2026年9月30日

Soy Milk & Allergy
豆乳で起こるアレルギーと、花粉症との関係
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月30日
豆乳は、大豆から熱水などでたんぱく質などの成分を溶かし出し、繊維を取り除いて得られる乳状の飲み物です[1]。いわば「大豆の抽出液」で、手軽に大豆の栄養をとれる食品として人気があります。
一方で、「豆腐や納豆は平気なのに、豆乳を飲んだら口やのどがかゆくなった」という方がいます。この記事では、豆乳で起こるアレルギーのしくみと花粉症との関係、注意したい方、検査や対処法について整理します。
Point
この記事のポイント
- 豆乳によるアレルギーの多くは、シラカンバやハンノキなどカバノキ科の花粉症がきっかけで起こり、大人の女性に多いとされています
- 原因となるたんぱく質(Gly m 4)は加熱や発酵で壊れやすいため、加工の少ない豆乳で症状が出やすく、アナフィラキシーを起こすこともあります
- 通常の大豆の血液検査では陰性になることがあり、Gly m 4の検査が診断の助けになります。症状が出たら医療機関を受診しましょう
豆乳の種類
日本農林規格(JAS)では、大豆固形分の量などによって、豆乳類を次の3つに分けています[1]。
| 種類 | 大豆固形分 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 豆乳 | 8%以上 | 大豆の成分を溶かし出し、繊維を除いたもの(いわゆる無調整豆乳) |
| 調製豆乳 | 6%以上 | 豆乳に植物油や砂糖、食塩などを加えたもの |
| 豆乳飲料 | 4%以上(果汁入りでは2%以上のものも) | 調製豆乳に果汁や乳製品などの風味を加えたもの |
「豆乳類の日本農林規格」(国民生活センターの資料に掲載)をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
いずれも大豆のたんぱく質を含むため、大豆でアレルギー症状が出たことがある方は注意が必要です。
大豆アレルギーには2つのタイプがある
大豆による食物アレルギーには、大豆を食べて腸から吸収されることで起こる通常のタイプと、主にカバノキ科の花粉症のある方が豆乳などを飲んだときに起こるタイプがあります。近年は、花粉症の増加とともに後者が増えているとされています[1]。
皮膚や気道など、食べる以外の経路で食べ物に感作されるしくみについては、二重抗原曝露仮説の記事で解説しています。
| 項目 | 通常の大豆アレルギー | 花粉症に関連した大豆アレルギー |
|---|---|---|
| きっかけ | 食べた大豆が腸から吸収されて起こる | カバノキ科の花粉を吸い込んでアレルギーになった後、似たたんぱく質を含む食品で起こる |
| 原因になりやすいもの | 豆腐や枝豆など大豆製品全般 | 主に豆乳など加工の少ない大豆製品 |
| 主な症状 | 全身の症状が中心 | 口やのどの症状が中心(全身に及ぶことも) |
国民生活センターの資料をもとに作成。
国の全国調査(令和6年度)では、医療機関を受診した即時型の食物アレルギー6,033例のうち、大豆が原因だったのは81例(1.3%)でした[2]。
なぜ豆乳で起こりやすいのか
シラカンバやハンノキの花粉には「PR-10」というアレルギーの原因たんぱく質が含まれ、大豆にもこれとよく似たたんぱく質(Gly m 4)があります。そのため、カバノキ科の花粉症の方の一部は、豆乳を飲んだときに花粉と間違えて体が反応してしまいます(交差反応)[1]。
Gly m 4は加熱や発酵などの加工で働きを失いやすいため、加工の程度が低い豆乳で症状が出やすく、納豆や味噌、しょうゆで症状が出ることは極めて稀とされています。豆乳が液体であることも関係している可能性が指摘されています[1]。
スイスなどの研究グループの調査でも、大豆製品に含まれるGly m 4の量は製品によって大きく異なり、加工の程度に強く左右されていました。それ以前には、大豆たんぱくを抽出した原料(分離大豆たんぱく)を含む食品でアレルギー反応が起きた例も報告されています[3]。
ただし、重症の方では、豆乳だけでなく、もやしや枝豆、豆腐で症状が出ることもあります[1]。
どんな人が注意したほうがよい?
豆乳によるアレルギーは成人の女性に多く、ほとんどの方がカバノキ科の花粉症を持っています。また、リンゴやモモ、サクランボ、ナシ、ビワなどのバラ科の果物にも似たたんぱく質が含まれるため、豆乳でアレルギーを起こす方の半数以上は、これらの果物でも口やのどのかゆみを経験しています[1]。
カバノキ科の花粉は春(1〜6月ごろ)に飛び、スギ花粉の時期と重なるため、症状だけではどちらの花粉症か区別できません[1]。関西でも、兵庫県のオオバヤシャブシ(カバノキ科)の花粉症の方では、20〜40%程度に果物による花粉-食物アレルギー症候群がみられたと報告されています[4]。ハンノキは北海道を除く日本の多くの地域に生えています[5]。
ヨーロッパの研究では、シラカンバ花粉に強く感作された花粉症の方94人のうち、9.6%が大豆アレルギーを自覚していました[3]。
症状と重症度
症状は、口の中やのどのかゆみ、イガイガ感、唇の腫れなどが中心で、多くは食べてから1時間以内にあらわれます。一部では、鼻や目の症状、じんましん、腹痛、息苦しさなどが加わり、アナフィラキシーに進むことがあります。花粉-食物アレルギー症候群のなかでも、カバノキ科の花粉と豆乳の組み合わせは、アナフィラキシーに進みやすいとされています[4]。
シラカンバ花粉症に関連した大豆アレルギーの方に、二重盲検法で大豆を食べてもらった試験では、症状が出た16人のうち10人は口の中だけの症状でしたが、6人はより重い症状が出ました[3]。
研究の種類臨床研究(二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を含む)/対象 シラカンバ花粉症で大豆アレルギーのある22人など
国民生活センターの資料では、豆乳飲料を200mL飲んだ15分後に、のどの痛みやかゆみ、まぶたの腫れが出て、その後息苦しくなって救急車で受診した39歳女性の例が紹介されています。この方は、通常の大豆の血液検査では陰性でした[1]。
豆乳を飲んだ後に、息苦しさ、のどが詰まる感じ、声のかすれ、全身のじんましん、ぐったりするなどの症状が出た場合は、アナフィラキシーの可能性があります。ためらわずに救急車を呼んでください。
検査と診断
このタイプでは、通常の大豆に対する血液検査が陰性になることがあります。検査に使う大豆のエキスには、Gly m 4がごく少量しか含まれないためと考えられています[6]。
日本の成人の大豆アレルギー21例を調べた研究では、全員がハンノキ花粉とGly m 4に感作されていた一方、大豆のエキスに対する抗体が陽性だったのは48%にとどまりました。Gly m 4に対する抗体の量は、大豆アレルギーのある人とない人を見分けるのに、大豆エキスの検査より役立ちました[6]。
研究の種類観察研究(症例対照)/対象 大豆アレルギーの成人21人と、大豆アレルギーのないハンノキ花粉感作者93人
Gly m 4の検査は、2016年から保険診療で受けられるようになっています[5]。ただし、大豆で症状のない方でも陽性になることがあるため(上の研究の対照群では57%)、結果は症状とあわせて判断します[6]。必要に応じて、症状が出た豆乳そのものを使った皮膚テストも行われます[1]。
Gly m 4のように、原因となるたんぱく質を1つずつ調べる検査については、コンポーネント検査の記事で詳しく解説しています。
診断された場合の対処
基本は、原因となる豆乳を避けることです。アナフィラキシーを起こしたことがある方や、豆乳のように重い症状を起こしうる食品については、しっかりした除去が必要とされています。全身の症状を起こしたことがある方は、アドレナリン自己注射薬を処方してもらい、常に持ち歩くことが勧められています[4]。
納豆や味噌、しょうゆなどは食べられることが多いものの、どこまで食べてよいかは人によって異なるため、医師と相談して決めましょう[1]。
また、加工食品のアレルギー表示で、大豆は「表示が推奨される20品目」の一つで、表示の義務はありません[2]。豆乳や大豆たんぱくが使われた食品を選ぶときは、原材料名もよく確認しましょう。
今日からできること
- 初めて豆乳を飲むときは、少量から試す
- 体調が悪いときは、豆乳を控える
- リンゴやモモなどで口がかゆくなる方は、豆乳にも注意する
- 豆乳で口やのどがかゆくなったら、飲むのをやめて医療機関を受診する
- 春の花粉症がある方は、カバノキ科の花粉も含めて血液検査で確かめる
よくあるご質問
豆腐や納豆も食べてはいけませんか?
花粉症に関連したタイプでは、納豆や味噌、しょうゆで症状が出ることは極めて稀です。一方、豆腐や枝豆で症状が出る方もいるため、どこまで食べられるかは医師と相談して決めましょう。
スギ花粉症でも、豆乳に注意が必要ですか?
豆乳のアレルギーに関係するのは、シラカンバやハンノキなどカバノキ科の花粉です。スギ花粉が原因で大豆アレルギーになることはありません。ただし、飛ぶ時期が重なり症状では区別できないため、気になる方は血液検査で確かめるとよいでしょう。
豆乳を毎日たくさん飲むと、アレルギーになりやすくなりますか?
豆乳をたくさん飲んだからといって、アレルギーになりやすくなるわけではありません。今問題なく飲めている方は、通常そのまま続けて構いません。ただし、カバノキ科の花粉症や果物のアレルギーがある方は、今後発症するリスクが他の方より高いと考えられています。
当院でのサポート
豆乳や果物で口やのどがかゆくなったことがある方、春の花粉症がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。血液検査などで原因を調べ、日常生活での注意点をお伝えします。
大豆製品を控える必要がある場合は、管理栄養士が、ほかの食品でたんぱく質を補う工夫を一緒に考えます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
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参考文献
- 豆乳等によるアレルギーについて -花粉症(カバノキ科花粉症)の方はご注意を-著者:独立行政法人国民生活センター媒体:国民生活センター報道発表資料発行日:2013年12月5日URL:https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20131205_1.pdf要約:豆乳等でアレルギー症状が出たという相談を受けた注意喚起。豆乳による口腔アレルギー症候群は成人女性に多く、多くがカバノキ科花粉症を持ち、原因はPR-10類似の大豆たんぱくGly m 4とした。加工の少ない豆乳で起こりやすく、納豆・味噌・しょうゆでは極めて稀。豆乳類のJAS規格も掲載。
- 食物アレルギー表示制度における消費者庁の取組(第20回アレルギー疾患対策推進協議会 資料3-2)著者:消費者庁食品表示課媒体:厚生労働省ウェブサイト発行日:2026年5月URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001704059.pdf要約:食物アレルギー表示制度の現状をまとめた資料。表示義務のある特定原材料は9品目(2026年4月にカシューナッツを追加)で、大豆は表示が推奨される20品目の一つ。令和6年度の全国調査では、即時型症例6,033例のうち大豆が原因は81例(1.3%)だった。
- Soybean allergy in patients allergic to birch pollen: clinical investigation and molecular characterization of allergens著者:Mittag D, Vieths S, Vogel L, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2004;113(1):148-154発行日:2004年1月DOI:10.1016/j.jaci.2003.09.030要約:シラカンバ花粉症で大豆アレルギーのある22人を調べた研究。食物負荷試験で症状が出た16人のうち6人は口の外にも及ぶ重い症状で、96%がGly m 4に対する抗体を持っていた。花粉症94人中9.6%が大豆アレルギーを自覚し、大豆製品のGly m 4量は加工の程度に強く左右された。
- 花粉-食物アレルギー症候群(小児科診療 UP-to-DATE)著者:佐藤さくら(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)媒体:ラジオNIKKEI 放送内容(PDF)発行日:2024年3月12日放送URL:https://www.radionikkei.jp/uptodate/docs/uptodate-240312.pdf要約:花粉-食物アレルギー症候群の専門家による解説。約1〜2%がアナフィラキシーに進み、カバノキ科花粉と豆乳の組み合わせは進展しやすいとした。豆乳の例では大豆の抗体が陰性でもGly m 4の検査が有用で、重症例では厳格な除去とアドレナリン自己注射薬の携帯が必要とした。
- Usefulness of Gly m 4-specific IgE test in the diagnosis of Rosaceae fruit-oral allergy syndrome caused by Betulaceae pollen sensitization著者:Yoshida T, Morita E, Chinuki Y, ほか雑誌:J Cutan Immunol Allergy. 2023;6:42-48発行日:2023年DOI:10.1002/cia2.12291要約:ハンノキ花粉に感作された32人を調べた島根大学の研究。Gly m 4の抗体量はバラ科果物で口の症状が出る群で高く、大豆アレルギーの10人(うち9人は豆乳)は全員陽性だった。Gly m 4検査は2016年に保険適用され、ハンノキは北海道を除く日本の大部分に自生するとした。
- Clinical relevance of IgE to recombinant Gly m 4 in the diagnosis of adult soybean allergy著者:Fukutomi Y, Sjölander S, Nakazawa T, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2012;129:860-863.e3発行日:2012年URL:http://hdl.handle.net/2297/30323(著者稿、金沢大学学術情報リポジトリ)要約:日本の成人の大豆アレルギー21例の研究。全員がハンノキ花粉とGly m 4に感作されていたが、大豆エキスへの感作は48%だった。症状は豆乳で最も多く、発酵大豆食品で反応した人はいなかった。Gly m 4の抗体量は大豆エキスより診断に有用だった。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)