
- Nattokinase atherothrombotic prevention study: A randomized controlled trial著者:Hodis HN, Mack WJ, Meiselman HJ, ほか雑誌:Clin Hemorheol Microcirc. 2021;78(4):339-353発行日:2021年(オンライン公開 2021年4月)DOI:10.3233/CH-211147要約:心血管リスクの低い健康な265人のランダム化比較試験。ナットウキナーゼ1日2,000FUを中央値3年とっても、頸動脈の壁の厚さや硬さの進行は偽薬と差がなく、血圧や血液検査の値にも影響はなかった。
- Presence and Germination of the Probiotic Bacillus subtilis DE111® in the Human Small Intestinal Tract: A Randomized, Crossover, Double-Blind, and Placebo-Controlled Study著者:Colom J, Freitas D, Simon A, ほか雑誌:Front Microbiol. 2021;12:715863発行日:2021年8月DOI:10.3389/fmicb.2021.715863要約:回腸ストーマのある成人11人の試験。枯草菌DE111株の芽胞を飲むと3時間後から小腸末端で検出され、発芽して活動する菌も全員で確認された。芽胞が胃を生きて通過し、小腸で発芽することを示した。
- Natto Intake is Inversely Associated with Osteoporotic Fracture Risk in Postmenopausal Japanese Women著者:Kojima A, Ikehara S, Kamiya K, ほか雑誌:J Nutr. 2020;150(3):599-605発行日:2020年3月DOI:10.1093/jn/nxz292要約:閉経後の日本人女性1,417人を中央値15.2年追跡したコホート研究。納豆を週7パック以上食べる人は週1パック未満の人に比べ、骨密度などを調整しても骨粗しょう症による骨折のリスクが0.56倍だった。
- Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study著者:Nagata C, Wada K, Tamura T, ほか雑誌:Am J Clin Nutr. 2017;105(2):426-431発行日:2017年2月DOI:10.3945/ajcn.116.137281要約:岐阜県高山市の35歳以上約2.9万人を16年追跡したコホート研究。納豆摂取が最も多い群は最も少ない群に比べ、心血管疾患死亡が0.75倍、脳卒中死亡が0.68倍だった。大豆たんぱく質全体では心血管疾患死亡と関連しなかった。
- Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study著者:Katagiri R, Sawada N, Goto A, ほか雑誌:BMJ. 2020;368:m34発行日:2020年1月DOI:10.1136/bmj.m34要約:45〜74歳の約9.3万人を14.8年追跡したJPHC研究。大豆製品全体では死亡と関連しなかったが、発酵性大豆食品を多くとる群は死亡リスクが約1割低く、納豆は男女とも心血管疾患による死亡の低さと関連した。
- Q3 ワルファリンを飲んでいますが、納豆、クロレラ、青汁などの摂取を避けるように指導されました。なぜ、食べてはいけないのですか?著者:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)媒体:PMDAウェブサイト「くすりQ&A」閲覧日:2026年9月27日URL:https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0016.html要約:納豆にはビタミンKと、大腸でビタミンKをつくる納豆菌が含まれ、ワルファリンの作用を弱めると解説。影響は数日続くため、間隔をあけても食べられないとし、クロレラや青汁も控えるよう示している。
- Surfing as a risk factor for sensitization to poly(γ-glutamic acid) in fermented soybeans, natto, allergy著者:Inomata N, Miyakawa M, Aihara M雑誌:Allergol Int. 2018;67(3):341-346発行日:2018年7月DOI:10.1016/j.alit.2017.11.001要約:食物アレルギー患者140人の質問票調査。納豆アレルギーの13人は全員がポリグルタミン酸に感作されており、92.3%にマリンスポーツ、84.6%にサーフィンの趣味があった。納豆の摂取量とは関連がなかった。
- Bacillus subtilis Bacteremia from Gastrointestinal Perforation after Natto Ingestion, Japan著者:Hashimoto T, Yahiro T, Khan S, ほか雑誌:Emerg Infect Dis. 2023;29(10):2171-2172発行日:2023年10月DOI:10.3201/eid2910.230084要約:抗がん剤治療中に消化管穿孔を起こした65歳男性で、食べた納豆と遺伝的に同じ納豆菌が血液から検出された症例報告。高齢者や免疫が低下した人では、納豆の摂取による菌血症に注意が必要だと指摘した。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)