藻を分解する腸内細菌とは?日本人のおなかにいる「海から来た遺伝子」の話|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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藻を分解する腸内細菌とは?日本人のおなかにいる「海から来た遺伝子」の話

藻を分解する腸内細菌とは?日本人のおなかにいる「海から来た遺伝子」の話|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年11月03日

藻を分解する腸内細菌とは?日本人のおなかにいる「海から来た遺伝子」の話

海藻を分解する腸内細菌は日本人の約9割に!「海から来た遺伝子」の秘密と健康への影響

Seaweed and Gut Microbiota

日本人のおなかにいる「海から来た遺伝子」の話

執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年11月3日

海苔、ワカメ、昆布、ひじき。日本の食卓には、ごく当たり前に海藻が並びます。

ところが、海藻に含まれる食物繊維は、人の体の力だけでは分解できません。その役目を担っているのは、腸にすむ細菌たちです。しかも日本人の腸内細菌の中には、もともと海の細菌が持っていた遺伝子を受け継いだものがいることが、わかってきました。

この記事では、海藻を分解する腸内細菌について、研究でわかっていることと、まだわかっていないことを分けて整理します。

Point

この記事のポイント

  1. 海藻の食物繊維は陸の植物とつくりが違い、分解には専用の酵素を持つ腸内細菌が必要です
  2. その遺伝子は海の細菌から腸内細菌へ移ったと考えられ、日本人の約9割が持つ一方、欧米では少数です
  3. 健康への影響は研究の途中です。昆布などのとりすぎによるヨウ素の過剰にも気をつけましょう

参考文献

  1. Diverse events have transferred genes for edible seaweed digestion from marine to human gut bacteria著者:Pudlo NA, Pereira GV, Parnami J, ほか雑誌:Cell Host Microbe. 2022;30(3):314-328.e11発行日:2022年3月DOI:10.1016/j.chom.2022.02.001要約:海藻の多糖を分解する能力が、これまで考えられていたより広く人の腸内細菌に存在することを示した。遺伝子はバクテロイデスの複数の菌種やフィルミクテス門の菌にもみられ、海から腸への遺伝子の移動は何度も別々に起きていた。
  2. Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota著者:Hehemann JH, Correc G, Barbeyron T, ほか雑誌:Nature. 2010;464(7290):908-912発行日:2010年4月DOI:10.1038/nature08937要約:海の細菌ゾベリアから、海苔の多糖ポルフィランを分解する酵素を初めて同定した。同じ遺伝子は日本人由来の腸内細菌バクテロイデス・プレビウスに移っており、日本人の腸内細菌データでは見つかったが、北米の人では見つからなかった。
  3. Prebiotics from Seaweeds: An Ocean of Opportunity?著者:Cherry P, Yadav S, Strain CR, ほか雑誌:Mar Drugs. 2019;17(6):327発行日:2019年6月DOI:10.3390/md17060327要約:海藻の多糖やポリフェノールなどを腸内細菌がどう利用するかをまとめた総説。褐藻にはアルギン酸など、紅藻には寒天やポルフィランなどが含まれると整理し、プレバイオティクスとしての効果の確認には人での試験が必要とした。
  4. The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness著者:Nishijima S, Suda W, Oshima K, ほか雑誌:DNA Res. 2016;23(2):125-133発行日:2016年(オンライン公開 2016年3月)DOI:10.1093/dnares/dsw002要約:日本人106人の腸内細菌の遺伝子を解析し、ほかの11か国のデータと比較した研究。日本人はビフィズス菌が多く、糖の分解・利用にかかわる遺伝子が多い一方、メタンをつくる遺伝子は少ないなど、独自の特徴を示した。
  5. The Japanese gut microbiome: ecology, uniqueness, and impact on health and disease著者:Nishijima S, Hattori M, Nagata N雑誌:Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2026;102(2):82-103発行日:2026年2月DOI:10.2183/pjab.102.006要約:日本人の腸内細菌研究をまとめた総説。日本人を含む37か国、約3万2千件の腸内細菌データを比較した。海藻の多糖を分解する酵素の遺伝子を持つ人は日本人で約9割にのぼり、ほかの地域ではまれだった。
  6. Characterization of the first alginolytic operons in a marine bacterium: from their emergence in marine Flavobacteriia to their independent transfers to marine Proteobacteria and human gut Bacteroides著者:Thomas F, Barbeyron T, Tonon T, ほか雑誌:Environ Microbiol. 2012;14(9):2379-2394発行日:2012年9月DOI:10.1111/j.1462-2920.2012.02751.x要約:海の細菌ゾベリアで、褐藻の主な多糖アルギン酸を分解する遺伝子群を初めて解析した。この遺伝子群は海の細菌で生まれ、海洋のプロテオバクテリアと日本人の腸内のバクテロイデスへ、それぞれ別々に移ったと示した。
  7. An exclusive metabolic niche enables strain engraftment in the gut microbiota著者:Shepherd ES, DeLoache WC, Pruss KM, ほか雑誌:Nature. 2018;557(7705):434-438発行日:2018年5月DOI:10.1038/s41586-018-0092-4要約:マウスに海苔の多糖ポルフィランを与えると、それを分解する遺伝子群を持つバクテロイデスの株が、もとの腸内細菌の違いにかかわらず安定して定着した。与える量によって、腸内での菌の数を調節できることも示した。
  8. Seaweed intake and risk of cardiovascular disease: the Japan Public Health Center-based Prospective (JPHC) Study著者:Murai U, Yamagishi K, Sata M, ほか雑誌:Am J Clin Nutr. 2019;110(6):1449-1455発行日:2019年12月DOI:10.1093/ajcn/nqz231要約:40〜69歳の日本人男女約8.6万人を追跡したJPHC研究。海藻をほぼ毎日食べる人は、ほとんど食べない人に比べ、虚血性心疾患のリスクが男性0.76倍、女性0.56倍だった。脳卒中との関連はみられなかった。
  9. Seaweed Intake and Risk of Cardiovascular Disease: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS)著者:Chichibu H, Yamagishi K, Kishida R, ほか雑誌:J Atheroscler Thromb. 2021;28(12):1298-1306発行日:2021年12月(オンライン公開 2021年2月)DOI:10.5551/jat.61390要約:国内4地域の40〜79歳、6,169人を追跡したコホート研究。海藻を最も多く食べる男性は、食べない男性に比べて脳卒中のリスクが0.63倍、脳梗塞が0.59倍だった。女性や、心臓の病気との関連はみられなかった。
  10. Risks and benefits of consuming edible seaweeds著者:Cherry P, O’Hara C, Magee PJ, ほか雑誌:Nutr Rev. 2019;77(5):307-329発行日:2019年5月DOI:10.1093/nutrit/nuy066要約:食用海藻の栄養成分と、人での健康効果の研究を整理した総説。機能性食品としての可能性を示す一方、ヨウ素やヒ素のとりすぎによる害にも注意が必要とした。効果を確かめるには、人での介入研究がさらに必要だとまとめている。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介(日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医)

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