2026年9月30日

Cochineal Allergy
赤い色素「コチニール」で起こるアレルギー
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月30日
「食事のあとに、唇やまぶたが腫れてきた」「急に全身にじんましんが出て、息苦しくなった」。原因がはっきりしないこうした症状の陰に、食べ物の赤い色素が隠れていることがあります。
その色素が「コチニール色素」です。食品や化粧品に広く使われている天然の赤い色素で、数は多くないものの、アナフィラキシーを起こしたとみられる例が1960年代から20ほどの論文で報告されています[1]。この記事では、コチニールアレルギーの特徴と原因、検査、表示の見分け方を整理します。
Point
この記事のポイント
- コチニール色素は、エンジムシという虫からとれる赤い色素で、食品や化粧品、医薬品に使われています
- 日本の報告例は成人女性がほとんどです。化粧品で感作され、食べ物で発症するとみられています
- 保険で受けられる検査はありません。疑わしいときは、表示の確認と専門的な検査が大切です
コチニール色素とは
コチニール色素は、サボテンなどに寄生するエンジムシ(カイガラムシの仲間)の乾燥体から抽出される赤い色素で、主な成分はカルミン酸です[2]。清涼飲料水、菓子類、ハム、かまぼこなどの食品のほか、医薬品、医薬部外品、口紅やアイシャドウなどの化粧品にも使われています[1]。

カルミン酸にアルミニウムやカルシウムを結びつけたものは「カルミン」と呼ばれます[3]。日本ではカルミンを食品に使うことは禁止されていて、化粧品や医薬品などに使われています[4]。
海外でも、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が2000年に、コチニール着色料は一部の人にアレルギー反応を起こしうると結論し、米国では2009年に表示を義務づける規則が公表されました[2]。
見落としやすいのは、赤やピンク色に見えない食品や、着色していると知られていない食品にも使われていることです。診断された例で関係した製品には、化粧品では口紅やファンデーション、医薬品ではカプセル剤、食品ではマカロン、いちごミルク、ハム、焼き鳥のたれなどがありました[4]。
どんな症状が出るのか
症状は、色素がどのように体に入るかによって異なります[2]。
| 入り方 | 主な症状 |
|---|---|
| 食べる・飲む | じんましん、顔の腫れ、アナフィラキシーショックなど |
| 吸い込む | 色素を製造する人の職業性ぜんそくなど |
| 皮膚に触れる | 口紅による唇の荒れや出血、アナフィラキシーショックなど |
食品安全委員会の資料をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
日本の報告例をまとめた研究では、患者さんは全員が成人女性で、3例を除いてアナフィラキシーを起こしていました。13例には、以前に化粧品で局所の症状が出た経験がありました。近年の主な原因は、国内のいちごの飲み物や魚肉ソーセージ、ヨーロッパの加工食品(とくにフランス製のマカロン)や飲み物でした[3]。
研究の種類国内報告例のまとめ(症例の集積)/対象 国内で報告された22例と、新たに診断された6例
主に、カルミンを含む化粧品を使ううちに皮膚から感作され(アレルギーを起こす準備ができた状態)、その後、コチニール色素を含む食事で症状が起こると考えられています。化粧品のトラブルで受診する人は少なく、突然の食後のアナフィラキシーで救急搬送されることが多いため、原因に気づかないまま搬送を繰り返すことも少なくないとされ、疑われる症例は増えていると報告されています[4]。皮膚から食べ物の成分に感作されるしくみについては、二重抗原曝露仮説の記事で解説しています。
食後に息苦しさ、のどが詰まる感じ、全身のじんましん、ぐったりするなどの症状が出たら、アナフィラキシーの可能性があります。ためらわずに救急車を呼んでください。
原因は色素に残る「虫のたんぱく質」
コチニール色素やカルミンには、原料の虫に由来するたんぱく質が不純物として含まれています。なかでも大きさが38kDaのたんぱく質が主なアレルゲンと考えられていて[3]、日本の研究グループが「CC38K」と名づけて初めて特定しました。ほかの昆虫でアレルゲンとして知られる酵素(ホスホリパーゼ)に似た構造をもっています[5]。
国内の患者さん4人を調べた研究では、コチニール色素を使った皮膚テストは全員が陽性でした。一方、不純なたんぱく質を取り除いた精製カルミン酸色素では、陰性になるか反応が弱まりました。血液検査でも、コチニール色素への抗体が高かった2人は、精製カルミン酸色素には反応しませんでした[6]。
研究の種類症例の検討(皮膚テスト・血液検査・アレルゲン解析)/対象 コチニール色素による即時型アレルギーの患者4人
ただし、まれにカルミン酸そのものが原因となった報告もあります。また、食品用のコチニール色素にはたんぱく質の量に上限(2.2%以下)がありますが、化粧品にはこうした規制がありません[4]。
検査と診断
疑うきっかけは、赤やピンク色の食べ物のあとに、唇やまぶたの腫れを含む即時型の症状が出ることです[4]。診断には、コチニール色素を使った皮膚テスト(プリックテスト)と、コチニールやカルミンに対する血液中の抗体の測定が役立つとされています[3]。
ただし、現在はどちらにも保険で使える検査薬がなく、血液検査は企業による自費の検査になります。皮膚テストのほうが感度は高いものの、体への負担などを考えて血液検査から始めることが勧められています。いずれも、コチニール色素、カルミン酸、カルミンの3種類をあわせて調べるのが望ましいとされます。化粧品によるかぶれ(接触皮膚炎)が疑われる場合は、パッチテストで調べます[4]。
食べ物などに含まれるたんぱく質を1つずつ調べる検査の考え方は、コンポーネント検査の記事で解説しています。
表示の見分け方と、日常の注意
原因がコチニール色素と疑われたら、含まれる製品を避けることが基本です。製品には、次のような名前で表示されています[1][4]。
| 製品 | 表示の場所 | 主な表示名 |
|---|---|---|
| 食品 | 原材料名の欄 | コチニール色素、カルミン酸色素、着色料(コチニール)、着色料(カルミン酸) |
| 医薬品 | 添付文書や外箱の「添加物」 | コチニール、カルミンなど |
| 医薬部外品・化粧品 | 容器や外箱の「成分」 | コチニール、カルミン、カルミン被覆雲母チタンなど |
| 海外の製品 | 原材料・成分の表示 | E120、クリムゾンレーキ、C.I.75470など |
消費者庁の注意喚起と、専門医監修の資料をもとに作成。
コチニール色素、カルミン酸、カルミンは似た抗原性をもつため、どれも避ける必要があります。アイシャドウなどのパレット型の化粧品では、一部の色に使われたカルミンが、使ううちにほかの色に混ざることもあるため注意しましょう[4]。
外食など表示を確認できない場面では、お店に原材料を問い合わせるようにしましょう。薬を受け取るときも、コチニールにアレルギーがあることを医師や薬剤師に伝えておくと安心です。
こんな方はご相談ください
- 赤やピンク色の食べ物のあとに、唇やまぶたが腫れたことがある
- 口紅やアイシャドウで、唇やまぶたがかゆくなったり荒れたりしたことがある
- 原因がわからないまま、食後のじんましんやアナフィラキシーを繰り返している
- 海外のお菓子や飲み物で、体調が悪くなったことがある
受診の際は、症状が出たときに食べたものの包装や、ふだん使っている化粧品をお持ちいただくと、原因を探す大きな手がかりになります。
よくあるご質問
赤い色の食べ物は、すべて避ける必要がありますか?
色だけでは判断できません。赤やピンク色に見えない食品に使われていることもあるため、原材料の表示で確かめることが大切です。
ふつうのアレルギーの血液検査で、わかりますか?
コチニールアレルギーには、保険で受けられる検査がありません。疑わしい場合は、自費の血液検査や、皮膚テストを行っている医療機関での検査が必要になります。
男性や子どもにも起こりますか?
専門医の集計では、確実な例の95%が成人女性でした。ただ、それ以外の方の報告もあるため、性別や年齢にかかわらず、気になる症状があればご相談ください。
赤い色素の化粧品でかぶれたことがあります。食べ物にも注意が必要ですか?
化粧品でかゆみが出ていた人が、のちにコチニール色素を含む食品で重いアレルギー反応を起こした報告があります。気になる症状があれば、早めにご相談ください。
当院でのサポート
当院では、症状が出たときに食べたものや、ふだん使っている化粧品について詳しくうかがい、コチニールアレルギーの可能性を検討します。食品や化粧品の表示の見方も、一緒に確認します。
コチニールアレルギーの検査には、保険が使えるものがありません。皮膚テストなどが必要と判断した場合は、検査ができる医療機関をご紹介します。原因がわからないじんましんやアナフィラキシーを繰り返している方も、どうぞご相談ください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
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参考文献
- コチニール色素に関する注意喚起著者:消費者庁 消費者安全課媒体:報道発表資料(川崎市ウェブサイト掲載の写し)発行日:2012年5月11日URL:https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000137/137454/120511kouhyou_9.pdf要約:コチニール色素による急性アレルギーについての国の注意喚起。化粧品の使用や食品の摂取でアナフィラキシーを起こしたとみられる事例が1960年代から約20の論文で報告されているとし、食品・医薬品・化粧品ごとの表示の場所と表示名を示した。
- コチニール色素に関する情報著者:内閣府食品安全委員会事務局媒体:食品安全委員会ウェブサイト(PDF)発行日:2012年5月11日URL:https://www.fsc.go.jp/sonota/cochineal.pdf要約:コチニール色素の概要と国内外の状況をまとめた資料。エンジムシの乾燥体から抽出されカルミン酸を主成分とし、飲食でじんましんやアナフィラキシー、吸入で職業性ぜんそく、皮膚接触で唇の荒れなどが起こりうるとした。JECFAの評価や米国の表示義務化も紹介した。
- Cochineal dye-induced immediate allergy: Review of Japanese cases and proposed new diagnostic chart著者:Takeo N, Nakamura M, Nakayama S, ほか雑誌:Allergol Int. 2018;67(4):496-505発行日:2018年10月DOI:10.1016/j.alit.2018.02.012要約:国内のコチニール色素による即時型アレルギーの報告22例と新規6例を検討した研究。患者は全員が成人女性で、3例を除きアナフィラキシーを起こし、13例に化粧品による局所症状の既往があった。皮膚テストと特異的IgEの測定が診断に有用とした。
- ~成人女性に多い突然のアナフィラキシー~ コチニールアレルギー症例の実態と診断・指導著者:矢上晶子(監修、藤田医科大学)媒体:ホーユー株式会社 イノベーションセンター ニュースレター 2024年度秋号 No.1(PDF)閲覧日:2026年9月30日URL:https://ic.hoyu.co.jp/update/wp-content/uploads/2025/05/Newsletter_cochineal-.pdf要約:専門医監修の医療者向け資料(検査サービスを提供する企業の発行)。主にカルミンを含む化粧品で感作され、食事で発症すると考えられるとした。保険収載の検査はなく、皮膚テストは血液検査より高感度で、色素3種をあわせて調べるのが望ましいとした。
- Molecular cloning, expression, and characterization of a major 38-kd cochineal allergen著者:Ohgiya Y, Arakawa F, Akiyama H, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2009;123(5):1157-1162.e4発行日:2009年5月DOI:10.1016/j.jaci.2008.12.1111要約:コチニールアレルギー患者3人の血清を用いて、コチニール抽出物の主要アレルゲンを初めて同定した日本の研究。38kDaのたんぱく質をCC38Kと名づけ、組み換えたんぱく質も患者の抗体と反応した。ホスホリパーゼと似た構造をもつとした。
- コチニール色素による即時型アレルギー患者におけるアレルギー検査の分析およびアレルゲン蛋白質の解析著者:山川有子, 大砂博之, 相原道子, ほか雑誌:臨床皮膚科. 2012;66(1):8-13発行日:2012年1月DOI:10.11477/mf.1412103141要約:コチニール色素で即時型アレルギーを起こした患者4人の検討。皮膚テストは全員がコチニール色素で陽性だったが、不純なたんぱく質を除いた精製カルミン酸色素では陰性化または減弱した。患者のIgEは約39〜45kDaのたんぱく質に反応した。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)