2026年9月30日

Milk Allergy
牛乳アレルギーと乳糖不耐症の違い
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/公開日:2026年9月30日
牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする、じんましんが出る。牛乳で体調をくずすと「牛乳アレルギーかもしれない」と考えがちですが、原因がアレルギーとは限りません。
国の全国調査(2024年度)では、即時型の食物アレルギー6,033例のうち、牛乳が原因だったのは807例(13.4%)で、3番目に多い原因でした。アナフィラキシーショックの例では16.2%を占め、鶏卵に次いで2番目でした[1]。新たに起こる例の中心は乳児期で、0歳で新たに起こった食物アレルギーの27.3%が牛乳でした[2]。
Point
この記事のポイント
- 牛乳アレルギーは牛乳のたんぱく質に対する免疫の反応で、乳糖不耐症とは別のものです
- 乳幼児期に始まることが多く、多くは成長とともに治りますが、続く人もいます
- 「乳」の字がついていても、乳酸菌や乳化剤など避けなくてよいものがあります
牛乳アレルギーと乳糖不耐症は別のもの
食物アレルギーは、食べ物に対して免疫が過敏に反応して起こるものです。乳糖不耐症のように免疫が関わらないものは「食物不耐症」とよばれ、食物アレルギーには含まれません[2]。
| 項目 | 牛乳アレルギー | 乳糖不耐症 |
|---|---|---|
| 原因 | 牛乳のたんぱく質に対する免疫の反応 | 牛乳に含まれる乳糖をうまく消化できない |
| 主な症状 | かゆみ、発疹、ぜんめいなど。嘔吐や腹痛が出ることも | おなかの張りや痛み、水っぽい下痢、おなら、吐き気など |
| 大人では | まれ | 大量の乳糖を消化できない人が多い |
MSDマニュアル家庭版をもとに作成。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
乳糖不耐症では、乳糖を含む食事の30分〜2時間後におなかの症状が出ることが多く、症状はふつう軽いとされています[3]。牛乳でおなかの調子をくずすだけなのか、アレルギーの症状なのかを見分けることが大切です。
乳糖不耐症は、乳製品を3〜4週間控えて症状が消え、再びとると症状が出ることで確かめられます。乳糖を含む食品を控えれば対処でき、ヨーグルトは乳酸菌がつくるラクターゼを含むため食べられることが多く、チーズは牛乳より乳糖が少ないとされています[3]。これに対して牛乳アレルギーでは、ヨーグルトやチーズでも症状が出ることがあります[2]。
原因となるたんぱく質と検査
牛乳の主なアレルゲンはカゼインとβ-ラクトグロブリンです。カゼインは加熱してもアレルギーを起こす力が変わりにくく、β-ラクトグロブリンは加熱で反応しにくくなります[2]。α-ラクトアルブミンは熱に弱いたんぱく質です[4]。
牛乳や乳製品は、発酵や加熱による症状の出やすさの違いが小さいため、食べられる量はたんぱく質の量をもとに考えます。牛乳50mLと同じたんぱく質を含むのは、プロセスチーズなら7g、ヨーグルトなら45g、有塩バターなら270gです。食べられる範囲を広げるときは、たんぱく質の少ないバターなどから始め、たんぱく質の多いチーズはほかの乳製品が食べられるようになってからにします。食べたことのない量を自宅で少しずつ試すことは勧められていません[2]。
血液検査では、牛乳全体に加えて、カゼイン、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンを保険で調べられます。カゼインの検査は、牛乳全体の検査と同じかそれ以上に感度・特異度が高いとされています[4]。
たんぱく質ごとに調べる検査の考え方は、コンポーネント検査の記事で解説しています。
大人の牛乳アレルギーと、薬の注意
乳幼児期に始まる牛乳アレルギーは、鶏卵や小麦とともに、3歳までに約50%、5〜6歳までに約60〜70%が治るとされています[2]。大人の牛乳アレルギーはまれですが[3]、子どものころから続いている方は、誤って口にしたときへの備えが引き続き必要です。
薬にも注意が必要です。下痢止めのタンニン酸アルブミンは牛乳のカゼインを含む薬で、牛乳アレルギーの方ではショックやアナフィラキシーを起こすおそれがあるため使えません[5]。栄養補給に使う経腸栄養剤にも、牛乳由来のたんぱく質を含むため使えないものがあります[6]。薬を処方されるときや市販薬を買うときは、牛乳アレルギーがあることを伝えましょう。
やぎや羊の乳は牛乳と強い交差抗原性があるため、代わりにはなりません。一方、牛肉は牛乳とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はありません[2]。
牛乳や乳製品を口にしたあとに、息苦しさやのどの締めつけ感、くり返す嘔吐、ぐったりするなどの症状が出たら、ためらわずに救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、迷わず使い、その後すぐに医療機関を受診しましょう[2]。
表示の見方と食事の工夫
乳は表示が義務づけられた特定原材料で、容器包装された加工食品に含まれていれば微量でも表示されます。ただし「乳」の字がついていても、牛乳とは関係のないものがあります[2]。
| 区分 | 主な例 |
|---|---|
| 牛乳を含むことを示す表示 | ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム |
| 牛乳と関係なく食べられるもの | 乳酸菌、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳化剤(一部に乳由来のものあり)、カカオバター、ココナッツミルク |
| 医師に確認するもの | 乳糖(ごく微量のたんぱく質を含むことがある) |
国の研究班の手引きをもとに作成。
牛乳は、ヨーグルトやチーズ、バター、生クリーム、脱脂粉乳、乳酸菌飲料のほか、パン、カレーやシチューのルウ、ハムやウインナー、チョコレートなどの洋菓子、調味料の一部にも含まれています[2]。
牛乳や乳製品を除去すると、カルシウムが不足しがちです。牛乳100mLに含まれるカルシウム(110mg)は、木綿豆腐なら約1/3丁、しらす干しなら大さじ4、ゆでた小松菜なら2株がおよその目安です。豆乳は牛乳よりカルシウムが少ない点に注意しましょう[2]。
こんな方はご相談ください
- 牛乳や乳製品を口にしたあと、じんましんやせき、唇の腫れが出たことがある
- 牛乳を飲むとおなかの調子が悪くなるが、原因が分からない
- 子どものころの牛乳アレルギーが、今も続いているか分からない
- 乳製品を避けていて、カルシウム不足が気になる
症状が出たときに口にしたものと量、症状が出るまでの時間を控えておくと、診断の手がかりになります。
よくあるご質問
牛乳でおなかを壊します。アレルギーですか?
おなかの張りや下痢だけの場合は、乳糖不耐症の可能性があります。じんましんやせき、息苦しさを伴う場合は、アレルギーを疑います。自己判断せず、一度ご相談ください。
乳酸菌飲料も避けたほうがよいですか?
「乳酸菌」そのものは牛乳とは関係ありません。ただ、乳酸菌飲料や発酵乳は牛乳を原料にしていることが多く、その場合は除去の対象になります。表示で「乳」の有無を確認しましょう。
牛乳の代わりに豆乳を飲んでもよいですか?
豆乳は大豆からつくられるため、牛乳アレルギーの方の代わりの飲み物として使えます。ただし、牛乳よりカルシウムが少ないので、ほかの食品でも補いましょう。花粉症の方に起こる豆乳のアレルギーについては、豆乳アレルギーの記事をご覧ください。
ヨーグルトやチーズなら大丈夫ですか?
牛乳アレルギーでは、発酵させても症状の出やすさはあまり変わりません。チーズは少量でもたんぱく質が多いので、自己判断で試さずにご相談ください。
当院でのサポート
当院では、症状が出たときの状況を詳しくうかがい、牛乳やカゼインなどの血液検査を行います。消化器内科として、乳糖不耐症などおなかの病気との見分けも行います。食物経口負荷試験が必要な場合は、実施できる医療機関をご紹介します。
除去が必要な場合も、避ける範囲が必要最小限になるよう確認し、食事の工夫についてもご相談に応じます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
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参考文献
- カシューナッツの義務表示化に向けた検討状況について(資料1)著者:消費者庁媒体:消費者庁ウェブサイト(会議資料)発行日:2025年12月URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_251212_03.pdf要約:消費者庁の会議資料。2024年度の全国実態調査では、即時型の食物アレルギー6,033例のうち牛乳は807例(13.4%)で3番目、ショック症状の586例では95例(16.2%)で2番目に多い原因だった。
- 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022著者:厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏)媒体:国立病院機構相模原病院 臨床研究センター(PDF)発行年:2022年URL:https://sagamihara.hosp.go.jp/rinken/pdf/nutritionalmanual2022.pdf要約:国の研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き。乳糖不耐症は食物アレルギーに含まれないとした。牛乳の主なアレルゲンはカゼインとβ-ラクトグロブリンで、乳酸菌や乳化剤などは除去不要とし、除去時のカルシウム補給の目安を示した。
- 乳糖不耐症(MSDマニュアル家庭版)著者:MSDマニュアル家庭版媒体:MSDマニュアル家庭版ウェブサイト閲覧日:2026年9月30日URL:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/03-消化器系の病気/吸収不良/乳糖不耐症要約:乳糖不耐症の一般向け解説。牛乳アレルギーは牛乳のたんぱく質に対する免疫反応で、乳糖不耐症とは異なるとした。乳糖不耐症では乳糖を含む食事の30分〜2時間後に腹部膨満や下痢などが起こり、成人の牛乳アレルギーはまれとした。
- 日常診療でアレルゲンコンポーネントを用いた血液検査を使いこなす!(第49回日本小児皮膚科学会 教育講演1)著者:千貫祐子(島根大学 皮膚科 准教授)媒体:ラジオNIKKEI「マルホ皮膚科セミナー」放送内容(PDF)発行日:2026年4月20日放送URL:https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/docs/maruho_hifuka-260420.pdf要約:島根大学皮膚科の専門家による解説。牛乳のカゼインは加熱で変性しにくく、α-ラクトアルブミンは熱に弱く、β-ラクトグロブリンは加熱で凝集して反応性が下がるとした。カゼインの検査は牛乳と同等以上の感度と特異度をもつとした。
- タンニン酸アルブミン「ニッコー」 電子添文(2023年11月改訂 第1版)著者:製造販売業者媒体:医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報改訂:2023年11月URL:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/14987291840917要約:下痢止めタンニン酸アルブミンの添付文書。有効成分はタンニン酸とたんぱく質の化合物で、そのたんぱく質は牛乳のカゼインである。牛乳アレルギーのある患者では、ショックやアナフィラキシーを起こすことがあるため投与禁忌とされている。
- 食物アレルギー患者に注意が必要な当院採用薬一覧(DIニュース 2021年9月1号)著者:愛媛大学医学部附属病院 薬剤部 薬品情報管理室媒体:愛媛大学医学部附属病院ウェブサイト(PDF)発行日:2021年9月URL:https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/202109-1DInews.pdf要約:大学病院の薬剤部による、食物アレルギー患者に注意が必要な採用薬の一覧。牛乳アレルギーでは、カゼインなど牛乳由来のたんぱく質を含む一部の経腸栄養剤(アミノレバンEN、イノラス、エネーボ、エンシュア・Hなど)が禁忌とされている。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)