2026年9月30日

Nut Allergy
増えているナッツアレルギーと、表示の見方
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月30日
くるみやカシューナッツなど、木の実類による食物アレルギーが急増しています。国の全国調査では、くるみが原因の症例は2011年の40例から2023年には916例に、カシューナッツは18例から279例に増えました[1]。
2024年度の報告では、くるみは即時型の食物アレルギー6,033例のうち15.2%を占め、鶏卵に次ぐ2番目の原因でした。落花生(ピーナッツ)も421例(7.0%)ありました[1]。
Point
この記事のポイント
- ナッツアレルギーは、くるみやカシューナッツなどの木の実類と、豆類の落花生(ピーナッツ)に分けて考えます
- 種類ごとに確かめるのが基本ですが、くるみとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは一緒に避ける必要があります
- 2026年4月からカシューナッツも表示義務の対象になりました。2028年3月までは移行期間です
急増する木の実類のアレルギー
| 調査年 | くるみ | カシューナッツ | ピスタチオ | ペカンナッツ |
|---|---|---|---|---|
| 2011年 | 40例 | 18例 | ― | ― |
| 2014年 | 74例 | 50例 | 2例 | ― |
| 2017年 | 251例 | 82例 | 5例 | 3例 |
| 2020年 | 463例 | 174例 | 22例 | 19例 |
| 2023年 | 916例 | 279例 | 50例 | 35例 |
消費者庁の資料(全国実態調査の即時型症例数、―は記載なし)をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
重い例も増えています。2024年度の報告では、ショック症状を起こした586例のうち、くるみは86例で鶏卵、牛乳に次ぐ3番目に多く、カシューナッツも37例ありました。2023年の調査では、木の実類のなかでくるみ、カシューナッツに続き、マカダミアナッツ(69例)、ピスタチオ(50例)、アーモンド(46例)、ペカンナッツ(35例)、ヘーゼルナッツ(27例)が原因となっていました[1]。
年齢別にみると、3〜6歳で新たに起こった食物アレルギーでは、木の実類が32.5%で最も多い原因でした。学童期以降や大人になってから新たに起こることもあり、その場合は治りにくいとされています[2]。
ピーナッツと木の実類は別もの
落花生(ピーナッツ)は豆類で、木の実類とまとめて除去する必要はありません。ピーナッツは炒ることでアレルギーを起こす力が高まり、ピーナッツオイルも除去が必要です[2]。皮膚からの感作とピーナッツアレルギーの関係については、二重抗原曝露仮説の記事で解説しています。
木の実類も、ひとくくりに除去する必要はなく、種類ごとに症状の有無を確かめます。ただし、次の組み合わせには強い交差抗原性があり、どちらかにアレルギーがあれば両方を除去する必要があります[2]。
| 組み合わせ | 考え方 |
|---|---|
| くるみとペカンナッツ | 強い交差抗原性があり、一緒に除去する |
| カシューナッツとピスタチオ | 強い交差抗原性があり、一緒に除去する |
| そのほかの木の実類 | ひとくくりにせず、種類ごとに確かめる |
| ピーナッツと木の実類 | まとめて除去する必要はない |
国の研究班の手引きをもとに作成。
交差抗原性とは、似た形のたんぱく質をもつために、同じ抗体が両方に反応することです。交差抗原性があっても、実際に両方で症状が出るとは限りません[2]。くるみとペカンナッツは、ともにクルミ科の植物で、極めて高い交差抗原性をもっています[1]。
なかでもくるみとカシューナッツは、アナフィラキシーなど重い症状を起こすリスクが高いとされています[2]。
検査と診断
くるみやカシューナッツそのものの血液検査は、アレルギーのある人を見逃しにくい(感度が高い)検査です。一方、くるみのJug r 1、カシューナッツのAna o 3というコンポーネントの検査は、アレルギーのない人が陽性になりにくい(特異度が高い)検査で、組み合わせると診断の精度が上がります。ピーナッツでは、ピーナッツの検査が陽性だった場合の追加検査として、Ara h 2の検査が保険で認められています[3]。
Ara h 2、Jug r 1、Ana o 3はいずれも「2Sアルブミン」という貯蔵たんぱく質で、アナフィラキシーを含む全身の反応との関連が強いとされています[4]。
Jug r 1やAna o 3などのコンポーネント検査については、コンポーネント検査の記事で詳しく解説しています。
欧州アレルギー臨床免疫学会のガイドラインも、Ara h 2やAna o 3などの測定は診断の裏づけに役立つとしています。検査で判断がつかない場合は、医療機関で実際に食べて確かめる食物経口負荷試験を行い、これが診断の基準とされています[5]。
表示の見方と日常の注意
2026年4月1日の食品表示基準の改正で、カシューナッツが表示義務のある特定原材料に加わり、特定原材料は9品目になりました。あわせて、ピスタチオが表示推奨の品目に加わっています。カシューナッツには2028年3月31日までの移行期間があるため、それまでは含まれていても表示されていない商品がありえます[6][1]。
| 区分 | ナッツ類 |
|---|---|
| 表示義務(特定原材料) | くるみ、カシューナッツ、落花生(ピーナッツ) |
| 表示推奨(特定原材料に準ずるもの) | アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ |
| 表示の対象外 | ペカンナッツ、ヘーゼルナッツなど |
大阪府と消費者庁の資料をもとに作成(2026年4月の改正後)。
表示推奨の品目は表示されないことがあり、外食や店頭の惣菜には表示の義務がありません。アーモンドは洋菓子の粉として、ピーナッツはカレールーやスナック菓子の隠し味、佃煮や和菓子などにも使われることがあるため、原材料をよく確認しましょう[2]。
くるみと強い交差反応を示すペカンナッツは表示の対象ではありませんが、消費者庁は、くるみとの交差反応などについて注意を促すことを事業者に勧めています[1]。加工食品は予告なく原材料が変わることがあるため、購入のたびに表示を確認しましょう[2]。
ナッツを食べたあとに、息苦しさやのどの締めつけ感、くり返す嘔吐、ぐったりするなどの症状が出たら、ためらわずに救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方されている方は、迷わず使いましょう[2]。
こんな方はご相談ください
- ナッツ入りのお菓子やパンのあとに、口の中のかゆみやじんましんが出たことがある
- くるみやカシューナッツで症状が出て、ほかのナッツをどこまで避けるべきか迷っている
- 子どものころにピーナッツアレルギーと言われ、今の状態が分からない
- 念のため、ナッツを全部避けている
症状が出たときに食べたナッツの種類や、商品の包装をお持ちいただくと、原因を絞り込む手がかりになります。
よくあるご質問
ナッツは全部避けたほうが安全ですか?
木の実類はひとくくりに除去する必要はなく、種類ごとに確かめるのが基本です。ただし、くるみとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは一緒に避ける必要があります。
ピーナッツアレルギーですが、アーモンドは食べられますか?
ピーナッツは豆類で、木の実類とまとめて除去する必要はありません。ただ、アーモンドに反応するかどうかは人によって異なるため、個別に確かめましょう。
ココナッツも木の実類ですか?
国の研究班の手引きでは、ココナッツも木の実類の例に挙げられています。木の実類はひとくくりに除去する必要はないため、食べてよいかは個別に確かめましょう。
表示がなければ、食べても大丈夫ですか?
くるみと落花生には表示義務がありますが、カシューナッツは2028年3月まで移行期間中です。アーモンドなどの推奨品目は表示されないことがあり、外食は表示の対象外です。重い症状が出たことのある方は、お店に確認しましょう。
当院でのサポート
当院では、症状が出たときの状況を詳しくうかがい、くるみ、カシューナッツ、ピーナッツなどの血液検査と、Jug r 1、Ana o 3、Ara h 2といったコンポーネント検査を組み合わせて調べます。食物経口負荷試験が必要な場合は、実施できる医療機関をご紹介します。
避けるナッツが必要最小限になるよう確認し、アナフィラキシーを起こしたことがある方には、再発への備えについてもご相談に応じます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
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参考文献
- カシューナッツの義務表示化に向けた検討状況について(資料1)著者:消費者庁媒体:消費者庁ウェブサイト(会議資料)発行日:2025年12月URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_251212_03.pdf要約:消費者庁の会議資料。くるみの即時型症例は2011年調査の40例から2023年調査の916例に、カシューナッツは18例から279例に増えた。くるみは鶏卵に次ぐ2番目の原因となり、カシューナッツの表示義務化などが示された。
- 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022著者:厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏)媒体:国立病院機構相模原病院 臨床研究センター(PDF)発行年:2022年URL:https://sagamihara.hosp.go.jp/rinken/pdf/nutritionalmanual2022.pdf要約:国の研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き。木の実類はひとくくりに除去せず種類ごとに確認するが、くるみとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは一緒に除去が必要とした。ピーナッツは豆類で、炒ると反応が強まるとした。
- 日常診療でアレルゲンコンポーネントを用いた血液検査を使いこなす!(第49回日本小児皮膚科学会 教育講演1)著者:千貫祐子(島根大学 皮膚科 准教授)媒体:ラジオNIKKEI「マルホ皮膚科セミナー」放送内容(PDF)発行日:2026年4月20日放送URL:https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/docs/maruho_hifuka-260420.pdf要約:島根大学皮膚科の専門家による解説。クルミとペカン、カシューナッツとピスタチオには強い交差抗原性があるとした。Jug r 1やAna o 3の検査は特異度が高く、ピーナッツのAra h 2は追加検査として保険適用とした。
- イムノキャップ アレルゲンコンポーネント著者:Thermo Fisher Scientific媒体:同社ウェブサイト(医療関係者向け情報)閲覧日:2026年9月30日URL:https://www.thermofisher.com/phadia/jp/ja/our-solutions/immunocap-allergy-solutions/specific-ige-single-allergens/allergen-components.html要約:検査試薬メーカーによる医療関係者向けの解説。日本の日常診療で使えるコンポーネントを示し、2SアルブミンであるピーナッツのAra h 2、クルミのJug r 1、カシューナッツのAna o 3は、アナフィラキシーを含む全身の反応との関連が強いとした。
- EAACI guidelines on the diagnosis of IgE-mediated food allergy著者:Santos AF, Riggioni C, Agache I, ほか雑誌:Allergy. 2023;78(12):3057-3076発行日:2023年12月DOI:10.1111/all.15902要約:欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)の診断ガイドライン。診断は問診から始めて感作を確かめ、Ara h 2、Cor a 14、Ana o 3などの測定は、とくに花粉に感作された人で診断の裏づけに役立つとした。診断の基準は食物経口負荷試験とした。
- 食品表示に関するお知らせ著者:大阪府媒体:大阪府ウェブサイト更新日:2026年4月15日URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/o100110/shokuhin/hyouji/index.html要約:2026年4月1日の食品表示基準の改正を伝える大阪府のお知らせ。カシューナッツが表示義務のある特定原材料に、ピスタチオが表示推奨の品目に加わり、特定原材料は9品目になった。カシューナッツの経過措置は2028年3月31日まで。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)