2026年11月04日

Wearables and Sleep Apnea
スマートウォッチの睡眠時無呼吸の通知
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年11月4日
睡眠中の呼吸の状態を、腕時計や指輪で測れる時代になりました。Samsungは、2026年10月28日に、スマートウォッチとスマートリングの睡眠時無呼吸に関する機能について、韓国の規制当局である食品医薬品安全処(MFDS)の認可を取得したと発表しました。これまでは、「兆候があるかどうか」を知らせるだけでしたが、今回は、睡眠中の呼吸の乱れの頻度を、「軽微」「ときどき」「頻繁」の3段階で示す形になり、韓国では、2026年11月から提供される予定です[1]。
当院の外来でも、「時計に、睡眠中の呼吸の乱れが出たのですが」というご相談が、少しずつ増えてきました。一方で、時計が何も知らせてこないので、大丈夫と考えている方も多いと思います。実は、この二つは、裏返しの関係にあり、同じひとつの理解で解けます。そこで、この記事では、ウェアラブル機器の通知を、どこまで信じてよいのか、そして、通知が出たとき、出なかったときの対応を整理します。
Point
この記事のポイント
- スマートウォッチの通知は、睡眠時無呼吸の可能性に気づくための道具で、病気を診断する道具ではありません
- 研究では、本当に無呼吸がある方を見逃しにくい一方、無呼吸がない方の約3人に1人にも「あり」と出ていました
- 通知が出なくても、いびきや日中の眠気などの症状があれば、症状を優先して受診することをおすすめします
ウェアラブルでわかるようになったこと
今回、韓国で認可された機能は、睡眠中の呼吸の乱れが、1時間あたり何回起きているかを推定するものです。使われているのは、皮膚に光を当てて血液の流れを見る光電容積脈波(PPG)、腕の動きをとらえる加速度計、そして、PPGから推定した血中酸素飽和度(SpO2)の、3つのデータで、これらを、AIのアルゴリズムで解析します[1]。
ただし、測定には条件があります。10日以内に2回、それぞれ5時間以上の睡眠を記録する必要があり、対象は、18歳以上で、睡眠時無呼吸と診断されたことがない方です。そのため、すでに診断を受けている方や、治療中の方は、対象外です。なお、2026年10月29日の時点で、日本での提供開始日は、発表されていません[1]。そのため、日本でお使いの機器に、同じ機能が入っているとは限りません。まずは、ご自身の端末で、何が表示されているかをご確認ください。
こうした機能は、「睡眠時無呼吸の可能性に気づくための道具」として認可されたもので、病気を診断する道具として認可されたものではありません。
時計の判定が診断にならない理由
機器の精度については、研究結果が報告されています。米国のスタンフォード大学のグループが、睡眠検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と、スマートウォッチの推定値を比較した研究が、2026年に、睡眠医学の専門誌に報告されました。対象は、22歳以上で、すでに中等症以上の睡眠時無呼吸と診断されている方か、問診票で可能性が高いと判定された方で、152人が登録し、147人が検査を終えています[2][3]。
研究の種類診断精度の研究/対象 中等症以上の睡眠時無呼吸の可能性が高い22歳以上の152人(完了147人)
この研究では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数(AHI)が15回以上の、中等症以上の睡眠時無呼吸を見つける力を評価し、初期設定の基準で、感度94.1%、特異度66.7%という結果でした[2]。
| 指標 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|
| 感度 | 94.1% | 本当に中等症以上の無呼吸がある方を、見逃しにくい |
| 特異度 | 66.7% | 中等症以上の無呼吸がない方の、約3人に1人にも「あり」と出る |
スタンフォード大学の研究の、初期設定の基準での結果をもとに作成[2]。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
つまり、通知が出たからといって、睡眠時無呼吸と決まったわけではありません。通知は、検査を受けるかどうかを考える、入口だとお考えください。
また、この研究の参加者は、もともと無呼吸の可能性が高い方を選んで集めた集団で、一般の方を無作為に集めたわけではありません。さらに、研究は、メーカーが資金を提供しており、データや判定のアルゴリズムは公開されていません[3]。そのため、この数字を、そのまま一般の方すべてに当てはめることはできません。
通知が出たときの次の一歩
通知が出た方には、まず、医療機関での問診をおすすめします。外来では、いびきの状況、ご家族から、呼吸が止まっていると言われたことがあるか、日中の眠気の程度、朝の頭痛、夜間に目が覚める回数、体重の変化、血圧の経過などをお伺いします。また、時計に表示された数値や記録も、そのままお持ちください。参考になります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 問診 | いびき、日中の眠気、朝の頭痛、血圧の経過などを確認する。ウェアラブルの記録も参考にする |
| 2. 簡易検査 | ご自宅で一晩、指と鼻にセンサーを付けて測定する。入院は不要 |
| 3. 終夜睡眠ポリグラフ検査 | 簡易検査で判断が難しい場合などに、脳波を含めた詳しい検査を行う |
| 4. 治療の相談 | 重症度と症状に応じて、CPAP療法、マウスピース、減量、生活習慣の見直しなどを検討する |
スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
重症度は、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数、すなわち、AHIで評価します。そして、2026年6月の診療報酬改定で、CPAP療法を保険で行う際の、AHIの基準が引き下げられました。終夜睡眠ポリグラフ検査では、20回以上から15回以上に、簡易検査では、40回以上から30回以上に見直されています[4]。そのため、以前に検査を受けて、「基準に届かないので対象になりません」と説明された方でも、現在は、対象になる場合があります。以前に対象外と言われた方は、そのことも含めて、ご相談ください。
通知がなくても受診したほうがよい症状
ここが、冒頭で申し上げた、「裏返しの誤解」のもう一方です。機器が何も知らせてこなかったことは、無呼吸がないことの証明にはなりません。機器が機能に対応していない場合もありますし、測定条件を満たしていない夜は、そもそも判定されません。そのため、症状がある場合は、症状を優先してお考えください。
次のような状態が続いている方は、通知の有無にかかわらず、一度ご相談いただくことをおすすめします。
- ご家族から、いびきが大きいと言われる
- ご家族から、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 十分に眠ったはずなのに、日中に強い眠気がある
- 朝起きたときに、頭痛がある、口が渇いている
- 夜中に何度も目が覚める、トイレに起きる回数が増えた
- 薬を飲んでいても、血圧が下がりにくい
特に、治療しても下がりにくい高血圧は、背景に、睡眠時無呼吸が隠れていることがあります。そして、放置すると、高血圧だけでなく、心筋梗塞や脳卒中の危険が高まることが知られています。当院は内科ですので、血圧や血糖の管理とあわせて、睡眠の問題もお伺いしています。
CPAP療法を続けている方へ
すでにCPAP療法を受けている方から、時計の数値が良くなったので、CPAPをやめてもよいかと、お尋ねいただくことがあります。これについては、はっきりお答えします。ウェアラブル機器の表示は、治療を中止する判断の材料にはなりません。
その理由は、2つあります。1つは、先ほど述べたとおり、機器の数値が推定値であることです。そして、今回の韓国の機能も、すでに診断を受けている方は対象外です[1]。もう1つは、CPAP療法が、装置を使っている間だけ、気道を開いて呼吸を保つ治療だからです。つまり、CPAPを使っている夜に測った数値が良いのは、治療がきちんと効いている証拠であって、無呼吸そのものが治ったことを示すものではありません。
CPAP療法を続けるか、やめるかは、装置に記録された使用状況のデータと、症状、血圧などの経過を合わせて判断します。そのため、自己判断で中止しないでください。使いにくさや不快感がある場合は、我慢せずにご相談いただければ、マスクの種類や圧の設定を見直すことができます。
睡眠の悩みがあっても多くが未診断
国内の状況を示す調査結果も、同じ時期に公表されています。2026年10月27日に公表された、全国の15歳以上の550人を対象とした調査では、睡眠の悩みを持つ方のうち、73.7%が、「診断を受けたことはない」と回答しました。また、睡眠の悩みへの対策として、医療機関に相談した方は12.0%にとどまり、43.5%は、「特に何もしていない」と答えています。さらに、薬に頼らない治療法について、「知らない」と答えた方が、91.1%でした[5]。
ただし、これは、自己申告による調査で、国内に、どれくらいの患者さんがいるかを推定する数字としては使えません。とはいえ、悩みを自覚していても、その多くが診断や治療につながっていないという現状は、外来での実感とよく重なります。いびきや日中の眠気は、生活の中で、当たり前のこととして受け入れられやすく、病気として相談しにくいのだと思います。
その点で、ウェアラブル機器の通知は、受診のきっかけを与えてくれます。通知が出たことで、受診につながるなら、それは機器の大きな長所です。ただし、通知は診断ではなく、通知がないことは、安心の根拠でもありません。私たちにできることは、気づきのきっかけを検査につなげ、検査の結果に応じて治療を選び、続けられるように調整していくことです。
よくあるご質問
時計に「頻繁」と出ました。睡眠時無呼吸ですか?
そうとは限りません。研究では、中等症以上の無呼吸がない方の約3人に1人にも、「あり」と出ていました[2]。そのため、通知は検査を受けるきっかけと考えて、まずは問診と簡易検査で確かめることをおすすめします。
時計に何も出なければ、検査は不要ですか?
いいえ、通知がないことは、無呼吸がないことの証明にはなりません。測定条件を満たしていない夜は判定されず[1]、機器が機能に対応していない場合もあります。いびきや日中の眠気などの症状があれば、受診をおすすめします。
以前、CPAPの対象外と言われました。もう一度検査を受けたほうがよいですか?
2026年6月の診療報酬改定で、CPAPを保険で行う際のAHIの基準が引き下げられたため[4]、現在は対象になる場合があります。症状が続いている方は、以前の検査結果をお持ちのうえで、ご相談ください。
当院でのサポート
当院では、睡眠時無呼吸症候群の検査を、ご自宅で受けていただけます。簡易検査だけでなく、脳波を含む終夜睡眠ポリグラフ検査も、在宅で行っており、入院は必要ありません。そして、中等症以上の方にはCPAP療法を行い、現在、160名を超える方が、当院で治療を続けています。
また、CPAPの2回目以降の受診は、オンライン診療も選べます。さらに、体重が関係している方には、4名の管理栄養士が、食事面からサポートします。気になる通知が出た方も、通知は出ていないけれど症状が続いている方も、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
次回は、「飲むタイプのやせ薬」について、日本人を対象とした試験の結果をもとに解説します。
参考文献
- サムスン、睡眠時無呼吸機能を強化 Galaxy RingとWatch向けに韓国で認可著者:財経新聞媒体:財経新聞(ニュースサイト)発行日:2026年10月30日URL:https://www.zaikei.co.jp/article/20261030/875611.html要約:Samsungが、Galaxy WatchとGalaxy Ringの睡眠時無呼吸機能について、韓国MFDSの認可取得を2026年10月28日に発表した。PPG、加速度計、SpO2をAIで解析し、呼吸の乱れの頻度を3段階で示す。10日以内に2回、各5時間以上の睡眠が必要で、対象は18歳以上の未診断者。日本での提供開始日は未発表。
- 高リスク閉塞性睡眠時無呼吸、スマートウォッチが高精度に検出著者:ケアネット編集部媒体:ケアネット(医療ニュース)発行日:2026年9月7日URL:https://www.carenet.com/news/general/carenet/63532要約:スタンフォード大学のAlaviらがJ Clin Sleep Med誌(2026年8月27日)に報告した研究の紹介。中等症以上の睡眠時無呼吸の可能性が高い152人(完了147人)で、スマートウォッチの推定値をPSGと比べ、AHI15以上の検出は初期設定の基準で感度94.1%、特異度66.7%だった。
- Galaxy Watchが中等度以上の睡眠時無呼吸を94%の感度で検出|スタンフォード大の152人研究著者:Smart Watch Life編集部媒体:Smart Watch Life(ニュースサイト)発行日:2026年8月29日(更新日:2026年10月14日)URL:https://www.smartwatchlife.jp/79225/要約:同じ研究の解説記事。研究はSamsung Electronicsが資金を提供し、対象は無作為に集めた集団ではなく、データと判定アルゴリズムは非公開で、第三者による再検証が難しいといった限界を紹介した。
- 2026年度(令和8年度)診療報酬改定|在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し著者:クレドメディカル媒体:クレドメディカル(コラム)発行日:2026年3月24日URL:https://www.credo-m.co.jp/column/detail/hosyu/25383/要約:2026年度の診療報酬改定で、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の対象となるAHIの基準が、20以上から15以上に、例外となる40以上の基準が30以上に見直されたことなどを解説した。
- 「眠りが浅い」「寝つきが悪い」睡眠の悩み、73.7%が診断を受けず著者:マイナビニュース媒体:マイナビニュース(ニュースサイト)発行日:2026年10月29日URL:https://news.mynavi.jp/article/20261029-5206314/要約:全国の15歳以上の550人を対象とした調査(2026年10月27日公表)の紹介。睡眠の悩みを持つ人の73.7%が診断を受けたことがなく、対策として医療機関に相談した人は12.0%、特に何もしていない人は43.5%、薬に頼らない治療法を知らない人は91.1%だった。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介