2026年11月01日

Non-atopic Asthma
アレルギー検査が陰性でも起こる、非アトピー型喘息
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年11月1日
「喘息と言われたのに、アレルギーの血液検査はすべて陰性だった」。そんな経験をお持ちの方もいるかもしれません。日本で喘息の可能性がある人は約1,000万人にのぼるとされ、喘息はとても身近な病気です[1]。
喘息には、ダニや花粉などのアレルゲンが関わる「アトピー型」のほかに、アレルゲンへの感作(アレルギーを起こす準備ができた状態)が確認できない「非アトピー型」があります[2]。この記事では、非アトピー型喘息の特徴と、検査や治療の考え方を整理します。
Point
この記事のポイント
- 非アトピー型喘息は、ダニや花粉などへの感作が確認できない喘息で、喘息の1〜3割を占めます
- アトピー型より発症が遅く、女性に多く、重症になりやすい傾向があります
- 治療の基本は吸入ステロイドで、炎症のタイプや合併する病気に合わせて治療を選びます
非アトピー型喘息とは
非アトピー型喘息は、皮膚テストや血液検査で、季節性・通年性のアレルゲンに対する感作が確認できない喘息です。喘息の人の10〜33%を占め、アトピー型より発症が遅く、女性に多いとされています。重症になりやすく、標準的な治療が効きにくいこともあります[2]。
| 項目 | アトピー型 | 非アトピー型 |
|---|---|---|
| アレルゲンへの感作 | あり(ダニ、花粉、カビ、ペットなど) | 確認できない |
| 多い年代 | 子どもの喘息の多く、大人の喘息の多数 | 大人になってからの発症が多い |
| 傾向 | 原因となるアレルゲンを減らす対策が役立つ | 女性に多く、重症になりやすい |
| アレルゲン免疫療法 | 対象になりうる(ダニなど) | 対象にならない |
海外の総説と日本の喘息ガイドラインをもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
アレルゲンは、子どもの喘息の多くと大人の喘息の多数に関わっており、最も多いのはダニです。日本では、春のスギ・ヒノキ花粉も喘息に大きく関わります。一方で、アレルゲンが関わらなくても、気道では好酸球が中心の「2型炎症」が起こることがあります。気道の細胞から出るTSLPやIL-33という物質が、ILC2とよばれる免疫細胞を活性化して炎症を起こすしくみです。好酸球ではなく好中球が主体の炎症もあります。IL-17という物質を介して好中球が集まるタイプで、ステロイドが効きにくい傾向があります[1]。
検査と診断
喘息の診断は、アトピー型でも非アトピー型でも同じで、症状の経過、呼吸機能の変動、呼気一酸化窒素(FeNO)などを組み合わせて行います。アトピー素因は診断を支える所見の一つですが、必須ではありません[3]。
アトピー型か非アトピー型かは、吸入アレルゲンに対する血液検査(特異的IgE抗体)で調べます。日本喘息学会の実践ガイドラインは、測る項目としてダニ、スギなどの花粉、アスペルギルスなどのカビ、イヌやネコなどの動物を挙げています[1]。
あわせて、血液中の好酸球数やFeNOで2型炎症の有無を確かめます。好酸球数は150/μL以上で2型炎症が示唆され、300/μL以上なら可能性が高いとされます。ただし1回の測定では不十分なことがあり、複数回の確認が勧められています[1]。
好酸球数が400/μL以上では悪化のリスクが高まり、好酸球数300/μL以上とFeNO 25ppb以上が重なると、悪化をくり返しやすいとされています[1]。
一緒に確認したい病気
喘息の治療では、慢性副鼻腔炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、解熱鎮痛薬で悪化する喘息(アスピリン喘息)などの合併を考える必要があります[3]。においが分かりにくいなど、通年性の副鼻腔炎が疑われる場合は、副鼻腔のCTや耳鼻科での評価が勧められています[1]。
肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症も悪化に関わるため、減量、睡眠時無呼吸の評価と治療、胃酸をおさえる薬や胃カメラによる確認が、それぞれ勧められています[1]。
痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)は喘息を悪化させることがあります。これまでに痛み止めで症状が出たことがないかを医師に伝え、使ったことがない方も、自己判断での使用は避けましょう[1]。
治療の考え方
治療の基本は、アトピー型かどうかにかかわらず、吸入ステロイドを中心とした長期管理です[3]。日本喘息学会の実践ガイドラインは、喘息と診断したら、中用量の吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬の配合薬から始めることを勧めています[1]。
アトピー型では、原因となるアレルゲンを減らす対策や、ダニなどのアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)も選択肢になります[3][1]。非アトピー型ではこれらは対象にならないため、炎症のタイプや合併症に合わせて治療を考えます。
重症の場合の注射薬(生物学的製剤)
吸入薬を十分に使っても症状がおさまらない重症の喘息では、生物学的製剤が検討されます。抗IgE抗体は、通年性の吸入アレルゲンに感作されている人が対象のため、非アトピー型では使えません。一方、抗IL-5抗体や抗IL-4受容体α鎖抗体は好酸球数やFeNOなどの値に応じて、抗TSLP抗体はこれらの値にかかわらず選べます[1]。
好中球が主体のタイプには、少量のマクロライド系抗菌薬が検討されることもありますが、喘息に対しては保険適用外です[1]。
治療のゴールは「臨床的寛解」
日本喘息学会の実践ガイドラインは、症状をなくすことに加えて、1年間にわたり喘息コントロールテスト(ACT)が23点以上で、悪化がなく、飲み薬のステロイドを常用していない状態を「臨床的寛解」とよび、治療の目標に掲げています。中用量の配合薬でも十分にコントロールできない場合は、合併症や悪化要因を見直し、専門医への紹介を検討します[1]。
吸入薬は、正しく吸えてはじめて効果が出ます。舌を下げてのどの奥を開き、「ホー」と言うときの口の形で吸う「ホー吸入法」も勧められています[1]。吸入ステロイドのあとは、口の中のカンジダや声がれを防ぐため、うがいをしましょう[3]。
こんな方はご相談ください
- 大人になってから、咳や息苦しさ、ゼーゼーする症状が出るようになった
- アレルギー検査は陰性だったが、喘息のような症状が続いている
- 鼻づまりが続き、においが分かりにくい
- 痛み止めを飲んだあとに、息苦しくなったことがある
- 吸入薬を続けていても、症状がおさまらない
受診の際は、これまでのアレルギー検査の結果や、使っている薬をお持ちください。
よくあるご質問
アレルギー検査が陰性なら、喘息ではないのですか?
いいえ。喘息の1〜3割は、アレルゲンへの感作が確認できない非アトピー型です。診断は、症状の経過や呼吸機能、FeNOなどを組み合わせて行います。
子どものころは喘息ではありませんでした。大人になってから発症することはありますか?
あります。非アトピー型の喘息は、アトピー型より発症が遅い傾向があります。
アトピー型より治りにくいのですか?
重症になりやすく、標準的な治療が効きにくいこともあるとされています。炎症のタイプや合併する病気を確かめて、一人ひとりに合った治療を選ぶことが大切です。
当院でのサポート
当院では、症状の経過をうかがったうえで、FeNO検査や血液検査(好酸球数、吸入アレルゲンに対する特異的IgE抗体)で喘息のタイプを確認し、治療をご提案します。
胃食道逆流症に対する胃カメラ、睡眠時無呼吸症候群の検査とCPAP治療など、喘息の悪化に関わる病気の診療にも対応しています。生物学的製剤が必要な重症の方は、専門の医療機関と連携して治療を進めます。当院の喘息の診療については、気管支喘息のページもご覧ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
Related
あわせて読みたい記事
参考文献
- Practical Guidelines for Asthma Management (PGAM): Digest edition著者:Tamaoki J, Nagase H, Sano H, ほか雑誌:Respir Investig. 2025;63(3):405-421発行日:2025年5月DOI:10.1016/j.resinv.2025.03.009要約:日本喘息学会による実践ガイドラインの要約。2型炎症はアレルゲン感作を伴わない場合もあり、気道上皮由来のTSLPやIL-33がILC2を活性化して炎症を起こすとした。生物学的製剤の選択基準を示し、抗IgE抗体は通年性吸入アレルゲンに感作された重症喘息が対象とした。
- Asthma phenotypes: nonallergic (intrinsic) asthma著者:Peters SP雑誌:J Allergy Clin Immunol Pract. 2014;2(6):650-652発行日:2014年11月DOI:10.1016/j.jaip.2014.09.006要約:非アレルギー性(内因性)喘息の総説。皮膚テストや特異的IgE検査で季節性・通年性アレルゲンへの感作が確認できない喘息と定義し、喘息の10〜33%を占め、アレルギー性より発症が遅く女性に多いとした。重症例が多く、標準治療が効きにくいこともあるとした。
- Executive summary: Japanese guidelines for adult asthma (JGL) 2021著者:Niimi A, Fukunaga K, Taniguchi M, ほか雑誌:Allergol Int. 2023;72(2):207-226発行日:2023年4月DOI:10.1016/j.alit.2023.02.006要約:日本アレルギー学会の成人喘息ガイドライン2021年版の要約。診断には症状の経過や呼吸機能の変動、FeNOなどを用い、アトピー素因は診断を支持する所見とした。治療の基本は吸入ステロイドで、慢性副鼻腔炎、COPD、アスピリン喘息などの合併も考慮すべきとした。