2026年11月05日

健康診断の結果が入った封筒を開けるとき、あなたの視線は真っ先にどこへ向かうでしょうか。
おそらく多くの方が、「LDL(悪玉)コレステロール」の欄を探すはずです。基準値を超えて「*」の印がついていれば、医師から「このままでは動脈硬化が進みますよ。油ものを控えて、数値が下がらなければ薬を始めましょう」と告げられる。
真面目な人ほど、大好きな卵や肉、バターを食卓から遠ざけ、「コレステロールゼロ」をうたう植物油や、あっさりした炭水化物中心の食事へと切り替えていきます。処方されたスタチンというコレステロール降下薬を、「命のお守り」のように毎日欠かさず飲み続けている方も少なくないでしょう。
しかし、その常識の土台が、半世紀以上前に作られ、十分に検証されないまま広まった「神話」だったとしたら、どうでしょうか。
本ブログで私がお伝えしたいことは、大きく三つあります。
一つ目は、コレステロールは決して「悪者」ではなく、細胞やホルモンを作るために欠かせない「命の脂質」だということ。
二つ目は、動物性の脂を減らすだけでは心臓病は防げないということ。
そして三つ目は、健康診断の数字だけを見て薬で下げ続けることが、すべての人にとって最善の選択とは限らないということです。
なぜ、私たちの体を支える大切な物質が、これほどまでに忌み嫌われるようになったのでしょうか。
医学の歴史をひもとくと、そこには純粋な科学とは言いがたい人間の営みが見えてきます。自説に合うデータを選んで世界に示した野心的な科学者。自分たちの製品への批判をかわすため、一流大学の研究者に資金を渡していた砂糖業界。そして、基準値の線をどこに引くかで「病人」の数が大きく変わり、巨大な市場が生まれる医療ビジネスの構造――。
私たちは、「医学」という白いベールの向こう側で、病気の本当の原因から目をそらされてきたのかもしれません。
私は大阪府吹田市にある「千里丘かがやきクリニック」の院長として、消化器内科を土台に、長引くアレルギー疾患や睡眠時無呼吸症候群まで、現代人が抱えるさまざまな不調を総合的に診ています。また、広島大学病院の漢方診療センターでは、客員准教授として東洋医学の研究や指導にも携わっています。
このブログを書こうと思ったきっかけは、診察室で出会う患者さんたちの「不安」でした。
「コレステロールが高いと言われて、卵を一切やめました」「薬を飲み始めてから、なんとなく足がだるいんです。でも、やめたら心筋梗塞になるんですよね」。こうした声を、私はこれまで数えきれないほど聞いてきました。
テレビや雑誌、インターネットには、コレステロールに関する情報があふれています。しかし、その多くは「コレステロールは怖い、すぐに下げなさい」という一方的なものか、逆に「薬は毒だ、医者を信じるな」という極端なものです。患者さんが本当に知りたいのは、そのどちらでもありません。自分の数字が何を意味していて、自分は何をすればよいのか――その答えなのです。
本ブログでは、医学の歴史と最新の研究を紹介しながら、その答えをできるかぎり公平に、そして分かりやすくお伝えしたいと思います。
私たちの血管を傷つけ、全身に「慢性炎症」という小さな火事を起こしている主犯は、コレステロールではありません。糖質のとりすぎとそれが招くインスリンの過剰、喫煙、高血圧、睡眠中の呼吸の乱れ――そうした「火種」こそが問題なのです。コレステロールは、火事の元凶というより、傷ついた血管を修復するために駆けつけた「消防士」に近い存在です。
人間の体は、ひとつの数値を薬で押し下げれば健康になるような、単純な機械ではありません。
本当に必要なのは、毎日の糖質を上手に管理し、良質な脂質と食物繊維で腸内環境を整え、ぐっすりと眠って深い呼吸を取り戻すこと。これは最新の栄養学や免疫学の知見と、東洋医学が古くから説いてきた「養生(ようじょう)」の知恵とが、ちょうど重なり合うところにあるアプローチです。
本ブログでは、まずコレステロールの基礎知識を押さえたうえで(第1章)、コレステロール神話が生まれ、強化されていった歴史をたどり(第2章・第3章)、動脈硬化の本当の仕組みを解き明かします(第4章)。続いて、薬と食品をめぐるビジネスの構造に光を当て(第5章・第6章)、高齢者や日本人に特有の「数字の逆説」を紹介し(第7章)、今日から実践できる具体的な方法をお伝えします(第8章)。最後の第9章では、診察室でよく受ける質問にお答えします。
ここで、ひとつだけお願いがあります。
本ブログは、すでに処方されている薬をやめるよう勧めるものではありません。心筋梗塞や脳梗塞を経験した方、生まれつきコレステロールが非常に高くなる「家族性高コレステロール血症」の方、糖尿病や慢性腎臓病を抱えている方などにとって、薬は命を守る大切な道具になり得ます。服薬について見直したいと感じたら、決して自己判断で中止せず、必ず主治医と話し合ってください。
本ブログの目的は、薬を一律に否定することではありません。あなたが自分の数字の本当の意味を理解し、医師と対等に話し合い、納得して自分の健康を選べるようになることです。
なお、本ブログで紹介する患者さんの事例は、プライバシーに配慮し、特定の個人ではなく典型的な経過をもとに再構成したものです。
あなたの体を流れるコレステロールは、今日も黙々と細胞を作り、ホルモンを生み出し、あなたの命を支え続けています。作られた神話に怯え、おいしい食事を我慢し、体に必要な材料まで自ら手放してしまうのは、もう終わりにしましょう。
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大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介