2026年9月30日

Egg Allergy
卵アレルギーの特徴と、加熱した卵の考え方
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月30日
卵は、食物アレルギーの原因として最も多い食べ物です。国の全国調査(2024年度)では、即時型の食物アレルギー6,033例のうち鶏卵が1,609例(26.7%)を占め、アナフィラキシーショックを起こした例でも最多(23.2%)でした[1]。
新たに起こるのは主に乳幼児期で、0歳で新たに起こった食物アレルギーの55.6%が鶏卵でした。多くは成長とともに治りますが[2]、大人になってから起こるタイプもあります[3]。
Point
この記事のポイント
- 主な原因は卵白のたんぱく質で、加熱の仕方によって症状の出やすさが大きく変わります
- 乳幼児期に始まるものの多くは治りますが、鳥の成分を吸い込んで大人に起こるタイプもあります
- 鶏肉や魚卵、卵殻カルシウムは基本的に除去不要です。診断にもとづく必要最小限の除去が大切です
原因は卵白のたんぱく質
卵アレルギーの主な原因は、卵白に含まれるオボムコイドやオボアルブミンなどのたんぱく質です。加熱した卵黄は、少量の卵白がついていても食べられることが多いとされています[2]。
| たんぱく質 | 熱への強さ | ポイント |
|---|---|---|
| オボアルブミン | 熱で変化しやすい | 加熱の温度や時間、調理法によっては食べられる場合がある |
| オボムコイド | 熱に強い | 加熱した卵製品でも症状が出るおそれがあり、加熱した卵を食べられるかの目安になる |
国の研究班の手引きと検査試薬メーカーの資料をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
そのため、加熱した卵は食べられても、生卵や加熱が十分でない卵を使った料理(温泉卵、プリン、茶わん蒸し、オムレツなど)では症状が出ることがあります[2]。
検査と診断
卵アレルギーの診断には、卵を食べて症状が出たことと、血液検査などで卵に対する抗体(感作)が確かめられることの両方が必要です。どちらか一方だけでは、診断したことになりません[2]。
血液検査では、卵白に加えて、熱に強いオボムコイドに対する抗体も日常の診療で調べられます。卵白の検査が陽性でも、オボムコイドが陰性なら、加熱した卵の製品は食べられる可能性があります[4]。
日本の研究グループが、卵アレルギーが疑われる子ども108人に生の卵白と加熱した卵白を食べてもらって調べた研究では、生の卵白で症状が出るかの予測には卵白の検査が、加熱した卵白で症状が出るかの予測にはオボムコイドの検査が優れていました[5]。
研究の種類二重盲検の食物負荷試験による診断精度の研究/対象 卵アレルギーが疑われる子ども108人
検査だけで判断がつかない場合は、医療機関で実際に食べて確かめる食物経口負荷試験で診断します[2]。食べ物のたんぱく質を1つずつ調べる検査については、コンポーネント検査の記事で詳しく解説しています。
治りやすさと、大人の卵アレルギー
乳幼児期に始まる鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーは、3歳までに約50%、5〜6歳までに約60〜70%が治るとされています[2]。
鳥の成分を吸い込んで起こる「bird-egg症候群」
大人になってからも起こりうる卵アレルギーとして、「bird-egg症候群」が知られています。鳥に由来する成分を吸い込んで感作され、卵を食べたときに症状が出るもので、卵黄で症状が出やすく、鶏肉のアレルギーを伴うことも従来の卵アレルギーより多いとされています[3]。原因のたんぱく質(アルブミン)は熱に弱く、十分に加熱した卵では症状が出ないことがあります[2]。
鳥とのかかわり(飼育や仕事など)がある方は、診察の際にそのことも伝えてください。
除去が必要なものと、不要なもの
除去が必要な場合も、食べると症状が出るものだけを避ける「必要最小限の除去」が基本です[2]。
| 区分 | 主な例 |
|---|---|
| 避けるもの | 卵、うずらなどほかの鳥の卵、マヨネーズ、かまぼこ・はんぺんなどの練り製品、ハム・ウインナー、調理パン・菓子パン、卵を使った天ぷらやフライの衣、ハンバーグのつなぎ、クッキーやケーキなどの洋菓子 |
| 基本的に除去しなくてよいもの | 鶏肉、魚卵、卵殻カルシウム |
国の研究班の手引きをもとに作成。
卵は表示が義務づけられた特定原材料で、容器包装された加工食品に含まれていれば微量でも表示されます。「たまご」「玉子」「エッグ」「鶏卵」「うずら卵」なども卵を示す表示です。一方、外食や店頭の惣菜には表示の義務がありません[2]。
卵を除く場合は、肉や魚、大豆製品でたんぱく質を補います。卵Mサイズ1個(約50g)に含まれるたんぱく質(約6g)は、赤身の肉や魚なら25〜35g、木綿豆腐なら85gがおよその目安です[2]。
一部の量なら食べられると医師に判断された場合も、卵は加熱の温度や時間によって症状の出やすさが大きく変わるため、食べられる範囲を広げるときは特に注意が必要です。食べたことのない量を自宅で少しずつ試すことは勧められていません[2]。
薬やワクチンを使うときの注意
インフルエンザワクチンは発育鶏卵を使って培養されるため、鶏卵などにアレルギーがある方への注意が示されています。点滴の栄養剤や麻酔薬などにも、卵黄に由来する成分(卵黄レシチン)を含むものがあります[6]。予防接種や治療を受けるときは、卵アレルギーがあることを必ず伝えましょう。
赤ちゃんの卵アレルギーの予防
アトピー性皮膚炎のある乳児では、湿疹の治療を十分に行ったうえで、医師の管理のもと生後6か月から卵をごく少量ずつ食べ始めることが、卵アレルギーの予防として勧められています[2]。
日本で行われた試験では、湿疹のある乳児が生後6か月から加熱した卵の粉末をごく少量ずつ食べたところ、1歳の時点で卵アレルギーになった子は8%で、食べなかった群の38%を大きく下回りました[7]。
研究の種類ランダム化比較試験(二重盲検)/対象 湿疹のある生後4〜5か月の乳児147人
すでに卵アレルギーと診断されている場合も含め、始め方は自己判断せず、医師に相談してください。湿疹と食物アレルギーの関係については、二重抗原曝露仮説の記事で詳しく解説しています。
こんな方はご相談ください
- 卵料理や卵を使った食品のあとに、じんましんや唇の腫れが出たことがある
- 加熱した卵は大丈夫でも、半熟卵やプリンで症状が出る
- 鳥を飼うようになってから、卵を食べると体調が悪くなる
- 子どものころの卵アレルギーが、今も続いているか分からない
- 念のため卵を避けていて、どこまで食べてよいか分からない
症状が出たときの料理と加熱の程度、食べた量をメモしておくと、診断の手がかりになります。
よくあるご質問
鶏肉や魚卵も避けたほうがよいですか?
鶏肉や魚卵は鶏卵とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はありません。ただし、bird-egg症候群では鶏肉のアレルギーを伴うことがあるため、医師に確認しましょう。
卵黄なら食べられますか?
加熱した卵黄は食べられることが多いとされています。ただ、bird-egg症候群のように卵黄で症状が出やすいタイプや、乳児で卵黄を食べた数時間後に嘔吐をくり返すタイプもあるため、自己判断は避けましょう。
卵殻カルシウムを使った食品は食べられますか?
卵殻カルシウムには鶏卵のたんぱく質がほとんど含まれないため、基本的に食べることができます。
当院でのサポート
当院では、症状が出たときの料理や加熱の程度を詳しくうかがい、卵白やオボムコイドなどの血液検査を行います。食物経口負荷試験が必要な場合は、実施できる医療機関をご紹介します。
大人になってから卵で症状が出るようになった方も、どうぞご相談ください。避ける範囲が必要最小限になるよう、一緒に確認します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
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参考文献
- カシューナッツの義務表示化に向けた検討状況について(資料1)著者:消費者庁媒体:消費者庁ウェブサイト(会議資料)発行日:2025年12月URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_251212_03.pdf要約:消費者庁の会議資料。2024年度の全国実態調査では、即時型の食物アレルギー6,033例のうち鶏卵が1,609例(26.7%)で最も多く、ショック症状の586例でも136例(23.2%)で最多だった。
- 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022著者:厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏)媒体:国立病院機構相模原病院 臨床研究センター(PDF)発行年:2022年URL:https://sagamihara.hosp.go.jp/rinken/pdf/nutritionalmanual2022.pdf要約:国の研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き。鶏卵アレルギーの主な原因は卵白のたんぱく質で、オボアルブミンは加熱で変性しやすいとした。鶏肉・魚卵・卵殻カルシウムは基本的に除去不要とし、除去時の代替や表示の見方を示した。
- 食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 第14章 食物以外の抗原感作による食物アレルギー著者:一般社団法人日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会媒体:日本小児アレルギー学会ウェブサイト閲覧日:2026年9月30日URL:https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_14.html要約:食物以外の抗原への感作で起こる食物アレルギーの要約。bird-egg症候群は成人期でも発症しうる鶏卵アレルギーで、鳥抗原の吸入による感作で起こり、卵黄で症状が出やすく、鶏肉アレルギーの合併も従来の鶏卵アレルギーより多いとした。
- イムノキャップ アレルゲンコンポーネント著者:Thermo Fisher Scientific媒体:同社ウェブサイト(医療関係者向け情報)閲覧日:2026年9月30日URL:https://www.thermofisher.com/phadia/jp/ja/our-solutions/immunocap-allergy-solutions/specific-ige-single-allergens/allergen-components.html要約:検査試薬メーカーによる医療関係者向けの解説。オボムコイドは熱に強く、感作があると卵を含む製品全般で症状が出るおそれがあるとした。卵白が陽性でもオボムコイドが陰性なら、加熱した卵製品は食べられる可能性があるとした。
- Utility of ovomucoid-specific IgE concentrations in predicting symptomatic egg allergy著者:Ando H, Movérare R, Kondo Y, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2008;122(3):583-588発行日:2008年9月DOI:10.1016/j.jaci.2008.06.016要約:日本の研究グループが、卵アレルギーが疑われる子ども108人に生卵白と加熱卵白の二重盲検負荷試験を行った研究。38人は加熱卵白でも、29人は生卵白だけで症状が出た。生卵白の予測には卵白の検査が、加熱卵白の予測にはオボムコイドの検査が優れていた。
- 食物アレルギー患者に注意が必要な当院採用薬一覧(DIニュース 2021年9月1号)著者:愛媛大学医学部附属病院 薬剤部 薬品情報管理室媒体:愛媛大学医学部附属病院ウェブサイト(PDF)発行日:2021年9月URL:https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/202109-1DInews.pdf要約:大学病院の薬剤部による、食物アレルギー患者に注意が必要な採用薬の一覧。インフルエンザHAワクチンは発育鶏卵で培養するため鶏卵などのアレルギーに注意が必要とし、卵黄レシチンを含む脂肪乳剤や麻酔薬なども挙げた。
- Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial著者:Natsume O, Kabashima S, Nakazato J, ほか雑誌:Lancet. 2017;389(10066):276-286発行日:2017年1月URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27939035/(PubMed)要約:湿疹のある生後4〜5か月の乳児を対象に、日本の2施設で行われたランダム化比較試験。湿疹の治療を積極的に行いながら生後6か月から加熱卵粉末をごく少量ずつ与えた群では、1歳時点の卵アレルギーが8%で、プラセボ群の38%を大きく下回った。
大阪府吹田市長野東19番6号
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院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)